男子マラソン 大迫選手 “推薦基準改善を“ ツイートが波紋

男子マラソン 大迫選手 “推薦基準改善を“ ツイートが波紋
男子マラソンの日本記録保持者の大迫傑選手が、陸上の日本選手権の男子1万メートルに日本陸上競技連盟の推薦枠で出場しようとしたところ、大迫選手に負けた選手のランキングが下がり、不平不満が出るという理由で認められなかったことを自身のツイッターで明かし、推薦基準の明確化など改善を訴えました。
大迫選手は去年、男子マラソンの日本記録を更新し、ことし9月に行われる東京オリンピックのマラソンの代表選考レースMGC=「マラソングランドチャンピオンシップ」に向けて調整を進めています。

代表選考レースに先立ち、来月行われる日本選手権の男子1万メートルに日本陸連の強化委員会の推薦枠での出場を検討していましたが、陸連側から大迫選手が日本選手権でいい走りをすると負けた選手のランキングが下がり、不平不満が出るという理由で推薦を受けられず、出場が認められなかったことを23日、自身のツイッターで明かしました。

そのうえで大迫選手は、「どういう選手が推薦出場に値するのかちゃんと明記してほしい」「こういうツイートをする事は、僕自身にもよけいなプレッシャーをかけるしリスクがある事を理解してほしい。だけど声をあげていかないと、ずっと変わらない」と改善を訴えました。

日本選手権の男子1万メートルは前年の優勝者や陸連が設定する参加標準記録を突破した選手などに加え日本陸連の強化委員会が推薦する選手が出場できることになっていますが、大迫選手は、おととしからマラソンを中心に大会に出場していてこの種目については記録や成績での参加資格を持っていませんでした。

大迫傑選手とは

大迫傑選手は東京都出身の27歳。

男子マラソンの日本記録保持者です。長野県の佐久長聖高校で全国高校駅伝の初優勝に貢献し、早稲田大学でも18年ぶりとなる箱根駅伝の総合優勝の立て役者となるなど、エースとして活躍しました。

大学卒業後は実業団に進んだあと、2015年にプロ選手としてアメリカに渡り、リオデジャネイロオリンピックに1万メートルと5000メートルで出場しました。

おととしからマラソンに挑戦し、初マラソンのボストンマラソンで3位、福岡国際マラソンでも3位となりことし9月の東京オリンピックの代表選考レース、MGC=「マラソングランドチャンピオンシップ」の出場権を獲得しました。

そして去年のシカゴマラソンで日本選手初の2時間5分台となる2時間5分50秒の日本新記録をマークし、一躍注目を集めました。

今回、問題となった日本選手権の1万メートルでは、2012年から3年連続で2位となったほか、2016年と2017年には連覇を果たしています。

来年の東京オリンピックでは男子マラソンで1992年のバルセロナ大会以来となるメダル獲得が期待されています。

大迫選手 主なツイートの内容

大迫選手は、日本選手権の参加資格をめぐる今回の問題で7回にわたってツイートしました。

この中で大迫選手は「日本選手権に、本連盟強化委員が特に推薦する競技者という枠で出場しようと試みましたが、叶いませんでした。日本陸上競技連盟の強化委員から『大迫くんが日本選手権でいい走りをすると負けた選手のランキングが下がり、不平不満が出るから』という理由でした。すごい理由だな」と明かしました。

そのうえで、「以前から強化委員所属チームの選手が陸連合宿に優先参加出来たり、陸連計画の遠征に参加出来たりと色々ありましたが、そろそろ陸連を私物化するのはやめた方がいいと思う」と指摘したうえで、「こういうツイートをすることは僕自身にも余計なプレッシャーをかけるし、リスクがあることを理解してほしい。だけど声をあげていかないと、ずっと変わらない」と心境をつづっています。

そして「誤解が無いように言うと、今の僕が上位に絡めるほど、日本選手権に出る選手は弱くない。むしろ挑戦させてほしいと言う気持ちから出場をお願いした次第でした」としています。

日本陸上競技連盟「誤解をされていると思う」

日本陸上競技連盟の河野匡長距離・マラソンディレクターはアジア選手権が開かれているカタールのドーハで取材に応じました。

この中で河野ディレクターは、大迫選手の投稿について「誤解をされていると思う。担当者とは公平性を保つために参加資格のある選手から出場させないといけないという話をしたが、彼にどう伝わったかはわからない」と話しました。

そして、参加資格については、標準記録の突破や各地域の大会で3位以内に入ることなど記録や成績を満たした選手を優先していて、推薦での出場はオリンピックや世界選手権でメダルを獲得した室伏広治選手や日本代表として出場した国際大会でケガをした選手だったことを踏まえ極めて特例的なものだと説明しました。

大迫選手からは強化委員会の推薦による出場の要望を受け、検討した結果、推薦での出場は認められないことを22日、大迫選手のコーチにメールで伝え、今回の投稿を受けて23日再度、コーチにメールで基準などを連絡したということです。

一方、大迫選手が訴えた推薦基準の明確化については特例という前提を踏まえ、「どういうケースが出てくるか想定できない」と述べ、難しいという考えを示しました。

日本選手権の参加資格とは

日本陸上競技連盟は日本選手権で実施される各種目について参加資格を設定しています。

このうち、来月19日に行われる男子1万メートルについては、去年の日本選手権の優勝者。28分20秒とする「参加標準記録A」を突破した選手。

クロスカントリーの日本選手権でシニア男子10キロの優勝者と2位もしくは3位に入り、28分45秒の「参加標準記録B」を突破した選手。

各地域の大会で3位以内に入ったうえで「参加標準記録B」を突破した選手。

さらに、日本陸連の強化委員会が特に推薦する陸連登録選手。

各大会を主催する地域の協会が推薦し、日本陸連が承認した選手としています。

そのうえで、出場が見込まれる選手が多くなり運営に困難が生じる場合は、項目ごとに優先順位をつけて参加を制限するほか、30人に満たない場合は参加標準記録を持っていなくても記録上位の選手を追加する場合があるとしています。

大迫選手はおととしからマラソンの大会を中心に出場していたため、記録や成績での資格を持っておらず、陸連の強化委員会の推薦を受けて出場することを検討していました。

世界ランキング制度とは

国際陸上競技連盟は、ことし2月から、「世界ランキング制度」を導入しました。

この制度では、世界中の1万人以上の選手に対して、出場した大会での記録と順位、それに大会の格付けなどに応じてポイントを付与し、毎週、最新のランキングが発表されます。

国際陸連は、ことし9月にカタールで開かれる世界選手権では参加基準としての世界ランキングの採用は見送りましたが、来年の東京オリンピックについては大会に出場する選手のうち50%は参加標準記録を満たした選手、残りの50%は来年7月1日に国際陸連が発表する世界ランキングで上位に入っている選手にするとしています。

この制度では、日本選手権もポイント付与の対象となっていて大会の順位が世界ランキングに影響することになります。

為末大さん「すべての競技団体で説明していく姿勢が必要」

大迫選手が自身のツイッターで大会への推薦基準の明確化など改善を訴えたことについて元陸上選手の為末大さんは、「今回のことは陸上競技連盟として恣意的(しいてき)なことではなく選考基準の文言はあると思うが、選手に説明するプロセスがはっきり決まっていないのではないか」と話しました。

そして、大迫選手本人が声を上げたことについては「選手が声を上げることは私はやるべきだと思う。選手が疑問を持っていることに陸連は答えないといけない。来年の東京オリンピックを前に対立関係ではなく健全な関係を築くためのタイミングとしてはよかったのではないか」と話しました。

さらに、「これからすべてのスポーツが同じ状況に入っていくのですべての競技団体で説明していく姿勢が必要だ」と提言しました。