緊急現場取材 “同じ住所に250世帯” 現場に行ってみた

緊急現場取材 “同じ住所に250世帯” 現場に行ってみた
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「あす岐阜に行ってくれない?」。そんな指示を受けた私。事件?災害?何の取材かと尋ねると見せられたのがこのニュース。『岐阜市の所有する土地に住むおよそ250世帯がまったく同じ住所になっていて郵便物を配達する際などに混乱が生じているため市は新たに住居表示を割りふることになった』。250世帯が同じ住所ってどんな所なのだろうか。現場で話を聞いてみたところ意外な声が。(ネットワーク報道部記者 栗原岳史)
東京から新幹線~在来線と乗り継いでJR岐阜駅に到着。さらに駅前からバスでおよそ20分余り。長良川を渡って着いたのは静かな住宅街でした。東を見れば、織田信長が居城とした名城、岐阜城も眺めることができます。

この地の「鷺山1769番地2」、同じ1つの住所におよそ250世帯もが暮らしているのです。

目的地は岐阜市鷺山1769番地2

東京から新幹線~在来線と乗り継いでJR岐阜駅に到着。さらに駅前からバスでおよそ20分余り。長良川を渡って着いたのは静かな住宅街でした。東を見れば、織田信長が居城とした名城、岐阜城も眺めることができます。

この地の「鷺山1769番地2」、同じ1つの住所におよそ250世帯もが暮らしているのです。
同じ住所に250世帯!?広さは東から西の端まで歩いて400歩余りでした。

早速出会ったのは、この地区の70歳の女性。何か不便なことはないんですか?と尋ねてみると「郵便局は、名前を覚えてもらっているのであまりミスなく届きます。ただ、宅配業者からは問い合わせの電話があり、家まで誘導をしなければならない手間がかかります。でも個人的には、今の住所で慣れているので、わざわざ変えられると逆に困ってしまう」とのこと。

さらに、話を聞いた88歳の男性。20歳から鷺山地区に住んでいるそうで「住所が変わるとガスや水道などの住所変更の手続きが面倒。高齢者も多いので、突然、住所が変わると戸惑う人も多いのではないか」との意見。不便さよりも変える手間のほうが…という意外な反応のように一瞬思えましたが、長年暮らしていれば、慣れるということでしょうか。

もちろん住所の変更を歓迎する声もありました。地元で不動産業を営む53歳の男性は、「自分は生まれたときからこの住所なのでなんとも思わないですけどね。お客さんに事務所まで来てもらうときは大変。カーナビに住所を入れても別の場所に誘導されてしまうこともあり、迷惑をかけているんです。慣れた住所を変えないでほしいという気持ちもわかるけど商売をしている立場としては、変わることになって、少しほっとしています」と話してくれました。

郵便は?宅配便は?救急車は?そして…

住民はある程度慣れているようですが、この地区を訪れる人たちにとってはどうなのでしょうか。
まず思いついたのが郵便。同じ住所が多すぎて困りませんか?日本郵政の回答は、「地域に精通した担当者数名が住宅の位置をある程度把握しており、迷ったり誤って配達したりすることはない」とのこと。
宅配最大手のヤマト運輸も「地域に精通した担当を固定で配置しているので大変さを感じることはない」との回答でしたが、「新しい担当でも対応できるようわかりやすく区画に分けた独自の地図を作っている」との工夫も明かしてくれました。

宅配のための独自の地図を使っている場所はほかにもあり、東京の築地市場もその1つ。市場の中は店舗名だけで配達しなくてはならないため独自の地図を作成し対応しているそうです。

いざという時の救急車は大丈夫なのでしょうか。地元の消防本部に聞いてみると「これまで出動に遅れなどが出たことはない」。119番通報をした場合、発信地が地図上に表示され一目でわかるシステムがあるほか、通報した人に目印となる建物などを細かく聞き取っているため、困ったことはないということです。
こうした中、ちょっと苦労していたのは市内の宅配ピザ店です。
「鷺山地区のこの住所から初めて注文を受ける際に配達員が迷ってしまうことがある」と話してくれました。

郵便や宅配業者とは異なり、頻度が少ないので、なかなか覚えるのが大変。壁に貼ってある地図で届け先を細かく確認して出発し配達後には次回の配達で迷わないよう「××さんの家の角を曲がった○軒目の家」などとメモを残し情報を共有しているそうです。

なぜ、同じ住所に?

どうして同一の住所になったの?
岐阜市役所に取材してみると経緯が見えてきました。

この地区は、もともと河川敷でしたが、昭和25年ごろ戦後の復興住宅として戸建ての市営住宅を建てて販売したそうです。この際、建設や入居を急ぐため地番を分割せずにしていて、その後もそのままになっていたというワケだとか。
ただ、これまでにも、見直しの機運はあったそうです。15年前、市長が地域住民の意見を聞く集会で、住民側から「同じ住所で困っている」という声が寄せられたため市が検討開始。

ただ、この時は、うまくいきませんでした。住宅1つ1つに地番を割りふるためには、土地の所有者を明確にする必要があります。この場所は市有地で所有者が明確でしたが、境界線を作るためには、隣の土地の所有者も明確にしなければなりません。

ところが、隣の土地は所有者が死亡していたり、相続が複雑だったりした場所もあり難航。市の担当者は「その後もいくつか案を検討し続けたが結局うまくいくものがなかった」と話します。
15日開かれた岐阜市の審議会
こうした中、3年前にこの話題が再び、市民との対話で浮上。今度はなんとかできないかと、岐阜県や総務省と相談したところ登記上の地番はそのままにして、「新たな住所」を住居ごとに割りふることができたのです。

その後は、地域での説明会を重ねるなどして住民の理解を得るよう努めてきたそうです。全国で同様のケースはないのか?総務省に聞いてみましたが、「具体的な事例は把握していないのでわからない」とのことでした。

いつ、どんな住所に?

気になる新たな住所はいつ、どんなものになるのでしょうか。

岐阜市は、1000万円余りを新年度の予算案に計上する方針です。この予算で新たな住所を割りふるための現地調査を実施、さらには、住宅や電柱に設置する住所の表示板などの準備を進めるそうです。

変更の時期ですが住民から「年賀状で住所の変更を知り合いに伝えたい」という要望があるそうで来年の2月の予定です。

また、新たな住所は『岐阜市鷺山南○番×号』といった形になる予定。その際には、住民の手間をかけないようにしようと、さまざまな住所変更の手続きを一括でできないか検討を進めているそうです。