民間人がなぜこんなに!?

民間人がなぜこんなに!?
霞が関のリアルを知ろうと取材していると、あることに気づきました。「民間の出身者、意外と多い!」実際、どうなっているのでしょうか。(「霞が関のリアル」取材班)

民間出身者から寄せられた声

「霞が関のリアル」取材班には、これまで多くの霞が関の方々から意見をいただきました。このなかに、民間企業から霞が関に移った人の経験談がありました。

32歳 男性「民間から一時、農水省で働いていました」

30代 男性「民間から国交省に行っていました」

霞が関の民間出身者 その数はなんと…

確かに霞が関を取材していると、民間企業の出身者と出会うこともしばしばです。いったい、どのくらいの人たちが民間から霞が関に行っているのでしょうか。

調べてみると、内閣人事局に統計がありました。

それによると、国家公務員として働く民間出身者は、去年は5890人。12年前のデータと比べると、実に2.5倍に増えていたのです。

どうしてこんなに増加?

民間から霞が関に任期付きで来てもらう制度は、かつて専門性の高い理系の研究職を中心に行われていました。

この制度を一般の行政職にも拡大する法律が平成12年にでき、さらに同じ年に、人事院を窓口に国と民間企業の間で人材を派遣し合う「官民人事交流法」が施行されました。

その後、国は、民間で専門性を身につけた人を省庁の役職ある立場に迎える「経験者採用試験」を制度化、さらに平成20年に、内閣府に「官民人材交流センター」を設置するなど、官民交流を促進したのです。

どの企業がどんな省庁に…

では、どんな企業の人がどの省庁に入っているのでしょうか?内閣人事局は、5890人の民間出身者のうち、出向など、期限付きで国の機関で働いている2227人について、省庁別の人数と出身元の民間企業名を公表しています。
省庁別にみますと、最も多いのは経済産業省で538人、次いで環境省が353人、国土交通省が289人、内閣官房が229人、内閣府190人などとなっています。

これについて環境省に聞いたところ、「震災復興の業務が増えるなか、高度な専門知識や経験のある人が多いほうが、政策や業務を進めるうえでとても助かる。専門知識がある方は即戦力になるので、積極的に採用している」と回答しました。

また、企業別にも集計してみました。全部で1050社です。
いちばん多かったのは綜合警備保障でした。ほとんどが外務省の在外公館となっていました。次いで、NEC、みずほ銀行、三井住友銀行、東京電力ホールディングスと続きます。

なぜこんなに民間から…

霞が関はどうして民間企業から多くの人を集めているのでしょうか。省庁の幹部らに聞いてみました。

すると、ある省庁の職員は、「やっぱり、民間の知見やスキルをいかすことが理由だと思う。最近でいえばオリンピックが大きい。役人の多くは国会業務のキャリアがほとんどで、大きなイベントを扱った経験に乏しい。そうなると、外から来てもらってスキルをいかしてもらうという意味でありがたい存在だ」とその効果を語りました。

キャリア官僚は、ほぼ2年ごとに部署が変わるため専門的知識のある民間人の方が社会の変化にも適応しやすいというのです。

一方で、別の省庁の幹部は、『人手不足』を補ってもらう側面もあると打ち明けました。
「新たに対応する行政分野は増える一方、国家公務員は減らされてきた。特にこの数年は、経済や国際、オリンピック関係など新たな担当室が内閣官房などに設けられ、人材を送り込まなければならないことも増えている。本省の職員で埋めようとしたけど、それでも足りなくて、急きょ民間から募るなんてこともよくある」

民間人は霞が関をどう見た?

では、民間企業の出身者から、霞が関はどのように見えていたのでしょうか。運輸系企業から国土交通省の観光庁に出向した経験のある佐藤満さん(仮名・30代)に話を聞きました。

「出向期間中は、最先端の情報を得られたり、海外経験が豊富な人と仕事を共にしたりと刺激になり学ぶことが多かったです。霞が関の官僚はさすが優秀だと感心しました」

一方、「長時間勤務」と「給与の低さ」には閉口したといいます。

「あまりに過酷で、体調を崩す人もいました。出向者の間では、『出向期間、残り○日間』とパソコンで残り日数を数えるなんてこともしていました。出向期間中、給与は国から支払われましたが、私の場合は月10万円ぐらい下がっていました。当時は独身だったのでまだよかったですが、家族がいたらどうするんだろうと思いましたね」

佐藤さんが2年余りの出向を終えて本社に戻ると、会社は元の給与との「差額」を補填(ほてん)しました。その額は500万円以上だったそうです。

「紙文化」に違和感

もう1人、民間企業から農林水産省に転職したという男性にも話を伺いました。驚いたのは霞が関の古いしきたりだったそうです。

「TPPの批准に向けて、法改正を行う部署にいた時、困ったのは徹底した『紙文化』です。法律の条文をチェックする内閣法制局は、いろんな省庁の役人が行列を作るので、何時間も待たされます。ようやく順番が回ってきても、指摘事項は全部紙で書き取り、役所に戻ってその紙を修正してまた法制局に持ってこなくてはなりませんでした」
さらに、書類の体裁にもこだわりがあったといいます。

「ホチキスの針が横に留めてあるというだけで『ほかは針が縦向きなのに、1つだけ留め方が違うと上から手抜きと思われてしまうから全部直して』と言われた。ペーパーレス化を進めれば、しなくて済むことかと…」

こうした作業に業を煮やした男性は、上司にこんな提言をしたといいますが…。

「『内閣法制局の部屋で、パソコンの画面を見ながら修正したほうが効率的だ』と主張しました。でも『誰もやったことがない』『ずっと紙でやってきたんだから』と言われて終わりでした。前の会社はクラウドサービスなどを活用していただけに、この組織は労働時間を削減する気は無いのかなと思いました」

皆さんの経験 考えを教えてください

霞が関で進められている官民の人事交流。何事もスピード感が求められる今の時代、最新の知見や新たな発想を取り入れるために、民間の知恵や経験が必要なんだと思います。

一方、民間の人が入っても霞が関の働き方や慣習は簡単には変わらないとも感じます。また国会では、官民交流により、癒着を招くおそれがないのかという指摘も出ています。

このテーマ、今後も取材を続けたいと思います。霞が関で働いたことのある方、または、民間の方と働いた国家公務員の方々は、どのようなことを感じましたか。皆さんの経験・考えをこちらのアドレスに「霞が関のリアル」と書いてお寄せください。https://www3.nhk.or.jp/news/contents/newspost/
社会部記者 三浦佑一
社会部記者 荒川真帆
社会部記者 杉田沙智代