首長が強すぎる!~2万人議員アンケート

首長が強すぎる!~2万人議員アンケート
日本には「地方議員」が3万人もいることをご存じですか?
今回、その全員に初めてのアンケートを行いました。回答してくれたのは2万人近く。NHKでは1か月にわたって、そのホンネをお伝えするキャンペーンを展開します。

アンケートで非常に多く見られたのが、議会と首長との関係をめぐる記述でした。今回はそこに焦点を当てます。

二元代表制を知ってますか?

自治体では、知事や市町村長などの首長も、議会の議員も、ともに直接選挙で選ばれます。
首長と議会は対等な関係で、首長・行政側が予算案や条例案などを作っても、議会の承認が得られなければ政策として実行できません。自治体の行政は議会のチェックのもとで運営される仕組みで、首長が議会を招集し、議案の審査を受けるわけです。
これが「二元代表制」の仕組みです。

首長が強すぎる!

ところが、そうはなっていない、という声が相次ぎました。

60代の男性町議は、こう述べます。
「小さな町の町議ですが、首長(町長)の権限が強すぎて『無力感』でいっぱい。町の財政を真剣に考えているのか?と思われる議員が多く、多数決の悲哀を常に感じていて、イライラがつのります」

60代の男性市議は、質問する議員さえ減っていると。
「首長の権限が多くなり、それに追随する議員が多く、質問する議員数は全体の35%程度となっている状況です。全体の奉仕者として、行政事務を審査すべき議員数が少数派となっており、このような状況が続く限り、地方自治体の衰退、人口減少社会の中で生き延びてゆく道は閉ざされていくような気がする」

力の差の原因は

60代の男性議員は、発信力に差があると分析しています。
「首長と議会、議員の対比をした時、住民へのアピール度、政策立案力、広報力に大きな差があり、ここ数年格差が広くなっていると思います。(議員の力量不足もありますが)議会は執行部の行う事業、政策について議論し審議して賛否をかかげる事はできるが、対抗していく事がむずかしい」

別の60代の男性議員は、首長が議会を分断することもできるからだと。
「首長に対し、忖度(そんたく)したり、すり寄る姿勢をとる議員が多すぎる。そのような態度をとると、議員としての活動は楽になるのかもしれない。行政の長の権力は大変大きいので、議会・議員の分断をはかろうと思えば可能であるからだ」

40代の男性議員は、二元代表制が形骸化する構図をこう指摘します。
「地方議会は首長と議会がお互いに牽制(けんせい)し合う『二元代表制』がとられています。首長と議会は『車の両輪』にたとえられ、形式的には対等・平等とされます。とはいえ実際には、予算や条例の提出権があり大統領のような強大な権限を持つ首長が圧倒的に強いのが実情です。二元代表制は形骸化しがちです。
議員は住民の陳情をお願いすることもありますが、行政に頼みごとをしているうちに『持ちつ持たれつの関係』となり、モノを言いにくくなる土壌が生まれます。特にトップダウン型の首長の場合、首長を批判すると自分の質問に対して前向きな答弁が出ず、議員としての実績が作りづらくなります。そこから議会側の忖度オール与党化も生まれてきます」

議会を軽視している

こうしたことの結果、首長が議会を軽視していると、40代の男性議員はいいます。
「首長は議会を軽視している。首長と議会の間に緊張感がない。行政の監視ができていない。議会は機能していない」

60代の男性議員は、その責任は議会側にもあると指摘します。
「特に言わねばならないのは議会軽視、さらに議会無視の強行突破する首長の専決処分を何もできない議会の不能・無能・無力を再生しなければならない」

アンケートでは、「首長が議会を軽視している」という問いに「とてもそう思う」「ある程度そう思う」と答えた議員は、合わせて27%余り。「行政が軽視」という問いでは、22%余りとなりました。

議会は「ガス抜き」の場

40代の男性県議は、議会は「ガス抜き」の場だと。
「予定調和で形該化している。首長の権限が絶対的に強く、議会は『ガス抜き』的な意味合いにも感じる。期数を重ねないと、執行部が重視してくれない。都道府県議会は“中途半端”」

高齢化で弱体化

60代の男性県議は、議員の高齢化がこの事態を招いているといいます。
「地方自治制度上、首長の権限は極めて強大であるが、二元代表の一方である議員が選挙もないまま高齢化し、弱体化している。結果として、二元代表制度はいびつな状態になっている」

定数の削減も影響していると、50代の男性議員は指摘します。
「二元代表制といっても、首長の権限が非常に強くなっている。町村議会の定数削減はこの現状をさらに強めている」

もはや「なれ合い」

60代の女性議員は、なれ合いだと感じています。
「首長と議会との間に緊張感がなく”なれ合い議会”だと感じています。議員はあくまでも市民の代表でなければなりません。市民の利益を守るために汗するものだと思うのですが、市長のために汗している議員がほとんどです。議会の存在意義が今、問われていると思ってます」

50代の男性議員は、議会が追認機関になっていると指摘します。
「議会の役割について最近では行政についてさまざまな提案をすることも求められてきていますが、本来の役割は行政のチェック機能であり、そのことがないがしろにされていることに対して大きな不安を持っています。多様な意見を持ち、さまざまな視点から行政に意見し、行政の施策を高めていくことが求められているにもかかわらず、議会は行政の追認機関となり下がり、行政はそのことをよしとしているように見受けられます。議会と行政は付かず離れずの関係でいなければならないのに、行政にべったりでは本来の機能を果たせていないばかりか、自分たちの都合のいい価値観で行政が運営され、歪(ゆが)められているとしか思えない施策が行われている。
議会においても多数決が民主主義と言い、道理の通らないことでも数の力で押し通すことが頻繁に行われるようになりました。少数の意見に耳も課さないで一部の議員の意思による、行政の下請けのような議会は、全く議会の体をなさないばかりかみずからの首を絞めるようなものなのに、それに気づかない地方議会になり下がっています。
国会と、地方議会は違うことに議員も市民も気付こうとしないで、国会のまねごとを地方議会でもやろうともしています。
地方議会の議員の質の低下は目を覆うばかりで、地方議会の意義を全く解さない議員が多くなり、一般質問においても質問建てから答弁まで、執行部の丸抱えの議員が多くなってきているのは誠に嘆かわしい限りです」

だったら議会はいらない!

70代の男性市議は、別の議員の態度に怒り心頭です。
「先般の議会でも『市長が提案したことだからしょうがない』と議案が通ってしまい、終了後に『あれはおかしい』と言う議員がいました。なぜ反対しなかったのか聞くと『市長が言っていることだから』との返事。『それだったら議会なんかいらない』と言い返しました」

60代の男性市議も、議会の不要論の原因だと。
「首長と議員は車の両輪とよく言われるが、首長提案を丸のみして全て可決する光景が非常に多い。質疑でいろいろ不備を指摘しても結局は賛成に回ってしまう。これでは議会の存在意義が問われる。市民から見ても議会不要論が出てくるのはある意味当然だ。議員がもっともっと勉強して政策面において執行部と渡り合える能力を身に付ける必要がある」

50代の政令市議は、もはや「両輪」ではないといいます。
「市役所と議会は両輪ということばはすでに『死語』。市長選後、与党・野党がハッキリした。国政と同様に。サラリーマン議員が多くなった」

60代の男性村議は、強い危機感を覚えています。
「二元代表制に制度疲労が感じられます。村民の一部には『議会などなくても村長が一人いればたくさん』という意見もあります。歴史上、独裁者や全体主義者が出現した背景には『合法の名の下に』登場して来たと言われますが、そんな気配も感じます」

議会いらない、と自ら言う議員も

60代の男性議員は、自ら議会不要だと述べます。
「私個人の考えではあるが首長がしっかりしておられるかたであれば議会不用(原文ママ)と考える。最近の地方自治法は首長に権限が集中するべく方向に改正されていく傾向にあり、議会の権能が低下しており議会不用への方向となっていることも事実である。首長が決定した事項を議会が変えることは、ほぼ不可能であることも事実としてある」

「首長派」という存在

30代の男性市議は、「市長派」が問題だと主張します。
「制度としては二元代表制の形をとっていますが、実際は市長派とも言うべき議員や会派がいて議論はするけど、最終的に市長提案については全て賛成、修正すらしないということを目の当たりにしています。(議会にあげる前に、市長派の大会派には事前のお伺いを当局もしていて、そこで選別はしているようです)
二元代表制が十分に機能していない、なれあいになっていて、本来の姿とかけはなれているということは全国的に傾向としてあるのかもしれないです」

60代の男性市議は、YESマンばかりだと。
「そもそも地方議会議員は、市長をはじめ執行部のチェック機関であるべきだが、『それ、最大会派に属せ!』だの『市長派にいなければならない!』だの、いまだに市民の方々は議会というものを理解されておられないように思います。本来議会は、『行政のチェック機関』である。それが、市長、執行部の『YESマン』になってしまっている。そして論議する時間さえ短くなり、賛成多数で決まっていってしまう議会は、大いに疑問である」

60代の男性市議は、議会本来の形と違うと指摘します。
「地方議会は、二元代表制の中で首長の政策、予算等に対して常に是々非々でのぞんでいる。政党政治の国政とは違うのに、とかく首長に対して野党、与党という言い方をするのは、本来の二元代表制を否定していることに等しい」

議員どうし協力して対抗できないか…

議員が協力して対抗すればいいのに、それができない事情があるとある町議はいいます。
「首長の権限が強力であり、なかなか1議員の意見などとりあげられない。そのためには議員間の連携が必要だが、町議の場合、選挙区は1区のため結局利害が対立し、調整をするまでに至らない。結局オール与党化して、町長にすりより自身の政策を実現するのが近道になってしまっている」

解散は困る

70代の男性議員は、腰が引ける時があると告白します。
「議員の一般的心理として首長の退職勧告決議案賛成するが、不信任案には腰が引ける(議会解散をされると困るため)」

ペナルティーがないのがダメ

60代の男性議員は、制度に問題があるという意見です。
「議会の議決権は認められているが、その議決案件に対し、首長が反しても法的にペナルティーが無いため、何のための議決権なのか!地方議会のあり方にギモンがある。予算を否決しても予算執行があり法的にペナルティーが無い。議会には実行権が無いため、行政は首長の思いどおりになる。これでは民主主義とは言えない」

役所に篭絡されている

30代の男性議員は、行政側に篭絡(ろうらく)されていると。
「われわれも反省しないといけない所もあります。役所側からの”ゴマすり”もあり、それに気分をよくして仕事を十分にしない議員も少なからずおり、この点は各議会での改善の取組に期待したい」

反対ばかりが議会じゃないとも

一方で、反対するばかりが議会じゃないと、50代の男性市議はいいます。
「首長や行政の批判し、あるいは反対する事が議員の仕事と思っている議員や市民が非常に増えてきた。反対に値する事と、賛成し前に進める事の区別をしっかりと判断する事が票につながってる感じがしない」

負けてないぞ、という議会も

70代の男性村議は、首長に負けていないものの、課題はもっとほかにあるといいます。
「私の村は議員の力が強いので村長だけの力では議会はコントロールできない。たとえ村長の意見でもよく否定される。日本の田舎の議会でよく言われる『おてもり』単なる『儀式』ということはないように思える。ただ、予算の中でもすでに必要なお金の支出が90%近くすでに決まっている。日本の自治は中央の力が強すぎる感がある。もっと中央でなく、地方で決められることがあってもよいと思う」

二元代表制をやめてしまっては?

50代の男性議員は、二元代表制をやめてしまえば、と提案します。
「二元制を止めて一元制にするなど、地方自治体のあり方を都市によって、選択できる制度にすることにより多様な自治体運営が可能となる。※一元制…議員の中から首長を選ぶ制度 欧州など先進諸国では一般的。日本も戦前は、一元制だった」

地方自治のあるべき姿は…

議会と首長との関係の問題点を指摘する自由記述は、このように多数にのぼりました。ただ、アンケートの数字だけで見ると、「議会は機能している」「首長との間にほどよい緊張感がある」という意見が多数です。上記にある多数派=「首長派」の意見が反映されているということなのでしょうか。それとも…
最後に、この状況をまとめて今後の方向性を示す、60代男性議員の言葉で締めたいと思います。

「住民は議会のみならず首長をも選挙することができ、その意思を公式に反映するシステムが二つあることから『二元代表制』と言われ極めて民主的な制度と言われている。

しかし、首長優位の制度であること、過半数議決の原則などによって、本来あるべき議会の能力や議員の能力や質の低下が強く見られるようになっている。首長を強く擁護する議員の集団(会派)を与党とし、議会なくして数で議事を決定することが多くなっている。二元代表制のもと、与党、野党とかがあるべきものでもない。これは議会が行政をチェックするという大きな役割を考えていないことになる。議会の存在意義そのものが疑問となる。そもそも首長を抑制、監視する議会は首長は、首長から嫌がられ、疎まれることはあっても喜ばれることはないものであう。それが議会の役回りであると考えます。

このような二元代表制の下、地方自治が行われますが、自治には住民自治と団体自治があります。住民自治が主であり、これを補完する意味で団体自治があるべきでしょう。今、大きな問題として、これら地方自治の本旨というものを議員自身が理解しておらず、また住民にも地方自治の重要性が理解されていないことがある。また、議事の採決に関して住民に選ばれたから代表となったから委任されたから住民の意見を聞かずとも、自らの判断で採決を決定する議員もいる。古典的代表制を今でも踏襲する議員だが、住民は選考しても、白紙委任しているわけではない。さらに首長側につき自分が政治を行って町作りをしている執行者と錯覚している議員も多い。これら議員の質の低下、住民の無関心と住民自治への理解のなさは大きな問題である。

課題としてはこれらを解決すること、さらに政策提言型議会の構築、行政の監視、住民から信頼される議会に努め、加えて、住民による議会の監視を強める必要がある。多様化する社会において、いまだにハコモノ建設に邁進する首長を支持する議会であったり改善を要する。町村議員に生活給の補償と住民の涵養(かんよう)を進めないことには地方政治はよくならないと考える」

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議員のかただけでなく、読者の皆様にも、地方議会の課題についてのご意見をいただきたいと思います。下のリンク先の「ニュースポスト」にぜひ、「議員アンケートについて」などと書いて、投稿をお願いします。

【全議員アンケートについて】

NHKは、ことし1月から3月にかけて、全国1788の都道府県・市区町村の議会と、所属する約3万2000人の議員全てを対象とした、初めての大規模アンケートを行いました。議員のなり手不足など、厳しい状態に置かれている地方議会の現状を明らかにし、「最も身近な民主主義」である議会のあり方について、有権者一人一人に考えていただく材料にしてもらおうというのが趣旨です。
約60%にあたる1万9000人余りから回答が寄せられています。集計結果をもとに、テレビ番組や特設サイト、そして週刊WEBメディア「政治マガジン」などで、統一地方選が終わる4月末にかけて「議員2万人のホンネ」と題したキャンペーン報道を行っていきます。