そのキャンセル。ちょっと待って

そのキャンセル。ちょっと待って
北海道で震度7の揺れを観測した地震から1週間が過ぎました。ここにきて、深刻化しているのが、主要産業の観光への影響です。宿泊予約のキャンセルが北海道全体で、少なくとも50万人に上り損失額は100億円に達するとの推計も。でも、広い北海道では、ふだんどおりに観光客を受け入れている地域も多くあります。そのキャンセル、ちょっと思いとどまって、出かけてみませんか?(ネットワーク報道部記者 和田麻子・木下隆児・田辺幹夫)
震度7の揺れを観測した北海道厚真町。むき出しになった山肌。土砂が崩れた先には一緒に滑り落ちた木が積み重なっています。

被災地を復興させよう。国を挙げて支援する対策が進められようとしています。

こうした中、今、大きな課題となっているのが観光への影響です。北海道の高橋知事も「観光が大変な打撃を受けている」と支援を求めています。

被災地では大きな被害

震度7の揺れを観測した北海道厚真町。むき出しになった山肌。土砂が崩れた先には一緒に滑り落ちた木が積み重なっています。

被災地を復興させよう。国を挙げて支援する対策が進められようとしています。

こうした中、今、大きな課題となっているのが観光への影響です。北海道の高橋知事も「観光が大変な打撃を受けている」と支援を求めています。

損失額は推計100億円も

地震のあと、相次いでいる宿泊のキャンセルは深刻です。日本旅館協会北海道支部連合会によりますと、アンケート調査をもとにした推計値ではキャンセルは少なくとも50万人に。このまま宿泊客が戻らなければ損失額は、100億円に達するとみられ、今後、さらに増えるおそれもあるといいます。

観光の落ち込みは死活問題

雄大な自然とおいしい食べ物が大人気の北海道。昨年度、北海道を訪れた観光客は、日帰り客と宿泊客を合わせて5610万人と過去最高。外国人にも人気が高く、宿泊客数は279万人と、こちらも過去最高。

夏から秋にかけて、かき入れ時を迎える北海道の観光。昨年度は、7月から9月に年間のおよそ4割の観光客が訪れました。この時期に、キャンセルが相次ぐのは、“死活問題”なのです。

ネット上でもさまざまな意見が

北海道に観光に行くべきか、それとも…。ネット上でも話題になっていました。

『新千歳空港行きの航空券が思ったより安く買えた、狙い目では?』といった投稿には、「ぜひ遊びに来てください」、「魚も食べていってください」などと好意的なメッセージが多く寄せられたほか、1万回以上のリツイートが。

一方で、「キャンセルする人の気持ちもわかる。心配だもんね。来月には落ち着いて完全に復興の空気になっているといいな」といったつぶやきもみられました。

広い北海道全体に…

観光への影響は、北海道全体に広がっています。世界自然遺産・知床もその1つ。
地元の観光協会が、情報発信しているツイッター。ごらんのように…今の知床はどこへ行っても閑散としてしまっているそうです。例年、この時期は、多くの観光客が訪れますが、ことしは、ホテルの宿泊やツアーのキャンセルが相次いでいます。詳しい数値はまだまとまっていませんが、「実感では7~8割減」とのことです。(地元の観光協会)

地震のあと、知床では、直後の一時期、停電しましたが、今は復旧。最寄りの空港や、道路への被害はなかったそうで、旅館やホテルも普段どおり営業しています。
同じ北海道ですが、知床半島と今回の地震の震源地は直線距離でおよそ300キロ離れているんです。東京から直線距離で300キロというと名古屋より先。大阪から直線距離で300キロはおおよそ広島市。これほど離れているのです。

知床の観光協会では今、このツイッターなどで「安心情報」の発信を続けています。「この時期は、川を遡上するサケを見ることができますし、観光船で巡る知床半島もきれいです。地震の後も変わらず、雄大な自然の姿と豊かな自然の恵みを楽しめることを、多くの方にぜひ知ってもらいたい」(観光協会の担当者)

夜景のまちも…

「100万ドルの夜景」とも称され、年間500万人が観光に訪れる函館。震源地から直線距離でおよそ150キロ離れたこのまちも観光への影響が深刻です。

道内有数の温泉地「湯の川温泉」では、1万5000人以上がキャンセル(地元組合調べ)。キャンセル数が3000人以上にのぼったホテルもあるそうです。

地震のあとの停電で一時温泉のお湯に影響が出たところもありましたが、函館市によりますと、今は、観光には影響がないといいます。
函館市の動画の一場面
函館市の公式観光情報サイトには、トップページに動画がアップされていました。地震2日後の函館の夜景から始まる1分半ほどの動画。
函館市の動画の一場面
「地震の翌日には停電が解消」。「飲食店や土産店、ホテル、温泉も営業中」。「函館は元気です」と今を伝えるメッセージが込められています。
さらには『地震の影響と函館観光に関する「よくある質問集」』も作成。31項目にわたってQA式で情報を発信しています。

地震の影響は?夜景は見えていますか? 食事は食べられますか?
市電やバスは動いていますか?といった観光に必要な情報がまとまって掲載されています。

こんなQAも掲載。

Q:余震はどれくらいありますか?
A:揺れの大きい余震は減少しつつありますが、今後も注意は必要です。

“ありのまま”を伝えていました。

Q:今、函館に行くと、かえって迷惑じゃないでしょうか?
A:観光を十分にお楽しみいただける状況です。宿泊施設の中にはキャンセルが相次いでいるところもあり、お越しいただけることが、とてもありがたいことになります。

「観光は函館にとってとても大切な産業です。宿泊施設も観光施設も平常に戻っていることをしっかりとPRして、観光客の方に早く戻ってきてほしい」(函館市観光企画課 根本弘樹さん)

行けなくても支援!

北海道に観光に行きたい。でも、すぐには行けない。そんな人たちの思いに応える取り組みを始めた企業も出てきています。
大手アパレルメーカーが手がける食品の通販サイトでは、復興支援企画が。サイトを運営する会社の担当者に話を聞いてみると地震発生の1週間後の13日、北海道を支援しようとはじめたそうです。

取り扱っているのは、イクラ、スモークサーモン、カニ、ホタテ…北海道といえばの海の幸。さらには、女性に人気が高い、北海道スイーツも。

開設初日の訪問者数はおよそ4000人と会社の想定を上回るペースだそうです。「復興支援企画頑張れ!北海道」と題したこの企画では、通常発生する手数料はゼロに。サイトの運営者に利益はありませんが「すべて北海道に」という思いを込めたそうです。

「北海道の生産者の方々には日ごろから大変お世話になっています。この特集を開設することで少しでも復興の一助になればと思います」(運営担当者)

できることは…

北海道の主要産業、観光への影響を最小限に食い止めるにはどうしたらいいのでしょうか。観光経営学が専門で小樽商科大学の内田純一教授に聞きました。
Q:キャンセルが相次いでいる現状を観光地が変えることはできるのでしょうか。

A:ツイッターなどの口コミサイトは、情報の波及力が強いです。ただ、間違った情報や個人の思い込みに基づいた情報が影響力を持ってしまうことがあります。大事なのは『公式情報』の発信です。自治体などが公式ホームページを使って正しい情報を発信して、間違った情報の火消しをしていくことが重要です。函館などのように自分たちで発信していくのは良い方法だと思います。

Q:観光客が公式ページを確認するのは手間もかかると思いますが…。

A:自治体などの公式ホームページを見る観光客は少ないと思います。もっと手軽に情報に触れることができるように、ツイッターなどのSNSを活用することが大事だと思っています。

Q:でも、今、北海道に行って大丈夫なのか?楽しめるのか?迷惑にならないか?不安はいろいろあると思いますが…。

A:災害が発生したあとは自粛ムードが広がります。確かに災害のあとは物流が滞って、飲食店で提供されるメニューが限られるといった、観光を自粛したくなる要因は出てきます。でも、観光を自粛しない方がその地域の支援につながるケースもたくさんあります。観光客が来なくなってしまうと、経済活動がストップしてしまうことになりかねず、観光地としての復興が遅れてしまいます。正しい情報をもとに判断して、観光に出かけることで経済活動を回復させていくことも必要だと思います。

行楽の秋

北海道は、ほんとに広いです。震源地に近く、甚大な被害を受けた地域では、まだ観光どころではないところもあります。でも、観光客の訪問を心待ちにしているところもたくさんあります。行楽の秋、そのキャンセル、ちょっと思いとどまって、出かけてみませんか?