シリア領ゴラン高原 トランプ大統領「イスラエルに主権」署名

シリア領ゴラン高原 トランプ大統領「イスラエルに主権」署名
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アメリカのトランプ大統領はイスラエルのネタニヤフ首相との首脳会談に合わせて、イスラエルが占領するシリア領のゴラン高原について、イスラエルの主権を認める宣言に署名しました。来年の大統領選挙を見据えてイスラエルを擁護する姿勢を鮮明にした形ですが、シリアやその後ろ盾のイランが反発し、緊張が高まるおそれもあります。
トランプ大統領は25日、ホワイトハウスでネタニヤフ首相と首脳会談を行い、「イスラエルの自衛能力を強化するために、歴史的な措置をとる」と述べて、イスラエルが占領するシリア領のゴラン高原についてイスラエルの主権を認める宣言に署名しました。

これに対しネタニヤフ首相は「エルサレムの首都認定に続いてまたもや勇気ある決断をしてもらった。あなたは歴代のアメリカ大統領の中でイスラエルにとって最良の友人だ」と謝意を表しました。

ゴラン高原はもともとシリアの領土ですが、1967年の第3次中東戦争で隣国イスラエルが占領しました。

最近はシリアのアサド政権を支援するイランがゴラン高原の周辺まで軍事的な影響力を伸ばしているとして、イスラエルは主権を認めるようアメリカに働きかけていました。

ネタニヤフ首相は来月の議会選挙で苦戦が伝えられる中、トランプ大統領から引き出した外交的な成果だとして国内向けにアピールしたい考えです。

一方、トランプ大統領としては、敵対するイランの動きをけん制するとともに、イスラエルを擁護する姿勢を鮮明にすることで来年の大統領選挙を見据えてキリスト教福音派など国内の支持基盤をつなぎとめるねらいがあります。

ただ、シリアやシリアの後ろ盾となっているイランが反発し、イスラエルの周辺で緊張が高まるおそれもあるほか、イスラエルの主権を認めていない国際社会にも波紋が広がっています。

中東諸国は反発「占領された領土」

中東各国からは反発の声があがっています。

シリアのムアレム外相は25日、国営テレビを通じて「ゴラン高原についてイスラエルの主権を認めたことで、アメリカは自身の孤立を招くだろう」とアメリカを非難し、「何年たとうとゴラン高原が占領されたシリアの領土であるという事実は変わらない」と訴えました。

アラブ諸国やパレスチナが加盟するアラブ連盟は25日、アブルゲイト事務局長の声明を発表し、「アメリカの宣言によってもゴラン高原の法的地位は何ら変わらない。占領されているシリアの領土であり、イスラエルの主権は認められていない。国連安保理の決議でもこの点は確認されている」と強調しました。

そのうえで「アラブ連盟は占領地におけるシリアの権利を強く支持し、この立場はアラブ諸国の賛同を得ている」として、今月末にチュニジアで開かれるアラブ連盟の首脳会議でもこの立場が確認されるだろうとの見通しを示しました。

ロシア「重大な国際法違反」

アメリカがゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めることについて、シリアの後ろ盾となっているロシアは強く反対してきました。

25日、トランプ大統領による署名の前にアメリカのポンペイオ国務長官と電話会談を行ったロシアのラブロフ外相は「イスラエルの主権を認めることは重大な国際法違反だ。シリア危機を収束させる上で障害となり、ひいては中東全体の情勢を深刻化させる」とけん制しました。

官房長官「併合認めない立場 変更ない」

菅官房長官は、閣議のあとの記者会見で「わが国としては、本件をめぐる動向を関心を持って注視していきたい。いずれにしろ、わが国はイスラエルによるゴラン高原の併合を認めないという立場であり、変更もない」と述べました。

また菅官房長官は、記者団が「エジプト東部のシナイ半島で停戦監視にあたる多国籍軍・監視団の司令部に、自衛官を派遣する方針に影響はあるか」と質問したのに対し、「特段の影響はないと考えている」と述べました。