“人手不足”で休みます…

“人手不足”で休みます…
カレーにアイスクリームにタピオカ…。これ、「人手不足」が起きているお店のことなんです。私たちの身近なところにまで広がりを見せる「人手不足」。臨時休業も相次ぎ、ネット上には「嘆き」の声が投稿されています。先週末には、低価格のラーメンチェーン「幸楽苑」を運営する会社が人手不足で人件費が上昇し採算が悪化しているとして、全体のおよそ1割に当たる50店舗余りを今年度中に閉鎖すると発表しました。何が起きているのか、調べてみました。(ネットワーク報道部記者 佐藤滋 野田綾)
「目当てのラーメン屋が人手不足のためランチ営業お休みだった」

「結構有名なスープカレー屋に行ったら『人手不足でお休みします』と張り紙あったわ」

悲痛なつぶやき

「目当てのラーメン屋が人手不足のためランチ営業お休みだった」

「結構有名なスープカレー屋に行ったら『人手不足でお休みします』と張り紙あったわ」
ツイッターに寄せられた「人手不足」を嘆く投稿です。中には従業員からの投稿も…。

「最近3人辞めちゃって人手不足です。おかげで日曜・祝日が休みになって僕の収入減って困ってます」

アイスクリーム店では

記者は、ツイッターの投稿を頼りに、アイスクリームチェーンの関東地方のある店舗を訪ねました。訪ねたのは10日の夜。シャッターには「都合により13時開店とさせていただきます」という張り紙が。
紙に書かれた営業時間を見ると「翌11日は13時から18時。12日は10時から18時」。ホームページにあったこのお店の営業時間より短縮されていました。

どういうことなのか。

運営会社に取材したところ、この店舗では数か月前からアルバイトやパートの「人手不足」のため、臨時休業や営業時間の短縮が続いているということでした。

広報担当者によりますと、全国に1000店以上あるほかの店舗では今のところ同様のケースはないということですが、「本社としてアルバイトやパートの募集のサポートをしているが、この店舗に限っては集まらない」と話していました。

人手不足のワケ

そもそも、なぜ人手不足が起きるのか。

専門家は少子高齢化と景気回復を挙げます。大和総研の長内智シニアエコノミストは「少子高齢化で働く世代が減っているのに対し、景気回復で経済活動が活発になっている」と指摘。
モノやサービスの提供を受けるお年寄りが増えていても働く世代は少ない。人手が足りないのは必然の流れとなっています。

時給は過去最高 でも倒産相次ぐ

「少しでも良い条件を示すので働いてほしい」

企業がアルバイトやパートを募集する際の時給は今、過去最高水準となっています。求人情報会社の「リクルートジョブズ」の調査では、首都圏と関西、それに東海の3大都市圏の平均は過去3年間、ほぼ右肩上がり。

ことし8月には1014円と、調査開始以来、最高を記録したほか、直近の9月も1013円でした。
リクルートジョブズは「前の年の同じ月と比べた場合、時給の上昇は当面続く見込み。人手不足の中、時給の引き上げだけでなく、短時間でできる業務の“切り出し”など、働きやすい環境づくりに取り組む企業も増えているようだ」と分析しています。

その一方で相次いでいるのが企業の倒産です。民間の信用調査会社 東京商工リサーチによると、先月、人件費の高騰や求人難など「人手不足」が理由となって倒産した企業の数は39件と、この4年間で最も多くなりました。

会社の代表者や幹部の引退などに伴う「後継者難」が最も多かった要因で、必要な人手を確保できず事業の継続に支障が生じた「求人難」も目立ちました。

この「求人難」による倒産件数は、ことし1月から10月までを見ると合わせて31件。去年の同じ時期の2.2倍にまで増加しています。
東京商工リサーチは「今後、人手不足が深刻化した場合、人材難による倒産がさらに増えるおそれがある。倒産に至らなくても休業に追い込まれる企業も増えてくるのではないか」と話していました。

人手不足“クライシス”

前述した大和総研の長内シニアエコノミストは、こうした現状を「クライシス」=「危機」と表現しています。

人手不足がさまざまな業種に広がっているのに加え、人件費が上昇して企業の収益を圧迫する。その両面で「危機」だというのです。

高齢化が進む地方で深刻になっていた人手不足は今や都市部にも広がっていて、長内さんは「企業は時給を上げることなどで対応してきたが、外国人や主婦の労働参加がかなり進んでいるので短期的には改善は難しい」と見ています。

便利さの陰で…

少子高齢化で「縮小」を続ける日本。一方で都市部の繁華街を歩けばコンビニや飲食チェーン、ドラッグストアなど同じ業種の店が目と鼻の先に並びます。

「便利さの裏返しではないか」 長内さんは人手不足の背景を別の視点からも捉えています。

「あの店の、あの商品を、今、ほしい」

際限のない私たち消費者の願望に応えるべく激しい競争にさらされる企業。それとともに身近にまで広がってきた人手不足の波。

ロボットの活用やパートで働く人の働き方を制約しているとも言われる税金の仕組みの改善など抜本的な対策も必要なのではないか。

解決の糸口は簡単には見いだせそうにありませんが、取材を通して、社会の構造が今、「過渡期」に来ていると感じました。