老人ホーム殺人 容疑者「風呂汚され怒りピークに」

老人ホーム殺人 容疑者「風呂汚され怒りピークに」
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東京・中野区の有料老人ホームで、入居者の83歳の男性を浴槽で溺れさせて殺害したとして、25歳の元職員が逮捕された事件で、元職員は「男性が風呂の床を汚して掃除しないといけなくなり、怒りがピークに達した」などと供述していることが警視庁への取材でわかりました。警視庁は、突発的に暴行を加えたと見て調べています。
東京・中野区の有料老人ホーム、「ニチイホーム鷺ノ宮」の元職員の皆川久容疑者(25)は、施設で介護士として働いていた、ことし8月、入居者の藤澤皖さん(83)を浴槽に投げ入れて湯をはり、顔がつかった状態にさせ、溺れさせて殺害したとして、殺人の疑いで逮捕され、14日午後、東京地方検察庁に送られました。

警視庁のこれまでの調べで、容疑を認め、「何度も布団などを汚したので、『いい加減にしろ』と思ってやった」と供述していることがわかっています。

その後の調べに対し、皆川容疑者は「布団などを汚したあと、シャワーを浴びさせていたら、今度は風呂の床を汚したので掃除をしないといけなくなり、怒りがピークに達した」などと供述していることが、警視庁への取材でわかりました。

警視庁によりますと、当時は宿直態勢の時間帯で、皆川容疑者ともう1人の男性職員の2人で対応していたということです。警視庁は、突発的に暴行を加えたと見て調べています。

「大切な恩師」

亡くなった藤澤さんは、大阪・箕面市にある現在の関西学院千里国際中等部・高等部の設立に携わり、平成3年から7年間にわたって初代の校長を務めていました。

藤澤さんとともに勤務し、30年近く親交があった教頭の田中守さんは「藤澤先生は温厚で、とても優しく、いつも笑っていて生徒からも親しまれる先生でした。『指示待ち人間になるな』『自分の考えで行動しなさい』と常に生徒に教えていました」と当時を振り返りました。

また、藤澤さんは、こうした指示待ち人間にならないためには図書館で学習をすることが大切と考え、学校の中央に図書館を置くことを強く訴え、実現させたということです。

田中教頭は、藤澤さんについて「教員たちの提案などを積極的に受けてくれる私にとって大切な恩師で、一緒に仕事ができて幸せでした。ご家族から亡くなったと連絡を受けて、それだけでもショックでしたが、今回、事件に巻き込まれたと聞き、ただただ言葉がありません。社会にとって惜しまれる存在を亡くしたと思います」と話していました。

介護施設での虐待は年々増加

有料老人ホームなどの介護施設で起きた高齢者の虐待については、高齢者虐待防止法に基づいて施設が自治体に通報することが義務づけられており、厚生労働省が年に一度その件数や要因について公表しています。

それによりますと、高齢者が介護施設で職員から虐待を受けた件数は、年々増加しており、統計を取り始めた平成18年度には54件でしたが、平成27年度には408件となっています。

虐待が起きた要因は、介護をする側の知識や技術の問題が66%と最も多く、ストレスや感情コントロールの問題が27%、性格や資質の問題が10%などとなっています。

また、虐待の内容は暴力などの「身体的虐待」が61%、暴言などの「心理的虐待」が28%、おむつを替えないなどの「介護放棄」が13%となっています。

介護施設での事件をめぐっては、3年前、川崎市の有料老人ホームで当時勤務していた職員が入所者3人をベランダから転落させて殺害したとして殺人の罪で起訴されたほか、ことし7月には群馬県富岡市の老人ホームで当時勤務していた職員が入所者の84歳の女性の顔を殴って大けがをさせたとして傷害の罪で起訴されています。

厚生労働省はことし3月、高齢者虐待の防止策について都道府県に対して通知を出し、施設内で介護技術や認知症への理解を深めるための研修を実施するほか、職員のストレス対策に取り組むよう呼びかけています。

施設運営会社社長「深くおわび」

今回の事件を受けて、施設を運営する「ニチイケアパレス」の秋山幸男社長が14日夕方から都内で記者会見し、「亡くなられた入居者とご遺族に深くおわび申し上げます」と陳謝しました。

運営会社によりますと、皆川久容疑者は、3年前の平成26年4月に入社し、ほかの施設で2年余り勤務したあと、今の施設に移り、1年ほど働いていました。勤務態度は非常に真面目でおとなしく、遅刻や欠勤もほとんどなかったということです。

当時の社内調査に対しては、「ナースコールが相次いだので、離れている隙に溺れてしまっていた。大変なことをしてしまった」と泣きながら説明するなど反省した様子だったということです。

皆川容疑者は、ことしの9月21日に今後の介護に自信が持てず、不安や怖さがあるという理由で自主的に退社したということです。

また、亡くなった藤澤皖さんについては「『要介護3』で、歩く際には助けが必要になるが、ほかの入居者とのコミュニケーションも取れ、トラブルもなかった」ということです。

一方、この施設では、ほかに浴室での事故や施設の職員による暴行などは確認されていないということです。

運営会社では、今後、第三者委員会を設置するなどして再発防止に努めていきたいとしています。