ジョンナム氏殺害事件 ベトナム人被告は裁判継続 マレーシア

ジョンナム氏殺害事件 ベトナム人被告は裁判継続 マレーシア
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北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の兄、キム・ジョンナム(金正男)氏がマレーシアで殺害された事件の裁判で、検察は、実行犯とされるベトナム人の女の起訴の取り下げを認めず、裁判は続けられることになりました。
北朝鮮のキム・ジョンナム氏はおととし2月、クアラルンプール国際空港で猛毒のVXによって殺害され、実行犯としてベトナム人のドアン・ティ・フオン被告が殺人の罪に問われています。

裁判では、もう1人の実行犯とされたインドネシア人の女性の起訴が3日前に取り下げられ、女性は釈放されて帰国しました。

これを受けて、フオン被告の弁護士も起訴の取り下げを求めましたが、14日に開かれた裁判で検察側は起訴の取り下げを認めないことを明らかにし、裁判は続けられることになりました。

弁護士は「被告のうち一方だけを優遇している。差別的だ」と訴えたうえで、フオン被告の体調もすぐれないとして、14日に予定されていた被告人質問などの期日の延期を求め、裁判官はこれを認めました。

法廷で発言を促されたフオン被告は「気分はよくありません。ストレスを感じ、悲しいです。いったい何が起きているのかわかりません」と話していました。

今回の検察の判断は被告によって分かれる結果となりました。犯行時の状況をとらえた空港の監視カメラの映像では、フオン被告がキム・ジョンナム氏に直接、液体を塗る様子が映っていました。

これに対して、釈放された女性はそばにはいたものの直接何かをした様子は映っておらず、弁護士も直接的な証拠はないと主張していました。

ただ、検察は判断が分かれた理由を明らかにしていません。フオン被告の弁護士は今後も起訴の取り下げを求め続けていくとしています。

フオン被告「何もしていない」

裁判にはクアラルンプールにあるベトナム大使館から大使をはじめとした関係者が傍聴に訪れていました。廷内では、裁判が終了した直後、大使らがフオン被告に歩み寄って手を握りました。

これに対して、フオン被告は何かを話し始めましたが、途中から涙声に変わり、「ともに起訴された女性が釈放されたことへの怒りはない。私が何もしていないことは神が知っている」などと訴えていました。

弁護側「理由の説明を」

フオン被告の弁護士は裁判のあと、記者団に対して「落胆している。なぜフオン被告の起訴の取り下げは却下され、もう一方は認めたのか、理由を説明するべきだ」と述べました。

そして、検察に起訴の取り下げを求め続けていく考えを示し、「ここ数日でベトナム政府がマレーシアの閣僚とやり取りし文書も送ったと聞いた。裁判の延期は政府間で話をしてもらうための時間を稼ぐねらいもある」と明らかにしました。

被告の父親「納得できない」

検察が起訴の取り下げを認めなかったことについて、フオン被告の父親はNHKの電話取材に応じ、「もう1人は釈放されたのに、どうしてこんなことになるのか、納得できない」と述べました。

そのうえで、「私にできることは何もないし、待つことしかできない。ベトナム政府とマレーシア政府には、私の娘と、娘を待つ私たち家族を助けてほしい。早く娘を釈放してほしい」と訴えました。

ベトナム外務省「大変遺憾」

ベトナム外務省は、マレーシアの検察がフオン被告の起訴の取り下げを認めず、釈放しなかったことについて遺憾の意を示しました。

ベトナム外務省の定例の記者会見でレ・ティ・トゥ・ハン報道官は、「ベトナム政府はこの裁判について、これまで常にマレーシア側に公平で公正な裁判が行われるよう求めてきた」と説明したうえで、「今回、フオン被告がすぐに釈放されなかったことを大変遺憾に思う」と述べました。

そして、裁判が続けられることになったことについて、「ベトナム政府は常に公平で公正な裁判が行われ、フオン被告が釈放されることを求めている。マレーシア側もベトナム政府、国民がこの件を注視していることは理解していると思う」と述べて、3日前に釈放されたインドネシア人の女性と同様に、フオン被告についても起訴が取り下げられ、帰国が実現することを望むという姿勢を示しました。