NZ銃乱射事件 ほかに関与した人物いないか警戒

ニュージーランドでイスラム教の礼拝所が襲撃され49人が死亡した銃乱射事件で、殺人の容疑で訴追された28歳の男が16日、現地の裁判所に出廷しました。警察はさらに2人の身柄を拘束していますが、ほかにも事件に関与した人物がいるおそれもあるとして引き続き、警戒にあたっていることを明らかにしました。
日本時間の15日午前、ニュージーランド南部のクライストチャーチの中心部にある2か所のモスクで男が銃を乱射し、合わせて49人が死亡、およそ50人が病院に搬送されました。

この事件で、警察は3人の身柄を拘束し、このうち殺人の疑いで訴追されたオーストラリア出身で28歳のブレントン・タラント容疑者が16日、逮捕理由の開示を受けるため現地の裁判所に出廷しました。

地元メディアによりますと、タラント容疑者は警察官に伴われて姿を現し、廷内で発言することはなかったということです。

事件の直前には、タラント容疑者と同じ名前でツイッターに犯行声明とみられる文書が投稿され、事件を2年前から計画していたことや、白人社会が移民に侵略されているとする考えなどがつづられていました。

警察は、タラント容疑者のほかに2人の身柄を拘束していますが、この2人は男と女で「カップル」だと説明し、引き続き事件への関与を詳しく調べています。

警察は「現時点で危険な状況は把握していない」としつつも、さらにほかにも事件に関与した人物がいるおそれもあるとして引き続き、警戒にあたっていることを明らかにしました。

一方、負傷者の手当てを行っているクライストチャーチ病院は16日の記者会見で、依然として39人が病院で手当てを受けていて、このうち、11人の症状は重く、集中治療室で治療を受けていることを明らかにしました。

アーダーン首相は事件を受けて、国内の銃規制を改める考えを強調するとともに、今後は、極右思想など極端な思想を持った人物についても捜査の対象として警戒を強めていく方針を示しました。

11人の症状は重い

銃乱射事件でけがをした人が搬送されたクライストチャーチ病院によりますと、日本時間の16日正午時点での入院患者は36人となっていて、このうち20代の女性1人を含む11人の症状は重く、集中治療室で治療を受けているということです。

入院患者の大半は、30代から40代の男性だということで、中には2歳と13歳の男の子が含まれていますが、この2人の容体は安定しているということです。

また、重症の子ども1人がニュージーランド最大の都市、オークランドにある病院に搬送されて治療を受けているということです。

現場に居合わせた人「怖かった」

事件現場に居合わせた人たちは、今も当時の恐怖感が続いているといいます。

パキスタンから移住してきたシェイフ・ムハンマド・ファハドさん(31)は、事件当時、礼拝のためモスクを訪れていました。礼拝が始まってまもなく、背後から大きな音に続いて人の叫び声が聞こえ、振り返ると、顔をマスクで覆って無言で銃を乱射する男が見えたといいます。

ファハドさんは「銃から火花が出るのが見え、怖かったです。家族のことを思い、とにかく逃げることだけを考えました」と話していて、命からがら逃げ出したということです。

目の前で撃たれて倒れる人の姿がいまも脳裏を離れないということで「犯人がなぜこのようなことができるのかわかりません。犠牲になった人たちに安らかに眠ってほしいです」と話していました。

現地の中学生「机の下に隠れた」

母親が日本人で現地の中学校に通う生方オディさん(12)は、学校が閉鎖された当時の様子について「サイレンがなったあと、電気を消し、カーテンをしめて机の下に隠れた。泣いている女子生徒もいた。学校を閉鎖する理由について先生は『人が死んだ』と説明したあとに『本当に死んだかは分からない』とも言ったので、本当なのかなと思ってタブレット端末でニュースを探して読んでいた」と話していました。

また、学校ではふだんから不審者の侵入などに対応するため学校を閉鎖する訓練を行っているということで、「ふだんの訓練は和やかな雰囲気でふざける生徒もいるけど、きのうはそういうことはなかった」と話していました。

日本語補習校は休校に

現地で暮らす日本人の子どもたちのために開かれている日本語補習校は事件を受けて16日は休校になりました。

この日本語補習校は、41人が亡くなったヌール・モスクからおよそ4キロのところにある現地の小学校の教室を借りて毎週土曜日に開かれていて、幼稚園から中学校までおよそ240人の子どもたちが通っています。

16日は来週行われる卒業式の予行演習をする予定だったということです。

また、15日は学校の敷地内にある事務所に校長や教員などが出勤していて事件が発生した際、事務所の鍵をかけて電気も消し、およそ4時間待機したということです。

この日本語補習校の荒井秀典校長は「校内で『ブーッ』というロックダウン(閉鎖)の合図の音がなり、その後、校内は静まり返っていた。この街には多くの人種が暮らしみんなが同じように学ぶ教育が行われている。白人至上主義はそぐわない地域でこんなことは初めてだ」と当時の状況を振り返りました。

また、「8年前の地震からようやく復興して観光客も戻ってきたところなのにこんな事件が起きてイメージが悪くなるのは非常にショックだ」と話していました。

国連 黙とうをささげて哀悼の意示す

今回の銃乱射事件を受けて、国連安全保障理事会は15日、会議の冒頭、各国の代表が黙とうをささげて哀悼の意を示しました。

また、国連のグテーレス事務総長は15日、ツイッターで「モスクで平和的に祈っていた無実の人々が銃撃されたことを強く非難する」として犠牲者を悼むとともに、イスラム教への憎悪やあらゆる偏見に対し、国際社会が団結して立ち向かうよう呼びかけました。

フェイスブックなど対応急ぐ

世界最大の交流サイトを運営するフェイスブックは、ニュージーランドの警察からの注意喚起を受けて、フェイスブックのライブ機能を使って投稿された銃乱射の動画を削除するとともに、容疑者のフェイスブックとインスタグラムのアカウントを削除したことを明らかにしました。

ただし、動画はユーチューブやツイッターで繰り返し共有され、拡散しています。フェイスブックのライブ機能は、簡単にリアルタイムで動画を共有できるのが特徴で、友人どうしで楽しむだけでなく、記者会見や選挙期間中の演説会などの配信にも使われています。

一方で、2017年にはアメリカ中西部オハイオ州で起きた殺人事件がライブで配信され、大きな問題となりました。

フェイスブックに投稿される内容をめぐっては、2016年のアメリカ大統領選挙で、ロシア政府に近いとされる団体による偽の情報の拡散を阻止できなかったという批判が根強く、会社がもっと責任を持って内容をチェックすべきだという声が強まっています。

これに対してフェイスブックは、不審な内容の検知に向けて、AI=人工知能を活用し、2万人もの人員を投入していると説明していて、今回の銃乱射については、「問題の動画を検知するたびに社内のデータベースに追加し、次からは自動的に削除するようにしている」とコメントしています。

また、ユーチューブとツイッターも銃乱射の動画や画像の削除を進めているとしています。