中国に向け詐欺電話か 逮捕の台湾の男女 日本の空き家悪用

中国に向け詐欺電話か 逮捕の台湾の男女 日本の空き家悪用
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日本に入国する際に滞在先を偽って申告したとして逮捕された台湾の男女10人のうちの一部が「中国に向けて詐欺の電話をかけるために来日した」と供述していることが警視庁への取材でわかりました。男らはその後、日本国内で空き家になっていた住宅を買い取るなどして中国に詐欺の電話をかけていたとみられ、警視庁が捜査しています。
先月、成田空港から日本に入国する際に滞在先などを偽って申告したとして、台湾出身の10代から40代の男女10人が逮捕され、そのうちの一部が「中国に向けて詐欺の電話をかけるために来日した」と供述していることが捜査関係者への取材でわかりました。

男らは、その後、空き家になっていた山梨県甲府市や千葉県東金市の住宅を買い取るなどして、中国に詐欺の電話をかけていたとみられ、警視庁が住宅を捜索したところ、中国語で書かれた詐欺のマニュアルや、名簿、携帯電話などを押収したということです。

警視庁によりますと、マニュアルには中国の役人だと偽って「あなたの個人情報が悪用されている。解決する必要がある」と、うその話を持ちかけて金をだまし取ろうとする手口が書かれていたということです。

警視庁は、中国で振り込め詐欺の摘発が強化されていることから、日本の空き家を拠点にして中国に詐欺の電話をかけていたとみて、被害の実態を調べています。

千葉の空き家取得の経緯

中国に向けて詐欺の電話をかける拠点として使われていたとみられる、千葉県東金市の住宅は空き家になっていたものでした。

もともとここに住んでいた46歳の男性によりますと、別の場所に転居するためおととしの秋から売りに出したということです。

しかし、なかなか売却先が見つからず、空き家になっていたところ、10か月ほどがたった去年8月、東京の不動産会社を通じて台湾で中古車販売店を営んでいるという40代の男が「家を見たい」と言ってきたということです。

売り主の男性は「ラフな格好で、リュックなんか持ってて、感じの悪い人ではなかった。“仕事で日本にたまに来る”と言っていて、“台湾の知り合いや友達と日本に旅行に来たときに寝泊まりする”と聞いていました」と話しました。

売り主の男性は不審な様子がなかったことや、ようやく空き家が売れると考えたことから、この男に700万円で売却したということです。

売買契約の際に作成した書類には、男の住所として台湾の台中市の住所が記されていました。

売り主の男性は「子どもと過ごした場所で最後はリフォームまでしたのに、まさかなって。子どもとの思い出があったのでちょっと寂しいです。詐欺の拠点に使われると知っていたら契約しなかったし、普通の人に買ってほしかった」と話していました。

千葉の空き家は目立たぬ場所

千葉県東金市の住宅は、周囲を林や畑で囲まれた人目につきにくい場所にあり、窓には目張りがされ、中の様子が確認できないようになっていました。

警視庁は、詐欺の電話をかける拠点に使われていたとみて、今月11日、この住宅を捜索しました。

近隣住民によりますと、しばらく空き家の状態だったこの住宅に、去年11月ごろ、山梨ナンバーの車で20代から30代の男らが転居してきたということです。

近所づきあいはありませんでしたが、引っ越しから1か月後、この家から下水が漏れるトラブルがあり、地域の住民がこの家を訪れたということです。

その際、家から出てきた男たちは日本語が話せず、スマートフォンの翻訳アプリを使って「中国から来た」と説明したということです。

数日後には、おわびとしてお菓子を持ってきたということです。

近所に住む67歳の女性は「何しに来たのかって聞いたら“勉強するために来ている。1人は料理を習っていて、料理の学校に行っています”と。中国から勉強に来るんだ。偉いなって思っていたんですけど」と話していました。

近くには中国からの留学生を受け入れている大学があり、住民たちは不審に思わなかったということです。

近所の80歳の男性は「ずっと空き家だって売りに出ていたんだよね。人も通らないし、まさかこんなところでって。そういうやつらにはちょうどいい場所だったんだなと思いました」と話していました。

山梨の貸し住宅の契約の経緯

山梨県甲府市の住宅は、およそ50年前に建てられ、住民が転居して空き家になっていましたが、いまは近所の61歳の女性が貸し物件として所有しています。

この女性によりますと、4年前に甲州市の中古車販売会社が「社宅として使いたい」と言ってきたということです。

契約に訪れたのは、この会社の台湾出身の50代の社長で、所有者の女性は連帯保証人もいたことから月8万5000円の家賃で貸し出したということです。

その後、2年ほど前からは、社宅ではなく、複数の外国人に貸し出されるようになったとみられ、数週間単位でさまざまな外国人が出入りしていたということです。

所有者の女性は「5人か6人はいたんじゃないのかな。3週間くらいいたと思ったら、今度は3か月くらい誰もいなくなり、また3週間くらい誰かが来ては途中でいなくなると。最後に警察が捜索に来た時には20人ぐらいいたって話ですよ。朝から晩まで詐欺の電話をかけているっていうふうには夢にも思わないですよね」と話していました。

日中の国境越えた捜査は

警視庁は、住宅から押収された中国の住所や電話番号が書かれた名簿を中国の捜査当局に提供し、詐欺の被害にあった人がいないか確認を進めてもらうことにしています。

中国での被害の実態を日本の警察が直接調べることは捜査権の問題があり、難しいからです。

警視庁の捜査幹部は「外国の詐欺グループが日本に拠点をおいていて摘発されたケースは聞いたことがない。捜査手法も確立されておらず、すべて手探りの状態だが手を尽くして被害の実態を解き明かしたい」としています。

識者「重罪をおそれ国外に拠点か」

中国では日本の振り込め詐欺は「電信詐欺」と呼ばれていて、大きな社会問題になっているということです。

今回の手口について日中の犯罪事情に詳しい一橋大学大学院法学研究科の王雲海教授は、「中国の刑法上は『電信詐欺』の罪に対して無期懲役刑になるケースは多々あり、罪が重い。さらに被害が発生したことを中国の司法当局が日本に知らせたとしても、ことばの問題や司法共助、証拠の問題もあり、すぐに摘発されるかというとそうではない。そういう意味で第三国に詐欺の拠点を置くことは犯罪者にとってより安全で、そのためにわざわざ日本を選んで拠点にしているのではないか」と指摘しています。

さらに日本の地方の空き家が詐欺の電話をかける拠点に悪用されたとみられることについては、「地方の空き家だと防犯カメラをつけていることが少ないし、さらに人通りも少なく、より安全に犯罪を行えるということで空き家を選んだのではないか」と分析しています。

総務省によりますと、平成25年度の時点で全国で確認された空き家は、およそ820万戸にのぼり、増加しているということです。

王教授は「空き家の管理にもっと力を入れて、犯罪組織に利用されないように再調査を行うなどすべきだ」と訴えていました。

中国版振り込め詐欺が社会問題化

中国公安省などによりますと、電話やメールなどを使って金品をだまし取る詐欺の被害は中国でも相次いでいて社会問題となっています。

おととしには、59万6000件が確認され被害額は131億人民元余り日本円でおよそ2200億円に上ったということです。

公安省は3年余り前から取り締まりに力を入れていておととしには、13万1000件を摘発し、5万人余りを検挙したということですが、依然として被害が後を絶たない状態となっています。

詐欺の手口としては電話やメールを通じて架空請求を行ったり、家族などになりすまして金品をだまし取ったりするケースが多く含まれているということです。

3年前には、大学に合格していた山東省の18歳の女子学生が、入学金などをだまし取られ心労で死亡した事件も起きていて、取り締まりを一層強化するよう求める声が上がっています。