もう維持できません

もう維持できません
「最近、バスの本数が減ったなぁ」と感じること、ありませんか。「何をいまさら…」と感じる方もいるかと思いますが、調べてみると、たしかに今、バス業界では大きな異変が起きていました。それも大都市部で。しかも、このままなにも手を打たないでいると、かなり深刻な事態になりそうなんです。
(宮崎放送局記者 牧野慎太朗・ネットワーク報道部記者 後藤岳彦・おはよう日本ディレクター 北條泰成)
ことし2月、福岡県民に衝撃が走りました。あの、日本最大規模のバス会社が大規模な減便を発表したのです。

その会社とは「西鉄」の愛称で福岡県民に親しまれている「西日本鉄道」。何に衝撃を受けたかというと、その対象路線でした。これまでバス路線の見直しと言えば地方の赤字路線が「定番」でしたが今回の対象は福岡市中心部。それも、屋台が立ち並ぶ「中洲」を中心に「天神」や「博多駅」などを結ぶ、1日平均8000人が利用する黒字路線でした。

会社はいわば“バスの山手線”のような「循環ルート」を縮小し、便数を大幅に減らしました。

さらに残業や飲み会で遅くなったサラリーマンなどの心強い味方だった「深夜バス」。会社にとっても、日中の2倍の料金を稼げ、いわば“ドル箱路線”でしたが、11路線すべてを廃止しました。

利用者への影響も大きく、「アテにしていたのに、仕事や飲み会で遅くなったとき、本当に困る」(会社員)、「バイトを早く切り上げないといけなくなった」(女子大学生)と悲鳴のような声があがっています。

しかし、会社はなぜ、利用者にとっても会社にとってもメリットの大きい、中心部の、しかも黒字路線で路線の見直しに踏みきったのでしょうか。

乗っている人が多いのに…

ことし2月、福岡県民に衝撃が走りました。あの、日本最大規模のバス会社が大規模な減便を発表したのです。

その会社とは「西鉄」の愛称で福岡県民に親しまれている「西日本鉄道」。何に衝撃を受けたかというと、その対象路線でした。これまでバス路線の見直しと言えば地方の赤字路線が「定番」でしたが今回の対象は福岡市中心部。それも、屋台が立ち並ぶ「中洲」を中心に「天神」や「博多駅」などを結ぶ、1日平均8000人が利用する黒字路線でした。

会社はいわば“バスの山手線”のような「循環ルート」を縮小し、便数を大幅に減らしました。

さらに残業や飲み会で遅くなったサラリーマンなどの心強い味方だった「深夜バス」。会社にとっても、日中の2倍の料金を稼げ、いわば“ドル箱路線”でしたが、11路線すべてを廃止しました。

利用者への影響も大きく、「アテにしていたのに、仕事や飲み会で遅くなったとき、本当に困る」(会社員)、「バイトを早く切り上げないといけなくなった」(女子大学生)と悲鳴のような声があがっています。

しかし、会社はなぜ、利用者にとっても会社にとってもメリットの大きい、中心部の、しかも黒字路線で路線の見直しに踏みきったのでしょうか。

バス業界でも深刻…

西日本鉄道 清水自動車事業本部長
そこで会社を訪ね、担当者にその理由を聞いてみました。取材に応じてくれたのは西日本鉄道の清水信彦自動車事業本部長。その答えは、「運転手不足」とのことでした。やはりここでも担い手不足が深刻なようです。
西鉄では、見直し前には1日20人の運転手が不足していて、慢性的な人手不足に陥っていました。

通常の運行でさえ運転手の確保が大変なのに、日常的にプロ野球や有名アーティストのコンサートなどで臨時バスの運行業務が発生。運転手たちに残業や休日出勤をお願いして、なんとか運転手のやりくりをしていましたが、こうした勤務を理由に離職する人が増加傾向になったといいます。

そこで路線の見直しに踏みきることにしましたが、会社は公共交通機関として便数が少ない郊外の赤字路線を減らすと、さすがに利用者への影響が大きいのではないかと考えたそうです。そこで、中心部の黒字路線を減らす「苦渋の決断」をしたと言います。

「状況を改善しないと、さらに大規模な路線の見直しが必要になりバス事業全体が壊れてしまうという危機感を持っていた」(西日本鉄道 清水自動車事業本部長)

運転手志望者のイベント?

深刻な運転手不足に悩むバス会社は西鉄だけではありませんでした。

国土交通省がおととし全国のバス会社を対象に行った運転手不足に関するアンケート調査。回答した350社のうち、なんと、8割が「運転手が不足している」と感じていました。しかも、このうち5社に1社が運転手が足りずに「減便」や「路線の休廃止」などを検討しなければならない状況でした。
実際、数少ない運転手をめぐって争奪戦が過熱しています。ことし5月に東京で開かれたバスの運転手を募集する就職イベントを取材すると、首都圏をはじめ、愛知や兵庫など各地のバス会社が参加していました。

バス業界が抱える特有の課題も

バスの運転手は、年間の“残業時間”が平均492時間と他の職業に比べて、3倍長い一方、平均賃金が448万円と1割ほど少ないというデータもあります。(厚生労働省 平成28年賃金構造基本統計調査)

これは、バスが渋滞に巻き込まれると目的地に5分、10分と遅れそれが積み重なって、運転手は大幅に休憩時間を削られる、つまり「残業」となるためです。

これまで多くのバス会社が地方の赤字路線を維持しようと運転手の賃金を抑えてやりくりしてきましたが、これが、人が集まらない要因になっているといいます。

運転手不足の解消 カギとなるのは…

運転手不足に悩み、ユニークな対策を取ったのが、都内のバス会社「日立自動車交通」です。
この会社が千代田区で走らせているのは、ピンク色のバス。まるで、テーマパークの中を走るようなかわいらしい車体でした。

ひょっとして、と思って会社に聞いてみると、やっぱり「女性ねらい」ということでした。運転手の制服も、女性が選んだ明るい色のデザインに変えたそうです。

もちろん、見た目だけではなく、運転免許を取る費用を出したり、子育てや家事との両立がしやすいよう早朝や深夜の勤務のない路線を女性運転手に優先的に担当させたりと、さまざまな取り組みを行ってきました。

この結果、もともと1人だった女性運転手が、この2年で5人に増えたということです。
日立自動車交通 西窪副部長
「男性の採用は伸び悩み、運転手不足が続けば減便などに踏み切らざるをえない状況だが、女性を増やしてなんとか苦境を乗り切りたい」(日立自動車交通 西窪裕光副部長)

運転手の争奪戦 さらに過熱か!?

ただ、運転手不足を解消するのは一筋縄ではいきません。外国人観光客が増え、バスの需要が年々高まっているうえに、東京オリンピック・パラリンピックでは、バスが選手や観客を会場まで運ぶ主要な交通手段となるということです。

多くのバス会社が「ますます、運転手の争奪戦が激しくなるのではないか」と危機感を強めているんです。

自分が使うバス路線が将来も維持できるかどうか…。バス会社だけではなく、行政や利用者も一緒になって、地域交通の在り方を考えていくことが大切だと感じました。