水害救助に特化した専門部隊を初めて設置へ 総務省消防庁

水害救助に特化した専門部隊を初めて設置へ 総務省消防庁
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大規模な災害時に全国から被災地に派遣される「緊急消防援助隊」。西日本豪雨など大規模な水害が相次ぐ中、総務省消防庁は、初めて水害救助に特化した専門部隊を設置する方針を固めました。
ことし7月の西日本豪雨では、23の都府県から延べ1万5000人以上の消防隊員が「緊急消防援助隊」として被災地に出動し、救助活動にあたりました。

しかし「緊急消防援助隊」はこれまで地震による建物の倒壊などで派遣されるケースが多く、部隊によっては、救命ボートなどの装備や水害救助の経験などが不足し、十分な活動ができないといった課題が浮き彫りになりました。

このため総務省消防庁は、水害救助における対応力を強化しようと、「緊急消防援助隊」の中に、初めて水害救助に特化した専門部隊を設置する方針を固めました。

専門部隊を設置して全国の消防に登録を呼びかけるとともに、救命ボートやドライ・スーツ、水陸両用車といった水害救助に必要な資機材の配備や訓練を進め、部隊ごとの対応力の差を解消していきたいとしています。

総務省消防庁は、今年度中にまとめる緊急消防援助隊の新たな基本計画に盛り込む方針で、「台風や集中豪雨による大規模水害が増えている中、全国どこで起きても対応できるように、水害救助の底上げを図りたい」と話しています。

専門家「水害対応力向上を」

総務省消防庁が設置する方針の水害救助の専門部隊について、消防行政に詳しい関西大学の永田尚三准教授は「水害救助は特殊な装備が必要で、地震災害とは違った専門性も必要だ。西日本豪雨でも出動する部隊の編成に苦労したのではないかと思うので、専門部隊への期待は大きい」と話しています。

そのうえで、今後の活動について、「部隊を設置するだけでなく、水害救助の装備や訓練を着実に進めることで、どれだけ水害への対応能力を高めていけるのか注目したい」と話しています。

西日本豪雨では

西日本豪雨の被災地で、緊急消防援助隊として活動した消防隊員からは、水害救助の装備が不十分だったり技術に不安を感じたりしたといった声が上がっています。

奈良県生駒市消防本部はことし7月の豪雨の際、緊急消防援助隊として岡山県倉敷市の真備町に入り、浸水地域で孤立した人たちの救助活動にあたりました。


部隊の隊長を務めた堂前睦巳さんによりますと、まず課題となったのが、装備だったということです。

出動する際、水害救助に必要な救命ボートは消防本部に1隻しかなく、当時、奈良県でも大雨になっていて、水害に備える必要から持って行くことを断念したということです。同じ理由で、水が服の中に入るのを完全に防ぐドライ・スーツも持って行くことができず、現場で隊員が汚水の中につかってしまって衛生面でのリスクを感じたということです。

堂前さんは、「ふだん担当している地域で水害救助はほとんど経験がなく、装備が不十分だと痛感した」と話していました。

さらに課題となったのが水害救助における訓練不足です。

堂前さんたちは、夜の間、ほかの消防本部が持っていた救命ボートを借りることで、家の2階に取り残された人たちの救助活動を行いました。

周囲が暗い中、流木などが混じった浸水地域で救命ボートを操り、2階にはしごをかけて孤立した高齢者などを不安定なボートに移すのは、訓練でも経験がなく非常に難しかったと言います。

堂前さんは、「水害においても効率よく救助活動ができるようにするため、今後は訓練を通してボートを操縦する技術などを向上させていきたい」と話していました。

徳島では独自の水害専門部隊も

水害救助に特化した専門部隊とはどのようなものなのか。徳島県は、独自の専門部隊の創設を決め、すでに準備を進めています。

徳島県は、西日本豪雨で広島県の被災地に緊急消防援助隊を派遣しましたが、十分な資機材がなく、救助が難航するなどの課題に直面しました。

これを教訓に、徳島県は、県独自に大規模な水害に特化した消防の専門部隊を創設することを決めました。

徳島県によりますと、今後、県内各地の消防本部から40人以上の隊員を集めて専門部隊を立ち上げ、水害に特化した訓練や水陸両用車を含めた資機材を整備するということです。

専門部隊の運用は来年夏ごろからの見込みですが、すでに実践的な取り組みが始まっています。

先月には、国から試験的に配備された最新の「水陸両用車」に消防隊員が試乗しました。

実際に川の中に入って、豪雨で浸水したり土砂が流れ込んだりした、アクセスの困難な場所でも、孤立した被災者の救助や物資の輸送などが可能であることを確認しました。

10月には部隊の中心を担う若手の隊員が、流れの激しい川の上流で高度な救助技術を身につける講習会に参加しました。

隊員たちは、これまで主に訓練をしていたプールや川の下流と違う厳しい状況の中で、どのような水害が起きても速やかに人命救助ができるよう学んでいました。

徳島県消防保安課の佐藤章仁課長は「大規模な豪雨災害は通常の資機材や車両を備えた部隊では対応できない。今後は各消防本部で連携し、機動的で迅速に対応できる部隊に仕上げていきたい」と話していました。