WTO報告書 漁業関係者から驚きや失望の声

WTO報告書 漁業関係者から驚きや失望の声
k10011881821_201904121253_201904121255.mp4
原発事故による汚染水問題を理由に、韓国政府が福島など8つの県の水産物の輸入を禁止していることについて、WTO=世界貿易機関の上級委員会は、韓国側に是正を求めた第1審にあたる小委員会の判断を取り消すとした報告書を公表したことを受けて、各地の関係者からは驚きや失望の声が上がっています。

ホヤを輸出していた宮城では

宮城県は、東日本大震災の前、ホヤを年間で1万1000トンほど水揚げし、その7割から8割を韓国に出荷していました。

しかし、韓国政府による輸出禁止の措置を受けて、これまで養殖したホヤを廃棄処分にしたほか、そのほとんどを国内で消費するなど厳しい対応を迫られてきました。

今回のWTOの決定を受けて、宮城県漁業協同組合の平塚正信理事は「勝訴すると信じて漁業者とも出荷にむけた準備をしてきましたが、敗訴ときいて驚いています。震災から8年がたつ中で、振り出しに戻ってしまった印象です」と残念そうに語りました。

そのうえで「放射性物質の検出の有無にかかわらず出荷できない状況は、もはやただの外交問題になっているのではないかと感じてしまいます。われわれとしては引き続き他の販路を見つける努力をしていくしかないです」と話していました。

ホヤ養殖業者「国は粘り強く交渉を」

宮城県南三陸町の志津川地区の高橋源一さんは、震災の前からホヤの養殖業を営んできました。

宮城県産のホヤは震災前、水揚げ量のおよそ7割が韓国に輸出されていましたが、韓国政府による輸出禁止の措置を受けて、同業者の多くが廃業や業種の転換をしたということです。

高橋さんは「これまで安全性を示すための努力をしてきたのに憤りを感じる。国には今後粘り強く交渉を進めてほしいし、そうでなくては困る」と話していました。

青森のホタテ養殖業者も驚きと憤り

青森県平内町でホタテを養殖する塩越秀一さん(71)は、「日本の水産物ほど新鮮で安全なものはないと思う。安全なホタテを出荷しようと心がけてきたので敗訴は納得できない。政府には韓国に対して禁輸をしないように強く訴えてほしい」と話していました。

また、同じくホタテを養殖する船橋博孝さん(66)は「ニュースを聞いて驚いた。検査を行っても水産物の汚染は確認されていない。韓国側には、汚染があるかどうかを科学者を連れてぜひ確認に来てほしい」と怒りをあらわにしていました。

福島の水産物輸出業者「ほかの国々 追随しないでほしい」

水産加工品を海外に輸出している福島県いわき市にある鮮魚店の小野崎幸雄社長は「福島の魚介類はすべて検査を受けていて、世界一安全だと自負して売り込んできたのに非常に残念だ」と話していました。

小野崎さんは震災のあと激減した販路の拡大を目指してアジアを中心に海外の商談会に積極的に参加し、来週も中東のドバイで現地のスーパー経営者と今後の輸出について商談を行う予定です。

小野崎さんは「海外での日本食への関心は高まっているので、輸出はチャンスだと思う。そうした中の今回の判断で、ほかの国々が追随したり消費者に不安感が広がったりしないでほしい」と話していました。

福島県沖で試験的に漁を続けている漁協は

福島県沖で試験的な漁を続けている相馬双葉漁協の立谷寛治組合長は「福島の魚は厳しい基準を設けて、安全性を確認しているのにこのような判断になり、大変悔しい。国などには今後もこれまでどおり、漁業者がとってきた魚の安全性をしっかりPRしてほしい」と話していました。

福島の漁業 独自に厳しい基準と検査

原発事故のあと、福島県沿岸の漁業は、安全性が確認された魚種と海域で行われています。

福島県は、この海域で定期的に魚介類をとり、放射性物質の検査を行っています。

それによりますと去年までの3年間に調べた2万3782検体のうち、国の食品の基準の1キロ当たり100ベクレルを超えたものはなく、97.3%では、検査器が検出できる限界の値を下回ったということです。

一方、福島県漁連も水揚げされたすべての魚種で漁のたびにサンプル検査を行っており、この3年間で国の基準を超えたものが1件ありましたが、すぐにこの魚の出荷を停止しました。

さらに県漁連は、国の基準より2倍厳しい1キロ当たり50ベクレルという自主的な基準を設けていて、上回った魚種は一時的に出荷を停止する措置をとることにしています。
こうした1キロ当たりの基準は、アメリカの1200ベクレル、EUの1250ベクレルなど、国際的にみても非常に厳しいものとなっています。

福島県漁連「驚くとともに残念で困惑」

福島県漁連の野崎哲会長は「『必要以上の貿易規制だ』としてきた判断がどうしてこうなったのか、驚くとともに残念で困惑している。ほかにも輸入規制を続けている国々があるので、悪い影響が広がらないようにしてほしい。県漁連としては、国の基準よりも厳しい検査で安全の徹底に努めてきたが、今まで以上に消費者の理解を得る努力をしていくしかない」と話しています。

岩手県 達増知事「判断は残念」

今回のWTOの判断について岩手県の達増知事は12日開かれた記者会見の中で、「安全を確認して韓国から来た人も含めて観光客に食べてもらっているので、今回の判断は残念だ」と述べ、引き続き、国に対して韓国政府への働きかけを要望する考えを示しました。

また達増知事は「韓国への輸出ができないとしても、他の国への輸出や国内消費、それに力を入れる魚種の変更を進めるなど戦略的に対応していきたい」と述べ、今回の影響を抑えるための取り組みを進める考えを示しました。

岩手県では震災前はスケトウダラなどを韓国に輸出し、輸出額は年間2億円から3億円に上っていたということです。

千葉県「今後の状況を見守る」

千葉県によりますと、原発事故の前、韓国に向けては県内から冷凍したサバやカタクチイワシ、それにサンマなどが輸出されていたということです。

今回の決定を受けて、県は「今後の状況を見守るとともに、引き続き、県内で水揚げされた水産物の安全性を訴えていきたい」としています。

県内で水揚げされた水産物は、原発事故のあと、韓国だけでなく、中国と台湾に向けても輸出できない状況が続いています。