イギリス議会「合意なき離脱」の回避 採決へ

イギリス議会「合意なき離脱」の回避 採決へ
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イギリス議会は、EU=ヨーロッパ連合と何の取り決めもないまま離脱する「合意なき離脱」を回避するのか、まもなく採決を行います。回避することに支持が得られれば今度は離脱の延期の是非について議論を進めることになります。
イギリス議会では、メイ首相が取りまとめた「離脱協定案」が否決されたことを受け、13日、日本時間の14日朝、EUと何の取り決めもないまま離脱する「合意なき離脱」を回避するのか採決が行われます。

議会では、与野党ともに経済に混乱が広がることへの懸念が強く、提案は支持される可能性が高いと見られます。

ただ、政府は今回、「今月29日の時点でEUとの合意がない場合、離脱を見合わせる」と提案に条件をつけていて、議会で支持が得られても、「合意なき離脱」の回避は、あくまで当面ということになります。

採決の結果、「合意なき離脱」が回避されれば、議会は翌日、離脱の延期について改めて採決を行うことにしていますが、延期の目的や延期する期間をはじめ、その後の離脱に向けた戦略については不透明なままです。

採決を前に、のどを痛めたメイ首相に代わって答弁にたったゴーブ環境・食料・農村相は、「議会は拒否することにたけていて、協定案を否決し続けているが、今度はみずから何を求めるのか決めなければならない」と述べ、与野党で合意できる案を模索するよう訴えました。

合意なき離脱とは

イギリスはEU=ヨーロッパ連合から離脱するのにあたって、EUとの間で離脱のさまざまな条件を定めた協定を結ぶことになっています。

協定案には離脱による市民生活や企業活動への影響を最小限にとどめるため、来年末まで移行期間を設けることが盛り込まれています。

イギリスとEUの議会で承認されれば、離脱のあと移行期間が始まり、この間、イギリスはEUの単一市場と関税同盟に残ることになり、事実上、EUにとどまります。

そして、この間に貿易のルールなど新しい関係についてEUと協議をすることになっています。

一方、議会の承認を得られなければ、イギリスは離脱協定がない状態でEUから離脱します。これが「合意なき離脱」です。

この場合、来年末までの移行期間はなくなり、これまであたかも同じ国のようにモノや人が自由に行き来していた関係が、何の取り決めもない状態に突然、変わります。

このため人々の暮らしやビジネスの環境が急激に変化し、甚大な影響が出ると懸念されています。

ただ、EUとの決別を訴える離脱強硬派の中には、「合意なき離脱」による経済的な損失は一時的で、むしろEUのルールに縛られずイギリス独自の判断で世界各国と貿易交渉ができるようになるため、長期的に考えればイギリスの成長につながると主張する人もいます。

合意なき離脱 経済はどうなる

イギリスとEUの間では現在、あたかもひとつの国のように人やモノが自由に行き来していますが、「合意なき離脱」となると、この状態は一変します。

イギリスにとって輸出入のそれぞれ半分を占めるEUとの貿易では、関税が復活し、国境を通過するモノに対して通関の手続きが必要になります。

こうした事態に備え、イギリス政府はことし1月、フランスからの積み荷が届く南東部で、激しい渋滞の発生を想定した訓練を行ったほか、今月13日には「合意なき離脱」となった場合、輸入する大部分の品目で関税をゼロにすると発表しました。

しかし、イギリスに拠点を置く企業の間では煩雑な通関手続きで物流が滞るおそれがありEUへの輸出品には関税がかかるようになると懸念する声が強まっています。さらに電化製品や医療機器などの安全基準を認証する仕組みなどはばらばらになり、「合意なき離脱」のあと、イギリスで審査を受けた認証はEU域内で認められなくなります。

こうした中トヨタ自動車はイギリスからの車の輸出に関税がかかれば打撃だとして、将来的には撤退も選択肢になり得るとの認識を示しているほか、BMWはイギリスでの乗用車「ミニ」の生産を別の国に移すことを検討していると明らかにしています。

ハモンド経済相は13日、議会での演説で、「合意なき離脱」になれば「イギリス経済は短期間で深刻な打撃を受けるだろう。失業者が増え、給料は下がり、物価は高騰する」と懸念を表明しています。

また、中央銀行のイングランド銀行は、最悪の場合、イギリスのことしのGDP=国内総生産は伸び率が当初の予測より8ポイント縮小し、通貨ポンドが大幅に値下がりするおそれがあると警告しています。

合意なき離脱なら関税ゼロに

イギリス政府は、「合意なき離脱」となった場合、EU=ヨーロッパ連合からの輸入品に突然、関税がかかると、市民生活や企業活動が大きく混乱するとして、13日、大部分の品目は関税を一時的にゼロにすると発表しました。

イギリスは輸入の半分がEUからで、あたかも同じ国のようにモノが行き来している現在は、どの品物にも関税はかかっていません。

しかし「合意なき離脱」となると、今月29日をもってEUと何の取り決めもない状態になるため、輸入品に関税がかかることになります。このため食料品から工業製品まで、あらゆる品物を輸入する際のコストが上がり、市民生活や企業活動は大きな打撃を受けることが懸念されています。

議会で「合意なき離脱」を回避するかの採決に先立って、イギリス政府は13日、「合意なき離脱」となった場合は最大で1年間、輸入品の大部分で関税をゼロにすると発表しました。

関税がゼロになるのは輸入総額の87%にあたり、イギリスに生産拠点を置く自動車メーカーが懸念していた車の部品も含まれます。

一方、これまでEUが産業保護のために関税をかけていた肉類や乳製品、自動車などは関税ゼロの対象外となります。

また、陸続きのアイルランドからイギリスの北アイルランドに輸入される品物は国境での検査を避けるため、関税をかける措置はとらないとしています。

イギリス政府は「最優先にすべきことはEUとの取り引きを維持することだ。国内の物価の高騰を防ぐことにつながるだろう」としています。今回の措置は日本などEU以外の国からの輸入品も対象で、品物によってはこれまでより関税が引き下げられることになります。

一方で、イギリスからEUへの輸出では「合意なき離脱」によって関税が新たにかかるようになり、イギリスで組み立てた製品をEUで販売しているメーカーなどには大きな影響が出ることになります。

財務相 影響を警告

イギリスのハモンド財務相は13日、議会で「合意なき離脱」をめぐる採決に先立って財政に関する演説を行いました。

この中でハモンド財務相はイギリス経済の先行きは不透明感に覆われているとして、ことしのGDP=国内総生産の伸び率が当初の予測の1.6%を大きく下回る1.2%にとどまるという見通しを明らかにしました。

また「合意なき離脱」になった場合の影響について、「イギリス経済は短期間で深刻な打撃を受けるだろう。失業者が増え、給料は下がり、物価は高騰する。このような状況は3年前の国民投票で国民が望んだ状況ではない」と述べました。

そのうえで、「離脱をEUとの協定に基づいた形にしてこそ国民の経済政策への信頼が得られる」として「合意なき離脱」を避けるよう訴えました。