就活生の逆襲!?

就活生の逆襲!?
画像は今、注目を集めている就活生のツイート。実際にあった面接でのやり取りです。就活は誰のもの?現場から聞こえてくる声です。(ネットワーク報道部記者 郡義之 藤目琴実 國仲真一郎)

「それすら知らないの?」

冒頭のやり取りは、Office365をソフトウエアの名前と勘違いし、毎月、あるいは毎年一定額を払うことでWordなど複数のソフトを利用できるサービスの名称であることを、面接官が知らなかったが故に起きたと思われる悲劇です。

これがツイートされると、就職活動に励んでいる学生を中心に一気に拡散しました。

対等な就職活動を

実際、面接後の結果はどうだったのでしょうか?ツイートした雨宮夏樹さん(仮名)に、話を聞くことができました。

面接があったのはことし3月。冒頭のやり取りは面接官に「PC環境は?」と尋ねられた中での出来事だったそうです。実は雨宮さん、その後選考を途中で辞退する意思を会社側に伝えていました。原因は、冒頭のやり取り以外にもあったと言います。
「面接の際に課題を与えられたのですが、事前の具体的な指定がなかったうえ、『こういうのしかできないんですか?』と鼻で笑われるような対応をされました。その対応に困惑するとともに悔しさで胸が苦しくなり、選考は辞退することにしました。就活生は入社志望者であると同時に、顧客でもあると思います。企業と就活生が対等な立場で話をできる環境が理想的な就職活動だと改めて感じました」
雨宮さんのツイートにコメントを寄せた人たちからも同じような意識の一端が見てとれます。

「お祈りメール」にも変化?

時代と共に変わる就活生の意識を反映してか、企業から送られる「お祈りメール」にも変化の兆しが現れているようです。

「お祈りメール」とは、企業が不採用の際に本人あてに送るメールのことで、文末に「今後のご健闘をお祈りします」などということばが添えられているため、こう呼ばれるようになりました。

大学をことし卒業したうえで就職浪人し、今も就職活動を続ける静岡県の美知子さん(仮名)は去年、およそ20社から事務的な「お祈りメール」を受け取りました。
ある機械メーカーを受験した時には、「うちもぜひ採用したいです」「実家から近いなら通えるね」などと、期待を持たせることばをさんざん言われたあげくの「お祈りメール」でした。
「ショックでした。就活生はそれまで時間やお金をかけて準備しているのに機械的にお知らせするだけで思いやりがないと感じました」(美知子さん)

“できるかぎりのご説明を”

こうした中で変化の兆しを感じた「お祈りメール」があると言います。この春受験した赤ちゃん用品メーカーからの不採用通知です。

メールには人事担当者の名前が記され「できるかぎりのご説明を差し上げたいと思います」としたうえで、具体的な説明が書かれていました。
メールには「学校名を排除したうえで能力検査とパーソナリティーを総合的に判断し、会社とよりマッチングすると思われる方を通過とさせていただきました。誤解していただきたくないのですが美知子さんのお人柄や美知子さんの何かがだめだったということでは決してありません」と書かれていたのです。
「自分の人格を否定せずに説明してくれるところに思いやりを感じました。できれば次につながるよう、なぜ自分がだめだったのかを教えてほしい。企業もひとつひとつのことばを大切にして就活生に伝えてほしい」(美知子さん)

具体的な指摘も

さらにネット上では、不採用の理由を具体的に指摘した「お祈りメール」も報告され、就活生からの熱い支持を集めています。

都内に住むなぎさんは去年、受験した情報通信会社から以下のような「お祈りメール」を受け取りました。
なぎさんは、「落ちたことは残念だったし悔しかった」としながらも、「次の会社の面接は頑張ろうと前向きな気持ちになりました」と言います。

企業の担当者は?

こんな気持ちにさせてくれる「お祈りメール」を送るのは、どんな会社?中の人はどんな人なの?

大阪市に本社がある情報通信会社「シナジーマーケティング」の新卒担当伊藤正輝さん(31)に話を聞きました。

この会社では10人程度の新卒採用に対して、採用活動で出会う学生は300人から500人。要するに、少なくとも290通の「お祈りメール」を送っていることになります。

これだけの数だとさすがにテンプレートがあるのかと思いきや…
「就職活動の考え方など、共通する内容もありますが、基本的には一人一人個別に書いています。学生が直接フィードバックを受ける機会はあまりないと思うので、私自身は嫌われてもいいという覚悟で、あえて率直に伝えるようにしています」
ちなみにどんな表現で不採用を伝えるのか、具体的な例で説明してもらいました。
ケース1“世の中を幸せにしたい”
例えば「世の中を幸せにしたい」という志を強調するものの、仕事の中でどう実現するのかが漠然としている学生に送るとしたら。
「世の中を幸せにしたいという思いはすばらしいものです。ただ、ITやマーケティングといった当社の業務へのイメージがぼんやりとしていて、このまま働き始めた場合、結果的にあなたがギャップを感じることになると思います」
ケース2“成長したい”
志望理由が「成長したい」「有名になりたい」「ワークライフバランスがとれた、ホワイトな環境で働きたい」などの場合には次のような答えになるそうです。
「望んでいる内容が悪い訳ではありませんが、自分が求めることばかりで、仕事の視点、お客様の視点が不足していると感じました」

一人一人の個性と向き合う

こうした「お祈りメール」を受け取った学生がさらに反発するようなことはないのでしょうか?
「選考過程で時間をかけて信頼関係を築いていることもあり、メールに対しては好意的な反応が多いです。さらに不採用にした学生から、その後も就職活動の相談を受けたり、内定の報告をもらったりすることもありますよ」
届いたメールには100%返信するようにしているという伊藤さん。そこまで労力をかける理由は何でしょうか?
「仕事では、人との関係づくりがすごく大事です。応募してもらった以上、不採用になったとしても一人一人にとって価値のある時間にしてほしいと思っています」
企業と学生それぞれがマッチングを探り、一人一人の個性と向き合う就職活動。平成の最後になって、そんな状況が生まれてきているのかもしれません。