カズオ・イシグロさん記念講演“分断の時代に文学で多様な声を”

カズオ・イシグロさん記念講演“分断の時代に文学で多様な声を”
ことしのノーベル文学賞に選ばれたカズオ・イシグロさんが「ノーベル・レクチャー」と呼ばれる記念講演を行い、自国の利益ばかり優先し、極右が台頭する分断の時代だからこそ、文学を通じて多様な声に耳を傾ける必要があると訴えました。
スウェーデンの首都ストックホルムでは、10日にノーベル平和賞を除く各賞の授賞式が行われることになっていて、これを前に、文学賞に選ばれたカズオ・イシグロさんが7日、記念講演を行いました。

長崎で生まれ、5歳でイギリスに移住したイシグロさんは、最初の作品を書いた理由について、「日本というかけがえのない場所について、薄らいでいく記憶を書き留めておきたかった」と説明しました。
そして、40年近い執筆活動でのみずからの作風の変遷を振り返り、多くのユダヤ人が殺害されたアウシュビッツ強制収容所を訪問したことをきっかけに、国家がどのように過去の歴史と向き合うかについて考え、親の世代の記憶を伝える責任を認識するようになったと述べました。

さらに、イシグロさんは、2008年の金融危機やその後の緊縮策によって格差が拡大したことなどで、自国の利益を優先する国や極右勢力の台頭を招いたと指摘しました。そのうえで「この危険な分断の時代に私たちはさまざま声に耳を傾けなければならない。よい文学には、壁を取り払う力があるし、人類がともに追求すべき英知が生まれる可能性も秘めている」と呼びかけ、文学が対立の解消の一助になることに期待を示しました。