脱・通勤ラッシュ! ことしは座れる通勤元年!?

脱・通勤ラッシュ! ことしは座れる通勤元年!?
正月休み、皆さんはどのように過ごしましたか。休み明けはちょっとブルーという方も。特に首都圏など都市部では、久しぶりに混雑する通勤電車に乗るのは憂うつになりますよね。ですが…皆さんに朗報かも知れません。首都圏の私鉄では、所要時間が比較的長い区間を中心に「座れる通勤電車」を相次いで導入する動きが出ています。平成30年は「快適通勤元年」となるのでしょうか!?(ネットワーク報道部記者 郡義之)
「SーTRAIN(エストレイン)」と名付けられたこの列車。西武鉄道や東京メトロなどが共同で去年3月から運行を始めました。

“座って快適に通勤できる”10両編成の列車は、2人がけのシート。ドリンクホルダーに、携帯電話の充電ができるコンセント、それにWi-Fiも完備されています。

座れる通勤電車 評判は?

「SーTRAIN(エストレイン)」と名付けられたこの列車。西武鉄道や東京メトロなどが共同で去年3月から運行を始めました。

“座って快適に通勤できる”10両編成の列車は、2人がけのシート。ドリンクホルダーに、携帯電話の充電ができるコンセント、それにWi-Fiも完備されています。
平日の通勤時間帯は、西武鉄道の中でも利用客が多い埼玉県の所沢駅と東京メトロ有楽町線の豊洲駅を結びます。通常の運賃にプラス510円ですが、西武鉄道によると、通勤時間帯の乗車率はおよそ8割に達し、評判も上々だといいます。

ことしの大変革は小田急

そして、ことし、平成30年に大変革を予定しているのが、小田急電鉄です。新宿をターミナル駅として、神奈川や東京・多摩方面に路線があり、首都圏有数の乗客数を誇ります。しかしその反面、通勤ラッシュは激しく、さらに時間もかかり、「遅いし、混む」という乗客からの不満もありました。その小田急が工事を進めてきた複々線化に伴い、3月には大規模なダイヤ改正を予定しています。

複々線化で、多くの列車を走らせることができるようになり、例えば、平日の朝のラッシュ時に下北沢駅に到着する電車は27本から36本に増加。さらに、通過待ちの時間などがなくなるため、新宿駅と町田駅(東京都)の区間では所要時間が49分から37分、新宿駅と大和駅(神奈川県)の区間では、1時間2分から52分にそれぞれ短縮されます。混雑率は「体が触れ合い、やや圧迫感がある」192%から、「新聞や雑誌が楽な姿勢で読める」150%程度に下がると見込んでいます。
時間が短縮するだけではありません。「座って通勤できる列車」も増発されます。小田急では、ダイヤ改正で、朝の通勤時間帯の特急ロマンスカーの本数を7本から11本に増やします。それに加えて、本厚木や海老名、藤沢など、それぞれの駅の始発電車を増やします。始発駅から乗れば、その分、座れる機会が増えます。

小田急電鉄CSR・広報部は「これまでの混む、遅いというイメージを払拭(ふっしょく)して、顧客に支持してもらえるよう取り組んでいきたい」と話しています。

“多摩の陣”激化?

小田急のダイヤ改正で、激化しそうなのが、多摩地区の利用客の奪い合いです。小田急はダイヤ改正に合わせ、多摩線から新宿駅まで乗り換えなしの「通勤急行」を9本新設。このうち、6本は、乗客が多い小田急多摩センターが始発となります。所要時間も、最大で54分から40分と14分短縮。「座れる」+「早い」で「快適通勤」を目指しています。
京王電鉄提供
この小田急に対抗するように、新たな列車を運行させるのが、同じく多摩地区と新宿駅を結ぶ「ライバル」の京王電鉄です。ことしの春を目指し、同社では初めてとなる有料の座席指定列車「5000系」を投入することを明らかにしています。

多摩センター駅の1日の乗降客(平成28年度)は、小田急が5万人余りに対して、京王は8万7000人と、京王が一歩リードですが、競争で両社のサービスが向上すれば、乗客にとってもメリットがありそうですね。

背景に少子高齢化?

各社が、「座れる通勤電車」の導入に踏み切るのは、少子高齢化が背景にあると、鉄道ジャーナリストの土屋武之さんは指摘します。将来的には、沿線の人口減少が見込まれる中、これまでとは違った形での沿線の魅力アップを図る必要があるといいます。

「人口減で、就業人口も減り、当然通勤客も減ります。快適に移動できるなど、サービスを向上させることで、顧客をつなぎ止め、収益を確保したい狙いがあるのではないかと思います」

大規模なダイヤ改正を行う小田急では、沿線の海老名駅(神奈川県)に、タワーマンションの建設も計画されています。都心から離れていても、快適に通勤できるとアピールし、利用客を取り込もうとしています。「快適な通勤」は、今後の鉄道会社の戦略のキーワードになりそうな予感がします。

経済効果は300億円以上か

こうした動きを経済の視点から分析しているのが、鉄道事情に詳しい野村総合研究所上級コンサルタントの秋月將太郎さんです。

鉄道会社による新たな取り組みによる経済効果は、有料指定席の収益だけでなく、利便性の向上に伴う交流人口の増加や沿線の不動産購入なども含めると、首都圏全体で最大で年間300億円以上の規模になると分析、大きなビジネスチャンスになりうるといいます。

秋月さんによりますと、首都圏には毎年、50万人程度が流入しているといいます。

「毎年、50万人が居住地を選択できる機会がある。これだけダイナミックに人口が変化する市場だからこそ、鉄道会社は今後、こうした『流動層』をいかにつかみ、利用増につなげるかが大事になってくると思います」

実現するか“快適通勤”

先進国最悪とも言われてきた、首都圏を中心とする通勤ラッシュ。こうした中、各社の新たな取り組みについて、野村総研の秋月さんは「個を大事にする世の中で、通勤電車にも個人空間ができたことで、来年からは少しゆとりのある通勤ができるような気がします」と話します。

もちろんすべての人が座って通勤できるわけではありませんが、働き方改革も進む中、「快適な通勤」に向けて各社が力をさらに入れていくのは間違いないようです。

平成30年は、「快適通勤元年」となるか。鉄道会社の動きにしばらく目が離せそうにありません。