“ロシア疑惑” 大統領の「犯罪」 立件困難の見方も

“ロシア疑惑” 大統領の「犯罪」 立件困難の見方も
アメリカのトランプ政権の行方に大きな影響を与えるロシア疑惑の捜査が終結しました。アメリカのメディアは新たな起訴はないと伝える一方、大統領は通常の刑事手続きでは起訴できないとされていて、捜査報告書にトランプ大統領への何らかの言及があるのか、その内容がどこまで公表されるかが焦点となります。
アメリカ司法省は22日、ロシア疑惑の解明にあたってきたモラー特別検察官が捜査を終結し、バー司法長官に捜査報告書を提出したと発表しました。

ロシア疑惑は2016年の大統領選挙でロシアがトランプ大統領の誕生を後押しするためサイバー攻撃などで干渉したとされるもので、トランプ陣営とロシアとの共謀の有無、それにトランプ大統領による捜査の妨害、司法妨害があったかどうか捜査が続けられてきました。

一連の捜査でモラー特別検察官はトランプ陣営の元幹部ら30人以上を起訴しましたが、アメリカの複数のメディアは捜査終結にあたり報告書では新たな起訴は提言されていないと伝えました。

ただ司法省は過去に現職の大統領についてはその役割の重要性から通常の刑事手続きでは起訴できないという見解を示していて、トランプ大統領に何らかの違法行為があったかどうかは依然、不透明です。

また報告書は機密扱いとなっていて提出を受けたバー司法長官が今後、その主要な結果を議会に伝えることになっていますが、どこまで公表するかは司法長官の判断に委ねられています。

このため報告書にトランプ大統領への何らかの言及があるのか、その内容がどこまで公表されるかが今後の焦点となります。

ロシア疑惑とは

「ロシア疑惑」の発端は2016年のアメリカ大統領選挙にロシアがサイバー攻撃などを通じて干渉したとされる問題です。

アメリカの情報機関は2017年1月、ロシアのねらいが民主党のクリントン陣営を妨害しトランプ大統領の誕生を後押しすることにあったと断定しました。

そのロシアにトランプ陣営が接触していたことがメディアの報道などで次々に明らかになり、FBI=連邦捜査局はトランプ陣営が選挙干渉に関与していたのかどうか共謀の疑惑の捜査に乗り出します。

これに激しく反発したトランプ大統領は2017年5月、FBIのコミー長官を突然、解任。

その後、コミー氏がトランプ大統領から捜査中止の指示と受け止められる発言があったと証言したことなどから、トランプ大統領が捜査を妨害した「司法妨害」の疑惑も浮上します。

こうした中、司法省は独立性の高い特別検察官に元FBI長官のモラー氏を任命。

モラー特別検察官はサイバー攻撃で選挙に干渉した疑いのあるロシアの情報機関の関係者に加え、トランプ陣営の元幹部やトランプ大統領の元側近らも対象に捜査を進め、30人以上を起訴。

その過程で疑惑の鍵を握るトランプ氏周辺の重要人物に司法取引をもちかけて捜査に協力させ、解明を進めてきました。

これに対しトランプ大統領は疑惑を全面的に否定。

モラー特別検察官の事情聴取には応じず、書面で質問に回答するとともに、捜査を「魔女狩りだ」などと非難し、猛烈に反発してきました。

「共謀」と「司法妨害」立件困難の見方も

ロシア疑惑の捜査ではトランプ大統領やその元側近らの犯罪の共謀や司法妨害の有無が大きな焦点になっていますが、立件のハードルは高いと指摘されています。

アメリカ連邦法はアメリカに対する犯罪行為の実行で2人以上の者が共謀した場合、共謀罪が適用されると規定しています。

その立証で極めて重要な要素となるのが犯罪を犯す「意図」があったかどうかで、これが明確に証明されなければ罪には問われません。

一方で犯罪を犯す「意図」を共有していたと証明されれば、実行行為そのものに関わっていなくても計画に合意していただけで罪に問われます。

今回の場合は選挙期間中のロシアによるサイバー攻撃などの犯罪にトランプ氏や陣営の幹部が合意していたり、事前にその意図を知っていた場合に罪に問われる可能性があります。

ただ証明には関係者の証言や計画段階でのメモ、録音などの証拠が必要だとされていて、立件は困難ではないかという見方をする専門家は少なくありません。

司法妨害罪でも問題となるのが、その「意図」があったかどうかです。

司法妨害罪は当局による捜査を妨害するか、刑事手続きに影響を与える目的で不正な働きかけをした場合に適用されます。

今回、トランプ大統領は当初、ロシア疑惑の捜査を指揮していたFBIのコミー元長官を突然、解任し、その後、コミー氏はトランプ大統領から捜査中止の指示と受け止められるような発言があったと証言しています。

これに対しトランプ大統領は仕事の能力を問題視したと主張していて、解任そのものも大統領の権限として認められています。

また捜査妨害の意図の有無を判断するのに不可欠とされる大統領本人への事情聴取は実現しておらず、立件は容易ではないと指摘されています。