虐待防止対応に当たる児童福祉司 8自治体で人数確保できず

虐待防止対応に当たる児童福祉司 8自治体で人数確保できず
深刻な児童虐待が相次ぐ中、対応に当たる専門職の児童福祉司について、東京都や大阪府など全国の8つの自治体が配置基準で定められていた人数を確保できていないことがNHKの取材でわかりました。国は3年後までにさらに配置基準を引き上げ児童福祉司を増やす計画ですが、大都市を中心に人材不足が浮き彫りになっています。
児童福祉司は虐待の疑いがある子どもを保護するか判断したり、親子関係の修復を支援したりする児童相談所の専門職で、自治体の職員のうち専門的な教育を受けた人や現場で一定の経験を積んだ人などが任用されます。

これまでの配置基準は人口4万人につき1人などとなっていましたが、児童相談所を設置する全国の合わせて69の自治体にNHKが取材したところ、今月1日の時点で8つの自治体が基準の人数を確保できていませんでした。

確保できていなかったのは東京都、埼玉県、千葉県、大阪府、広島県、福岡県、それに仙台市、さいたま市の6つの都府県と2つの市で、合わせて230人余りが不足していて、大都市を中心に人材不足が浮き彫りになっています。

深刻な児童虐待の事件が後を絶たないことを受けて、厚生労働省は児童福祉司を増やす緊急対策を去年打ち出し、人口4万人に1人などとしていた配置基準を3年後の2022年度までに3万人に1人へ引き上げることにしています。

これまでの基準にも達していない自治体では「人材の育成には時間がかかるが、質を保ちながら必要な人数を確保できるよう対策を進める」と話しています。

厚生労働省は「自治体の人材の確保が進むよう、支援していきたい」としています。

養成学校「児童福祉司への志望少ない」

児童福祉司になるにはさまざまな方法がありますが、その一つが全国に4か所ある養成校を卒業することです。

このうち東京 千代田区の上智社会福祉専門学校では今年度、41人の学生が学んでいます。養成校を卒業すると実務の経験がなくても自治体に採用されれば児童福祉司として働くことができるようになります。卒業までの2年間に子どもに関する制度や実務に必要な専門知識を学ぶほか、児童相談所で180時間以上の実習も行っています。

ところが卒業後、自治体に就職する人は毎年、数人程度で、児童福祉司として働く人はほとんどいないということです。

学校によりますと児童福祉司は「大変そう」といったイメージが根強く仕事について深く知られていないことから、そのほかの福祉の分野を志望する学生が多いということです。

この学校に通う49歳の男性は「子どもに関わる仕事をしたいと思っていますが、児童福祉司の仕事は負担が大きいので、選択肢にはありません」と話しています。

児童福祉司を目指しているという26歳の女性は「授業を受けたことがきっかけで児童相談所の仕事に興味を持つようになりました。一人一人の子どもと向き合って仕事をしていきたいです」と話していました。

東京都「採用説明会などで人材確保につなげたい」

東京都では新たな配置基準を満たすために、今の倍近い児童福祉司が必要で、さらに200人余りを確保しなくてはなりません。

現在、採用活動を強化していて、今月7日に行った児童福祉司の説明会は新卒や中途採用など幅広い人材を対象に行われ、学生や元教員などおよそ40人が参加しました。

説明会では、児童相談所で働く児童福祉司がみずからの経験を語り、子どもを虐待から守りながら親子の関係を修復する仕事の難しさややりがいについて紹介しました。

説明会に参加した22歳の専門学校生は「児童虐待のニュースをみて自分にも何かできないかと思い参加しました。説明会で話を聞いて、やりがいのある仕事だと感じました」と話しています。

東京都福祉保健局の斎藤毅職員課長は「児童福祉司の仕事の内容や重要性を伝えることで、人材の確保につなげていきたい」と話しています。

専門家「地道な取り組み必要」

児童相談所に長く勤め虐待の問題に詳しい日本社会事業大学の宮島清教授は、児童福祉司の人材確保が難しいことについて「きつい仕事という印象があるため、もっと条件のよい仕事があるとそちらに流れてしまって採用につながっていないケースもある。よい人材に集まってもらうためには、社会全体で福祉職に対する評価を上げることが大切で、待遇の改善も欠かせない」としています。

宮島教授は、短い期間で人数を増やそうとする国の緊急対策に疑問を呈していて「急激に人材を増やすことは質の低下につながりかねず、長い目で見るとマイナスになってしまうおそれがある。短期的にはベテランを再雇用したり、高齢者や障害者など別の分野で現場の経験がある人たちに手伝ってもらうことが現実的ではないか。質の高い児童福祉司を少しずつ増やしていく地道な取り組みが必要だ」と指摘しています。