コインチェック問題 そして仮想通貨のこれから

コインチェック問題 そして仮想通貨のこれから
仮想通貨の国内の大手取引所「コインチェック」から580億円に相当する仮想通貨が流出した問題。被害を受けた人は26万人にも上っています。仮想通貨を購入した人はどう受け止めているのか、そして専門家は今回の流出問題をどう考えているのでしょうか。
(ネットワーク報道部記者 佐伯敏 管野彰彦 田辺幹夫)
今回の問題、ネット上の投稿を見ると「これでは学費が払えなくなる」とか「マイホーム資金が消えた」といった声が上がっています。こうした声からは特定の世代にとどまらず、学生から大人まで幅広い年齢層が仮想通貨のやり取りをしている状況がうかがえます。

知り合いの大学生も「コインチェック」は利用していませんでしたが、仮想通貨を持っていました。

大学生にも 幅広い層に広がる仮想通貨

今回の問題、ネット上の投稿を見ると「これでは学費が払えなくなる」とか「マイホーム資金が消えた」といった声が上がっています。こうした声からは特定の世代にとどまらず、学生から大人まで幅広い年齢層が仮想通貨のやり取りをしている状況がうかがえます。

知り合いの大学生も「コインチェック」は利用していませんでしたが、仮想通貨を持っていました。
始めるきっかけは去年12月に最も有名な仮想通貨「ビットコイン」が高騰したこと。

このころから周りの学生の間でも、仮想通貨を購入する人が増えてきたそうです。

「本人確認のために、スマホで運転免許証の写真を送るだけで利用できる。そうした気軽さも学生が利用する背景にあると思います。ことしは、お年玉をまるまる仮想通貨に突っ込んだという人もいるかもしれません」

”先駆者”で起きた流出

仮想通貨はインターネット上で取引される“お金”のようなもの。

しかし、お金のようにモノとして存在するわけではなく、ネット空間のデータが取り引きされます。

「ビットコイン」が最もよく知られていますが、ほかにもさまざまな種類があり、今回被害にあった「NEM」もその一つです。これは、現実の貨幣に「円」や「ドル」、「ユーロ」など、さまざまな通貨があるようなイメージです。
さまざまな種類の仮想通貨が存在する
最近では現実の通貨のように支払いに使える店舗も徐々にでていますが、株と同じように投機の対象として購入している人がほとんどだとされています。

「ビットコイン」は去年の初めには1ビットコイン当たり10万円前後だった価格が、買い注文が集まった12月には200万円を超えました。1年足らずで20倍に急騰したのです。
こうした仮想通貨を取り扱うのが民間企業が運営する「取引所」。「コインチェック」は仮想通貨を取り扱う「取引所」の中でも、国内の先駆者の1つでした。

“現金文化はなくなる” 期待込める大学生

コインチェックに仮想通貨を預けている人は今回の問題をどう捉えているのでしょうか。

コインチェックに今回流出した「NEM」を預けているという、関東地方の22歳の大学生に電話で話を聞きました。
学生は知り合いからの勧めもあり、一時は投資のつもりで親からの仕送りもアルバイト代もほとんどを仮想通貨の購入に充てていました。投じた資金はおよそ13万円。それがいまや総額100万円ほどになっているそうです。
大学生の取引画面
幸い資金はコインチェック以外にも複数の取引所に分散させていて、影響を受けたのは保有するNEMのうちのおよそ2万円分ほどにとどまっているそうです。

「今回の問題で、会社から返金するという発表がありましたが、流出した当時の相場より安いレートで返金されるので納得はいきません。返金の時期も未定で、状況はかなり不安定なのかと思います」

ただ、学生は今後も仮想通貨の取り引きを続けたいといいます。将来現金を使う文化がなくなると感じているからです。

「仮想通貨は信頼性がまだ不安定だと感じています。ただ、次第に現金を使う文化はなくなり、仮想通貨が次の時代の通貨になることは確実だと思っています」

「自分の周りでも仮想通貨の技術を十分理解して、投機目的で購入を続けるという人はたくさんいます。今回のような問題があっても、まだ仮想通貨にメリットはあると思っています」

甘かったセキュリティー対策

学生が信頼性は不安定といったように、コインチェックに対してはセキュリティー対策が不足していたという厳しい指摘が相次いでいます。

取引所は被害を防ぐため、「ウォレット」と呼ばれる仮想通貨用の口座をインターネットにつながっていない場所=コールドウォレットに管理することが多いとされています。外部から不正な操作をされるリスクを減らせるからです。

しかし、「コインチェック」は流出したNEMを外部のネットワークにつなげて、取り引きができる状態で管理していました。
さらにNEMの管理では取り引きのための暗号キーを複雑にするという対策も取っていませんでした。

今回の問題 専門家はどうみる

仮想通貨に詳しいセキュリティー会社、セキュアワークス・ジャパンのジェフ・モルツ代表取締役は、今は取引所の対策は必ずしも盤石ではないと指摘しています。
「問題の根源は仮想通貨取引所のセキュリティー対策が不十分だということです。取引所の運営母体はほとんどが中小企業です。セキュリティーの知識が不足していて、十分な対策が取れていないケースがほとんどです。強固なセキュリティーと監視を導入していれば被害を防げた、あるいは最小限に抑えられたと思います」

「仮想通貨 今後も一定の役割」

今回の問題の教訓についても聞きました。

「日本では以前マウントゴックス事件(※注)も発生していて、日本ばかりが集中的に狙われている印象を受けるかもしれません。しかし、これは単なる偶然で、取引所を狙った攻撃は世界中で起きています」

「今回の事件をきっかけに、仮想通貨バブルが終えんを迎えるのではないかという見方もありますが、私は仮想通貨は今後も一定の役割を果たしていくと思います。利用する人はその特性を理解したうえで、より慎重なつきあい方をする必要があるのではないでしょうか」
※平成26年、仮想通貨の大手の取引所「マウントゴックス」で、当時のレートでおよそ470億円に相当する大量のビットコインが失われた事件。「マウントゴックス」はこれをきっかけに経営破綻した。

リスクの見極めを

では、利用する人はどうすればいいのか。モルツ氏は取引所の安全性を判断するには「ハッカーを想定した侵入テストを行っているか」、「24時間態勢で取引きを監視しているか」、「問題が起きた時、顧客への保証をどうするのか」、こうした危機管理の実績や対策を公表しているか、つぶさに確認することが必要だといいます。

最近、ブームにもなってきていた仮想通貨への投資。

今回の問題で、専門的な知識に基づいた冷静な見極めが必要だということが浮き彫りになったと言えそうです。