スーダン クーデターから1か月 軍主導統治に反対デモ続く

スーダン クーデターから1か月 軍主導統治に反対デモ続く
k10011913421_201905121932_201905121933.mp4
アフリカのスーダンで、反政府デモに端を発した軍によるクーデターで、30年におよぶ長期政権が倒れてから1か月がたちます。クーデター後の軍主導の統治に反発するデモ隊は、民政への移行を求めて軍の本部前で座り込みを続けていて、事態が収束するのか不透明なままです。
スーダンでは政府に対する抗議デモの盛り上がりを背景に、先月11日に軍がクーデターを起こして、バシール大統領を失脚させ、30年におよぶ長期政権が崩壊しました。

その後、軍主導の評議会が選挙を行うまで最大で2年間、暫定的に国を統治すると発表したのに対し、民主化勢力は早期の民政への移行を求めて1か月たった今も、首都ハルツームにある軍の本部の前で抗議の座り込みを続けています。

連日、最高気温が40度を超える猛烈な暑さに加え、イスラム教の断食月=ラマダンに入り、抗議活動は日没から夜間にかけて活発に行われています。

軍と民主化勢力は、軍人と文民による合同の評議会を設けて移行期の統治にあたることや、選挙を実施する時期などについて協議していますが、今のところ進展は見られず、事態が収束するのか不透明なままです。

スーダンでの政変は先月、大統領が辞任に追い込まれたアルジェリアとともに「第2のアラブの春」とも呼ばれていますが、8年前のアラブの春ではその後、内戦やイスラム過激派の台頭など、混乱につながった国も多く、安定を保ちながら民主化を進めていけるかが課題になっています。

背景に厳しい経済状況への不満

政府に対する抗議デモが盛り上がった背景には、厳しい経済状況への国民の強い不満があります。

前のバシール大統領の失脚から1か月がたっても、民政への移行がどうなるのか先行きは不透明で、経済も安定の道筋は見えていません。

首都ハルツームやその周辺では、銀行のATM=現金自動預け払い機の前で人々の行列が目立ちます。経済の混乱で現金が不足し、1日に引き出せる現金は2000スーダンポンド(5000円)足らずに制限されています。

今はイスラム教の断食月ラマダンに入っていて、断食が明ける日没後に大勢で食事をとる習慣があるため、何かと物入りなことが多く、毎日のように並ばなければならないといいます。

ATMの前に並ぶ男性は「きょうは現金を引き出せても、明日はだめかもしれない。本当に困った問題だよ」と話していました。

公共交通にも影響が出ています。ふだんなら多くの人が行き交うハルツーム北駅に利用客の姿はありません。プラットフォームにはけん引車両がぽつんと止まったままです。抗議デモによる封鎖で運行の停止が続いているのです。

市場を訪れると、農業国だけあって、たくさんの新鮮な野菜が売られています。しかし、経済の混乱で客の財布のひもは固く、売り手たちはさえない表情を浮かべています。

市場の人たちは「革命と混乱による市場の販売への影響はある。前のような状況じゃないし、市場も疲弊している」とか「国がつぶれつつあり、食品も交通機関もたくさんの危機があるけど、状況がいまよりよくなるよう願っている」と話していました。

民族対立背景による紛争も

「30年も居座った体制は、人々を殺害し、ホームレスにした。あらゆる醜い手段で人々を死滅させようとした」。

軍の本部前で座り込みを続けている西部のダルフール地方出身の参加者の言葉です。ダルフール地方では、2003年から民族対立を背景に紛争が起き、30万人以上が死亡。当時、「世界最悪の人道危機」と呼ばれました。

バシール前大統領は反政府勢力を支持する住民の殺害を軍や民兵組織に命じたとして、大量虐殺などの疑いで国際刑事裁判所から逮捕状が出されています。

ダルフール地方の出身者からは、国内で拘束されているバシール前大統領の身柄を国際刑事裁判所に送るよう求める声が聞かれます。

「指導者たちに人権を侵害してはならないことを示す見本とするため、バシールは国際刑事裁判所に引き渡すべきだ」。

去年12月からデモに参加し続けているアルタイ・サーリフさん(38)です。ダルフール紛争で2人の兄を亡くしました。

紛争は人々の意見を顧みない独裁体制が起こしたと考えているアルタイさんは、文民による政治への移行が必要だと強く感じています。

「犯罪的な行為を見た。人々が殴られ、強奪され、苦しめられた。バシールはダルフールの人々にとって犯罪や腐敗、そして独裁の象徴だ。この革命を通じて民主主義や公正さを求めている」。

そして、責任はバシール前大統領だけでなく、体制を支えた軍にもあると考えています。一向に権力を手放そうとしない軍に対し、アルタイさんは「軍事評議会は権限の移譲や民主化に本気で取り組んでいない。旧体制の一部だ」と憤りをあらわにしています。

「民政への移行を達成するまで粘り強く座り込みを続ける」と話すアルタイさん。民政移管への道筋は1か月がたっても見えませんが、声を上げ続ける決意です。

日本語でデモに参加する人も

「ジユウ!ヘイワ!セイギ!ジユウ!ヘイワ!セイギ!」 この1か月、民主化を求めるデモが続いてきたスーダン。

この中には日本語で訴える若者たちも現れました。彼らが手に持つポスターには、デモのスローガンとなってきた「自由・平和・正義」。それに「民政がほしい」や「抗議は続いている」といった文言も。

彼らはスーダンで日本語を学ぶ若者たちです。彼らは今もしばしば軍の本部前で続く座り込みに参加しています。

スーダンでは日本の高い技術力やアニメなどに関心を持ったことがきっかけで、日本語を学び始める人が多いといいます。

日本語でのデモを考えたスンドス・バビケルさん。自分たちでできることをしようと思ったといいます。

「世界により広く、私たちの声を届けたいんです。スーダンの人々が求めているのは文民の政府です」。

民主化勢力の指導者「軍は変化を認めようとしない」

スーダンの民主化勢力の指導者の1人、ムハンマド・ムスタファ氏が首都ハルツームでNHKの単独インタビューに応じました。

軍主導の暫定統治から民政への移行について、「軍はいかなる変化も認めようとしない」と批判し、軍側との協議の進展に悲観的な見方を示したうえで、民主化に向けて粘り強く抗議行動を続ける覚悟があると強調しました。

スーダンでは前の大統領を失脚させた先月の軍事クーデターのあと、軍主導の評議会が暫定的に国を統治し、民主化勢力と民政への移行について協議しています。

これについて、民主化勢力のムスタファ氏は、文民と軍人から成る合同の評議会を作り、移行期の統治にあたることで、軍側と原則的に一致したものの、軍は軍人の数を文民より多くするよう求めるなど主導権を手放そうとせず、「全く受け入れられない」と述べました。

そして「軍事評議会はいかなる変化も認めようとしない」と批判し、議論がかみ合わないとして、協議の進展に悲観的な見方を示しました。

その一方で、軍も国民や国際社会からの支持を必要としているため、民主化を求める人々が軍の本部前で続ける座り込みを武力によって強制的に排除する可能性は低いとの見方を示し、民政への移行に向けて粘り強く抗議行動を続ける覚悟があると強調しました。

そのうえでムスタファ氏は、国際社会に対し、影響力を行使して軍に圧力をかけ、文民の政府に権限が移るよう支援してほしいと訴えました。