不適切調査 職員は認識も厚労省内で共有されず 530億円支給へ

不適切調査 職員は認識も厚労省内で共有されず 530億円支給へ
厚生労働省が賃金や労働時間に関する調査を不適切な手法で行っていた問題で、一部の職員は不適切であると分かっていたにもかかわらず組織全体で共有せず、放置していたことが分かりました。この影響で雇用保険や労災保険などが本来より少なく支給され、厚生労働省は推計でその数は延べおよそ2000万人、総額は530億円余りに上るとして、今後さかのぼって支給する方針です。
この問題は、賃金や労働時間の動向を把握するため厚生労働省が毎月行っている「毎月勤労統計調査」で、従業員が500人以上の大規模な事業所についてはすべて調査することになっていたにもかかわらず、都内ではおよそ3分の1の事業所しか調べていなかったものです。

厚生労働省は問題が起きたいきさつや影響などについて検証を進め、11日、その結果を公表しました。

それによりますと、不適切な手法は平成16年から始まり、賃金が高い傾向にある都内の大規模な事業所が多く除外されたうえ、本来の手法の調査に近づけるための統計上の処理もおととしまで行われていなかったため、調査結果が適正に調査した場合に比べて低く出ていたということです。

こうした不適切な手法で行われていることについて一部の職員は分かっていたにもかかわらず、組織全体で共有せず放置していたということです。

この影響で、調査結果を基に算定されている雇用保険の失業給付や労災保険の給付などが本来より少なく支給され、厚生労働省は推計でその数は延べ1973万人、総額は537億5000万円に上るとして、今後さかのぼって支給する方針です。

厚生労働省は11日から電話の相談窓口を設置し、支払いの対象になる可能性がある人からの相談を受け付けています。

厚生労働省の土田浩史政策立案審議官は記者会見で「国民の皆様に多大なご迷惑をしたことにおわび申し上げます」と謝罪しました。

日銀 金融政策にも使用

今回問題となった「毎月勤労統計調査」は、日銀が経済・物価の見通しを立て、金融政策を考える際にも使われています。

日銀が去年10月にまとめた「経済・物価情勢の展望」というレポートでは、この統計のデータを使って分析した図表などが8か所で掲載されています。

中でもこの統計などを基に日銀が推計している「需給ギャップ」は、2%の物価目標を目指している日銀が物価上昇の勢いを判断する際に最も重視している指標の1つです。

日銀が毎月発表する企業の間で取り引きされたサービスの値動きを示す「企業向けサービス価格指数」でも、計算の過程でこの統計を使用しているということです。

日銀は「今回の件がどのような影響を及ぼすかについては厚生労働省が公表した資料と今後の調査結果に基づき精査していきたい」と話しています。

根本厚労相「原因を明らかにする」

根本厚生労働大臣は記者会見で「政策判断や学術研究、経営判断の礎となり正確性が求められる調査で、こうした事態を引き起こしたことは極めて遺憾で、心からおわび申し上げる」と謝罪しました。

そのうえで「今後、事案の原因を明らかにするとともに、統計に関する姿勢を正し、追加の給付を行うなど、しっかりと取り組んでいく決意だ」と述べました。

石田総務相「信頼損ないかねず 誠に遺憾」

政府全体の統計を所管する石田総務大臣は記者会見で「公的統計は、国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であり、信頼を損ないかねない事案が発生したことは誠に遺憾だ。再発防止の具体策を検討するよう事務方に指示した」と述べました。

一方、総務省の「消費動向指数」でもデータの一部に誤りがあったことが明らかになったことについて「非常に申し訳ない」と陳謝したうえで「請負業者の納入データに誤りがあったので、チェック体制の再構築など再発防止を徹底していく」と述べました。

自民 森山国対委員長 閉会中審査に応じる考え

自民党の森山国会対策委員長は記者団に、立憲民主党の辻元国会対策委員長から速やかに衆議院厚生労働委員会を開いて閉会中審査を行うよう要請があったとして、これに応じる考えを示しました。

そのうえで「多くの国民に支給漏れがあったことは極めて遺憾だ。国民に大変迷惑をかける結果となっている。二度と無いよう、しっかりとした対応をしなければならないし、なぜ長年にわたって続いてきたのか、委員会での審議を通じて明確にしなければならない」と述べました。

立民 長妻代表代行「国家の信頼性揺るがしかねない」

立憲民主党の長妻代表代行は記者団に、「国家の信頼性を揺るがしかねない大問題だ」と指摘し、国会審議を通じて速やかに実態を解明すべきだという考えを示しました。

長妻代表代行は「非常に驚いている。基幹統計は政策の決定や立案のために大変重要な参考資料だ。日本の国家としての信頼性を揺るがしかねない大きな問題で、実態の解明と把握を最優先させたい」と述べました。

そのうえで「自民党に『衆議院予算委員会と厚生労働委員会の閉会中審査は必ず開いてほしい』と強く要請したので、速やかに応じてもらいたい」と述べ、国会審議を通じて速やかに実態を解明すべきだという考えを示しました。

国民民主「経緯や理由を明らかにすべきだ」

賃金などに関する調査を厚生労働省が不適切な手法で行っていた問題を受けて、国民民主党は、関係省庁からヒアリングを行い、出席した議員からは「経緯や理由を明らかにすべきだ」といった意見や批判が相次ぎました。

国民民主党は、賃金などに関する調査を厚生労働省が不適切な手法で行っていた問題を受けて、11日午後、国会内で、厚生労働省など関係省庁からヒアリングを行いました。

この中で、出席した議員からは「経緯や理由を明らかにすべきだ」といった意見や、去年の1月分から本来の手法の調査に近づけるための統計上の処理が行われていたことについて、「意図的な改ざんで、隠蔽だ」といった批判が相次ぎました。

さらに厚生労働省が先月、問題を把握したあとも、説明せずに不適切な手法による調査結果を公表していたことについて、「少なくとも発表を遅らせるか、説明を付けて発表すべきで、背信的な行為だ」という批判も出されました。

公明 斉藤幹事長「政府の信用に関わる問題」

公明党の斉藤幹事長は記者団に、「許せない事態であり、給付が本来より少ないのは最も困っている人たちに打撃を与えるような結果だ。役所でなく第三者が厳しい目で組織のありようも含めて調査し、徹底的に原因を究明すべきだ」と述べました。

そのうえで「通常国会より前に閉会中審査を行うことが必要だ。予算委員会での審議も必要だということなら、視野に入れなければならないのではないか。政府の信用に関わる問題であり、徹底した国会審議を行って信用を回復しないといけない」と述べました。

共産 小池書記局長「当時の厚労相の国会招致が必要」

共産党の小池書記局長は記者会見で「国民の命に関わる問題で、厚生労働省には総括と反省を求めたい。問題が発覚したと思われる時期に厚生労働大臣をしていた自民党の加藤総務会長には、経過を説明してもらうため国会招致が必要だ」と述べました。

また「経済統計の根本のデータが偽造され、それを基に安倍総理大臣が答弁を重ねてきたことから、安倍総理大臣が出席する予算委員会を緊急に開いて徹底解明をすることが求められている」と述べました。

ツイッターにも批判・懸念

ツイッター上では批判する投稿が相次いでいます。

この中には「保険料は確実に徴収するくせに何をしているんだ」「たとえ数千円でも取り返したい」と憤る声や、「政府発表の統計データはもう信用できない。信用は完全に失墜した」などという意見もありました。

また「対象が2000万人もいたらハローワークや労基署は問い合わせが殺到してパンクするのではないか」「平成16年までさかのぼって差額を支給するのにかかる事務的なコストはどれくらいかかるのか」「転居して連絡がつかない人への対応はどうするのか」などと、今後の混乱を懸念する声もありました。