“捨てられる”現金の謎

“捨てられる”現金の謎
群馬で4200万円、石川で2000万円…。サラリーマンの年収を上回るような大金ですが、いずれも「ゴミ捨て場」や「ゴミ処理場」で見つかった現金の額です。にわかには信じられないかもしれませんが、今、多額の現金が各地のゴミ捨て場などで、相次いで見つかっているのです。ことし、その額は少なくとも8500万円にも上ります。なぜ多額の現金が”捨てられている”のでしょうか。
(ネットワーク報道部記者 伊賀亮人)
8月14日、石川県加賀市の温泉街のゴミ集積場で、ゴミの分別に来た女性が1万円札が入った重箱を見つけて警察に届け出ました。警察が調べたところ、現金はすべて1万円札でおよそ2000万円ありました。
発見した女性は「ゴミ捨て場に漆塗りの3段の重箱があり、フタを開けてみると銀行の帯封が付いた現金があった」と話していました。

この日は、月に2回ある燃えないゴミの回収日。近所の住民も「ゴミを出しに行ったら、近所の人からゴミ集積場に大金があると聞き、のぞいたら大金が見えて驚いた」と興奮した様子でした。警察では遺失物として持ち主を探しています。

現金がゴミ捨て場で見つかるケースはこれだけではありません。
8月は宮崎県延岡市の清掃工場でも不燃物のゴミの中から現金201万円が見つかったほか、4月には、群馬県沼田市のゴミの収集運搬会社でゴミの分別作業中に現金4251万円が見つかりました。また、7月には三重県伊賀市のゴミ処理施設で、裁断されるなどした現金100万円以上が見つかりました。

「燃えないゴミの日」に2000万

8月14日、石川県加賀市の温泉街のゴミ集積場で、ゴミの分別に来た女性が1万円札が入った重箱を見つけて警察に届け出ました。警察が調べたところ、現金はすべて1万円札でおよそ2000万円ありました。
発見した女性は「ゴミ捨て場に漆塗りの3段の重箱があり、フタを開けてみると銀行の帯封が付いた現金があった」と話していました。

この日は、月に2回ある燃えないゴミの回収日。近所の住民も「ゴミを出しに行ったら、近所の人からゴミ集積場に大金があると聞き、のぞいたら大金が見えて驚いた」と興奮した様子でした。警察では遺失物として持ち主を探しています。

現金がゴミ捨て場で見つかるケースはこれだけではありません。
8月は宮崎県延岡市の清掃工場でも不燃物のゴミの中から現金201万円が見つかったほか、4月には、群馬県沼田市のゴミの収集運搬会社でゴミの分別作業中に現金4251万円が見つかりました。また、7月には三重県伊賀市のゴミ処理施設で、裁断されるなどした現金100万円以上が見つかりました。

“捨てられた”8500万!?

ゴミ捨て場などで見つかる多額の現金。思わぬ事件も起きています。ことし5月に、奈良県御所市で廃棄物処分場でゴミの分別作業中に現金1000万円が見つかったと警察に通報がありました。
しかし、その後警察が調べたところ、実は見つかっていた現金は2000万円あり、1000万円分は処分場のパート従業員5人が山分けしていたことがわかったのです。警察は、パート従業員5人を窃盗の疑いで書類送検しました。

ゴミ捨て場で見つかった現金だとしても、あくまでも持ち主が分からない遺失物。誤って捨てられた可能性があり、とってしまうと罪に問われるのは言うまでもありません。

ゴミ捨て場などで現金が見つかるケースは各地で相次いでいて、全国のNHKの放送局がニュースに取り上げたケースだけでも、ことしこれまでに5か所で合わせて8500万円に上っています。

現金の落とし物 バブル期並み

ゴミ捨て場などで見つかる現金は増えているのか? 正確な統計はありませんが、警察に落とし物として届けられている現金の額は、去年、バブル期並みに達しました。
警察庁が毎年発行している警察白書に記載されている全国で届けられた拾得物の推移で、拾得物のうち「通貨」については、この10年間、増加傾向が続いています。去年は177億円と東日本大震災の津波で金庫などが流され、多額の現金が届けられた平成23年を除けば、平成3年以来の多さとなっています。

誰が、なぜ?

なぜ、現金がゴミとして“捨てられている”のか? その手がかりになるかもしれないケースがあります。見つかった現金の持ち主が判明したことがあるのです。4251万円の現金が、ゴミの収集運搬会社で見つかった群馬県沼田市のケースです。
現金はもともとゴミとして集められた袋の中に、栄養ドリンクの箱に入った状態で見つかっていました。実は、沼田市に住む高齢の男性が亡くなった後、自宅が取り壊された際に持ち込まれたゴミの1つだったのです。

亡くなった男性は、自宅に現金を保管していたことを家族などに伝えておらず、自宅を取り壊した際にほかのゴミやがれきと一緒に誤って処分された可能性が高いことがわかりました。
現金の帯封の日付と金額が、この男性が口座から引き出した履歴と一致したことや、筆跡などから本人のものと確認され、警察から法定相続人の男性に現金は返還されました。

このようにお年寄りが自宅で現金を保管し、家族に伝えずに亡くなってしまうということは珍しいことではないという話もあります。
1人暮らしのお年寄りなどが亡くなったときに、自宅に残された遺品を家族に代わって整理する、遺品整理の業者でつくる団体「家財整理相談窓口」によると、業者が遺品を整理する際、100万円を超える多額の現金を見つけるケースは少なくないということです。
高齢化が進み1人暮らしのお年寄りが増える中で、遺品を整理せずに処分したり自宅を取り壊した場合に誤って廃棄されたりしているのではないかというのです。

一方、個人の資産運用などのコンサルタントをしている、東京・港区の「青山財産ネットワークス」によると、70代以上のお年寄りには通帳で口座から現金を引き落としている人が多いことが理由の1つではないかと話します。

こうしたお年寄りは、銀行の店舗に行く手間を省くため100万円以上の現金をまとめて引き出すことも多いそうで、足腰が弱くなった1人暮らしのお年寄りが、別居している家族に伝えない一方で、盗難などの被害に遭いにくいよう、気付きにくい場所に保管している可能性があるのではないかと指摘しています。

「タンス預金」も背景か

実際に自宅で現金を保管する人たちが増えているという試算もあります。いわゆる「タンス預金」です。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、1万円札と千円札の発行残高の伸び率の違いに着目。決済のためにお札が使われているのであれば、1万円札も1千円札も残高の伸び率は大きく違わないはずが、実際には1万円札の伸び率が上回っており、その分は手元にため込まれている現金だと分析しています。

この仮定で「タンス預金」を試算すると、8月末の時点で実にお札の発行残高全体の4割余りにあたる44兆9563億円となり、去年の同じ時期と比べて3兆1394億円、割合にして7%増えているとしています。

熊野さんは「平成27年に相続税の非課税枠が縮小されたことを受けて、課税が強化されるのではないかという思惑から現金として持っておこうという人が増えていると見られる。また、日銀の大規模な金融緩和で超低金利となり、預金しておくインセンティブが減っている中で、将来的な財政不安から銀行に預けておくよりも、自分で動かせるよう保管しておきたいという人が増えているのではないか」と話しています。

日本経済の映し鏡?

全国で見つかった現金は、依然として持ち主がわからないものが多く、すべてがお年寄りのものだったのかどうかもわかりません。ただ、エコノミストの熊野さんは「ゴミとして見つかる現金は氷山の一角で、手元に保管している人はもっと多くいるはずだ。本来、経済活動に使われるお金が、個人も企業も将来不安を抱える中で手元にため込まれて流通していないという姿は、日本経済が抱える課題を象徴するような現象だ」と話しています。

日銀の統計によりますと、世の中に出回っているお札の総額は去年12月に初めて100兆円を超えました。日銀の異次元緩和によって、今、大量のお金が世の中に供給されています。しかし、お金が銀行から貸し出され、消費に使われて世の中に出回るのではなく、手元に保管されて最終的に”ゴミ捨て場行き”になっているのであれば、まさにゆがんだ経済の「映し鏡」になっていると言えるかもしれません。