ロシア疑惑 捜査は大詰め 司法取引の元側近の罪状明らかに

ロシア疑惑 捜査は大詰め 司法取引の元側近の罪状明らかに
いわゆる「ロシア疑惑」の捜査を進めるモラー特別検察官は、司法取引に応じていたトランプ大統領の元側近の捜査協力に関する書面を相次いで裁判所に提出しました。捜査が大詰めを迎えているとされる中、今後、捜査の行方が焦点となります。
おととしの大統領選挙にロシアが干渉したとされる「ロシア疑惑」をめぐってはモラー特別検察官がトランプ陣営とロシアとの共謀がなかったかなどについて捜査しています。

大統領の元側近の2人はそれぞれ捜査当局との司法取引に応じ、ロシア疑惑の捜査に協力する姿勢を示してきました。

【元顧問弁護士 マイケル・コーエン被告】
トランプ大統領の元顧問弁護士、コーエン被告は、大統領選挙に絡んで選挙資金の不正な利用を禁止する法律に違反した罪などに問われています。

今月12日に予定されているコーエン被告の判決を前にモラー特別検察官は7日、裁判所にこれまでの両被告の捜査協力に関する書面を提出しました。

書面では、コーエン被告が2015年11月ごろからトランプ陣営に政治的な利益を提供できるとロシア人から連絡を受け、トランプ氏とプーチン大統領の会談を設定できると繰り返し伝えられていたことを証言したとしています。

そのうえで「捜査の中核となるロシア関連の案件について有益な情報を提供した」と指摘し、捜査に十分に協力したとして裁判所に適正な量刑を求めるとしています。

一方で、選挙資金違反などの捜査にあたったニューヨークの検察当局が提出した書面では、コーエン被告はモラー特別検察官への情報提供が不十分だとして、十分な刑期の禁錮刑が必要だと指摘しています。

【選対本部 元幹部 ポール・マナフォート被告】
選挙対策本部の元幹部、マナフォート被告は、ウクライナの親ロシア派の前大統領らのためにロビー活動を行って得た資金を海外の口座に隠したとして、国家に対する謀略などの罪に問われています。

マナフォート被告について、モラー特別検察官は書面で、海外のロビー活動などについて複数回にわたってうその供述をし、司法取引の合意を破ったと非難しています。

ロシア疑惑をめぐる捜査が大詰めを迎えているとされる中、今後、捜査の行方が焦点となっています。

報道官「大統領へ一切言及なし」

ホワイトハウスのサンダース報道官は7日、声明を出しました。

マナフォート被告の書面については「書面はトランプ大統領に関して一切言及していない」としてトランプ大統領は疑惑には関わっていないと改めて強調しました。

そのうえで「メディアは何もないところからストーリーを作り出そうとしている」としてトランプ大統領に批判の矛先を向けるメディアを非難しました。

コーエン被告の書面については「これまで知られていなかった点について何ら価値のあるものはない。コーエン氏は繰り返しうそをついていた」として、書面には新たな情報はないと指摘しました。

解任されたFBI前長官「法の支配への攻撃」

ロシア疑惑をめぐる捜査のさなかにトランプ大統領から解任されたFBI=連邦捜査局のコミー前長官が7日、非公開で行われた議会上院の委員会で証言しました。

委員会はコミー前長官の在任中の捜査に政治的な偏向があったのではないかとする与党 共和党が証言を求めて開かれました。

証言のあとコミー前長官は記者団の取材に応じ、FBIが政治的に偏向していることはないと改めて強調し、トランプ大統領がFBIや司法省への非難を続けていると指摘し、「法の支配に対する攻撃だ」と批判しました。

出席した共和党の議員はロシア疑惑をめぐるコミー前長官の証言について「アメリカ国民はこの捜査がどのようにして開始されたのか知る必要があるが、それに答えていない」と述べて今後も追及を続ける構えを見せています。

これに対し民主党の議員は「共和党は中間選挙で敗北して司法委員会をコントロールできなくなるため捜査を妨害しようと最後の抵抗をしている」と反発を強め、捜査が大詰めを迎えているとされる中、ロシア疑惑をめぐる与野党の対立も激しくなっています。

焦点は「ロシアとの共謀」「司法妨害」

捜査では「トランプ陣営とロシアの共謀」と「トランプ大統領による司法妨害があったのか」が焦点となっています。

発端はおととしのアメリカ大統領選挙にロシアがサイバー攻撃などを通じて干渉したとされる問題です。

アメリカの情報機関はロシアの狙いがトランプ政権の誕生を後押しすることだったと断定。

そのロシアにトランプ陣営の幹部が接触していたことがメディアの報道などで次々に明らかになり、FBIが選挙干渉にトランプ陣営の関与があったのかどうかという共謀の捜査に乗り出します。

これに激しく反発したトランプ大統領は去年5月、コミー長官を突然解任し、その後、コミー氏が、トランプ大統領から捜査中止の指示と受け止められる発言があったなどと証言したことから、トランプ大統領による司法妨害の疑惑も新たに浮上します。

こうした中、司法省は独立性の高い特別検察官に元FBI長官のモラー氏を任命。

モラー特別検察官は当時のトランプ陣営の幹部や関係者の身辺を調べ、さまざまな罪で立件するとともに司法取引で捜査に協力させ実態の解明を進めているとみられています。

トランプ陣営元幹部ら 次々訴追

一連の捜査で、これまでにトランプ陣営の元幹部やロシアの情報機関の関係者など30以上の個人や団体が起訴されています。

モラー特別捜査官は当時のトランプ陣営の幹部の身辺を調べ、さまざまな罪状で訴追し、その結果として司法取引で合意して捜査に協力させています。

【元大統領補佐官 フリン被告】
その1人がトランプ政権で安全保障担当の大統領補佐官を務めたマイケル・フリン被告で、ロシアの駐米大使の会談内容について、FBIに虚偽の説明をしたとして去年12月に訴追されたあと司法取引に応じました。

モラー特別検察官が今月4日に裁判所に提出した書面では、フリン被告が「政権移行チームとロシア政府とのやり取りに関して直接の情報を提供した」などとし、疑惑解明に向けた重要な情報を提供したのではないかとの見方もでています。

【元顧問弁護士 コーエン被告】
トランプ大統領の元顧問弁護士 マイケル・コーエン被告はおととしの大統領選挙での選挙資金に関する法律違反のほか、トランプ大統領が経営していた不動産会社によるモスクワでの高層ビル事業をめぐり、議会に虚偽の証言をした罪を認めています。

コーエン氏はトランプ大統領の長年の「腹心」とも言われ、トランプ大統領のビジネスや家族をめぐる事情にも詳しいとされることから、疑惑を解明する上でカギを握る人物とみられています。

【選対本部元幹部 マナフォート被告】
国家に対する謀略などの罪に問われているトランプ大統領の選挙対策本部の元幹部 ポール・マナフォート被告はことし9月、いったんは司法取引に応じました。

しかしモラー特別検察官によりますと、司法取引のあとも調べに対してうその供述を繰り返しているということです。

トランプ大統領はアメリカのメディアに対し、マナフォート被告に恩赦を与える可能性も排除しない考えを示していて、マナフォート被告がみずからに不利な供述をしないよう引き止める狙いがあるとみられています。

「捜査結果次第で大統領罷免も」専門家

アメリカ現代政治が専門の上智大学の前嶋和弘教授はNHKのインタビューに対し、今後の捜査の焦点について「最終的にトランプ大統領自身の関与がどこまで具体的な証拠をもって証明できるかだ」と指摘しました。

そして、中間選挙の結果を受けて議会下院で民主党が多数派を奪還したことで「議会でロシア疑惑についての議論に時間を割かれ、内政的にも外交的にも政治が停滞することは間違いないだろう」として、今後のトランプ政権の運営に影響が出るのは避けられないという見方を示しました。

アメリカで1970年代当時のニクソン大統領が辞任に追い込まれたウォーターゲート事件のようにトランプ大統領の弾劾手続きにまで至るかどうかについては「共和党が多数派の上院で3分の2以上が弾劾に賛成するのはかなり難しく、国民の世論が二分している今、民主党としてはいつ、どのように弾劾の手続きを進めるべきか難しい判断になるだろう」と述べました。

ただ「モラー特別検察官の捜査の結果次第では議会でトランプ大統領が罷免される可能性も残されている」として、捜査の進展を受けトランプ大統領の進退に関わる可能性もあることを示唆しました。