インドネシア大統領選 投票始まる

インドネシア大統領選 投票始まる
東南アジア最大の人口と経済規模を持つインドネシアで、大統領選挙の投票が始まり、再選を目指す現職のジョコ大統領と、元軍最高幹部のプラボウォ氏の2人の候補のどちらが今後5年間の政権運営を担うのか、国民の判断が注目されます。
任期満了にともなうインドネシアの大統領選挙は、2期目を目指す現職のジョコ大統領に対して、元軍の最高幹部のプラボウォ氏が挑むという前回の選挙と同じ構図です。

投票は日本時間の17日午前7時から全国81万か所余りの投票所で始まり、このうち首都ジャカルタの投票所では、有権者がつぎつぎと訪れ、候補者の顔写真が印刷された投票用紙に穴を開けて1票を投じていました。

選挙戦では、インフラ整備や貧困対策など1期目の実績をアピールして政策の継続を訴えたジョコ大統領に対し、プラボウォ氏はジョコ大統領の政策は成果をあげていないと批判するとともに、イスラム教を重視する姿勢を強調するなど、激しい論戦が繰り広げられました。

最新の世論調査によりますと、ジョコ大統領は支持率が50%余りと優位を維持する一方、一部の調査ではプラボウォ氏が追い上げを見せていて、2人の候補のどちらが今後5年間の政権運営を担うのか、国民の判断に注目が集まっています。

選挙の争点

今回の選挙では、ジョコ大統領の1期目の政権運営に対する評価や経済政策、貧困対策、それに汚職の問題が主な争点となりました。

ジョコ大統領は、自身が就任してから産業を発展させるための基盤として道路や港湾、それに空港などのインフラ整備を重点的に進め、規制緩和によって海外からの投資を呼び込み、就任以降、年5%前後の経済成長を実現させたとして、実績を強調してきました。

これに対して、プラボウォ氏は、インフラ整備は発展に貢献していない事業もあると批判し、規制緩和についてはインドネシアの資源や富が外国に流出していると主張しています。

さらに、貧困対策をめぐっては、ジョコ大統領が、貧困層の人たちに低金利で融資する制度などを実行し、貧困率はこれまでで最も低くなったと成果を強調したのに対して、プラボウォ氏は、経済格差は広がる一方で、新たな対策が必要だと主張していました。

イスラム教徒へのアピールに注力

インドネシアのイスラム教徒は人口全体の9割近くを占めますが、「穏健なイスラム」などと言われるように、ほかの宗教や文化に寛容な姿勢が特徴となっています。

ところが、酒を販売する飲食店やキリスト教の教会などへの襲撃を繰り返してきたイスラム強硬派の政治的な影響力が、近年、強まっています。
2年前に行われた首都ジャカルタの知事選挙で、強硬派は、キリスト教徒の現職の発言を捉えてイスラム教を冒とくしたと批判する抗議活動を主導し、現職を落選させてイスラム教徒の新人を当選させる結果をもたらしました。
インドネシアでは、今、イスラム教の教えを大切にしようという敬けんな信者が増えています。

これは、経済発展に伴って急速に社会が変化する中で、心のよりどころを宗教に求める人が増えるなど、さまざまな要因が考えられています。強硬派は、こうした人たちの宗教心に訴えかけてみずからの主張を浸透させ、政治的な影響力を強めています。

このため、今回の大統領選挙で、候補者は、イスラム教を重視する姿勢を鮮明に打ち出すことが求められる情勢となっています。

プラボウォ氏は、強硬派でつくる団体から全面的な支援を受けています。ジョコ大統領は、ともに選挙に臨む副大統領候補にインドネシアで最も権威のあるイスラム聖職者団体のトップを務めていた宗教指導者を据え、両陣営がイスラム教徒の有権者へのアピールに力を入れてきました。

一方で、こうした選挙戦は、キリスト教徒や仏教徒など、ほかの宗教を信じる少数派の人々の不安を募らせ、宗教の違いによる国民の分断をもたらすおそれがあるという指摘も出ています。

日本とインドネシアの関係

インドネシアは天然ガスなどのエネルギー資源が豊かで、日本は、中東への依存を減らす重要な資源の調達先などとして両国関係を重視してきました。

さらに、インドネシアは近年、市場としての魅力も高まってきています。人口は2億6000万、中国、インド、アメリカに次ぐ世界第4位という規模で、経済成長に伴って国民の購買力が増しているうえ、鉄道や道路、港などのインフラ整備も急ピッチで進められているからです。

日本企業は両国の伝統的な友好関係を土台に進出を図り、外務省などによりますと、インドネシアに進出している日系企業は1900社余り、2万人近くの日本人が滞在しています。インドネシア政府の統計によりますと、去年の日本からインドネシアへの投資は49億5000万ドル余りで、世界各国の企業が地域拠点を置くシンガポールに次いで2番目に多い額となっています。

また、インドネシアにとって日本は主要な援助国で、先月には1200億円余りの円借款を利用して建設が進められていたインドネシア初の地下鉄の運行が開始されています。このほか、中国が海洋進出を強めていることを念頭に、日本は南シナ海にあるインドネシアの島の開発を支援し、周辺の領海を守る活動を後押しするなど、安全保障の分野でも関係を強化しています。

2人の候補者も投票

大統領選挙に立候補している2人の候補者もそれぞれ1票を投じました。

現職のジョコ大統領は、夫人とともに首都ジャカルタの投票所を訪れ、そろって投票しました。投票を終えたあと、報道陣に囲まれたジョコ大統領は笑顔を見せ、余裕をにじませていました。

一方、プラボウォ氏は、地元であるジャワ島西部のボゴール県の投票所で投票を済ませました。プラボウォ氏は「選挙が公平で平和的に行われ、国民の意思が示されることを望んでいる」と話し、結果に期待を示しました。

投票を終えた人は

投票を終えた48歳の主婦の女性は「ジョコ大統領を選びました。これまでの任期中に進めてきた道路整備などの事業を完了してほしいです」と話していました。

また、59歳の会社員の男性は「前回はジョコ大統領に投票しましたが、今回はプラボウォ氏に投票しました。インドネシアにはいま変化が必要です。特に雇用を増やしてほしいです」と話していました。