乳幼児と帰省 実家に潜む危険とは?

乳幼児と帰省 実家に潜む危険とは?
夏休みで赤ちゃんや子どもを連れて実家に帰省している人も多いと思いますが、祖父母の家などふだんと違う環境では、子どもの事故にも一層気をつけなければなりません。おばあちゃんの薬に手を伸ばしたり、風呂場をのぞき込んだり…ひやっとさせられたことはありませんか。
乳幼児連れの帰省。どんな点に注意が必要なのか。子どもの事故に詳しい小児科医の山中龍宏先生に聞きました。
おじいちゃん、おばあちゃんにもぜひ読んでもらってください。
(ネットワーク報道部・野町かずみ記者)
「すべての事故を防ぐことはできません。でも発生頻度が高く、重症度が高くなるものは防ぎましょう」という山中先生。
山中先生が帰省先で心配な事故の1つが、風呂場での溺死だと言います。

危険度が高いのは、歩き始めた生後10か月から1歳くらいの子どもで、毎年のように事故は起きています。

風呂場で溺死 残り湯は捨てて!

「すべての事故を防ぐことはできません。でも発生頻度が高く、重症度が高くなるものは防ぎましょう」という山中先生。
山中先生が帰省先で心配な事故の1つが、風呂場での溺死だと言います。

危険度が高いのは、歩き始めた生後10か月から1歳くらいの子どもで、毎年のように事故は起きています。
実家での注意点、ポイントは浴槽の高さと残り湯です。
「実家では高齢者が浴槽をまたぎやすいように、浴槽の高さが低い場合も多いと思います。1歳の子の身長が約75センチくらいなので、50センチ以下ですと簡単に乗り越えられて危険です。
そして、鼻と口を覆うほどの残り湯があれば、赤ちゃんはおぼれてしまいます。大人が話に夢中になっている間に赤ちゃんが1人で風呂場に入ってしまうと、重大な事故につながりかねません」(山中先生)

対策としては、子どもが滞在する間だけでも、残り湯は絶対に捨ててもらうこと。さらに、鍵をかけるなど子どもが1人で風呂場に入れないように工夫することが必要だと指摘します。

帰省先でもチャイルドシートは必須

帰省先で祖父母の車に乗せてもらう場合、最も大事と山中先生が考えているのは、チャイルドシート(またはジュニアシート)。
警察庁とJAF=日本自動車連盟がことし全国で行った調査ではチャイルドシートの着用率は64%にとどまっています。
着用しない場合の死亡率は高く、去年1年間に乗車中の事故で6歳未満の子ども9人が死亡し、このうち8人がチャイルドシートを着用していませんでした。

「おじいちゃんが迎えに来て、私は運転がうまいから大丈夫と言って本当に信用できますか?小児科医から見て、一番、重症度や死亡率が高いのはチャイルドシートの未着用による交通事故です。子どもが泣いていやがるから、ちょっとした外出だという気持ちもあると思いますが、事故が起きたら一生後悔します。祖父母の方にも、孫を車に乗せることがあるなら、チャイルドシートは基本中の基本と知ってもらいたい」(山中先生)

チャイルドシートはレンタルもありますので、ぜひ帰省先でも準備してもらいましょう。

ボタン電池・薬の誤飲に注意

そして、ふだん小さな子どものいない実家での生活にも注意が必要です。
子どもの年齢が低いほど、さまざまな物を口に入れることが考えられますが、山中先生が一番危険と指摘するのはリモコンなどに使われる「ボタン電池」。
特にコイン型のリチウム電池は短時間で化学反応が起こり、死に至るおそれがあるといいます。

「昔のように小さいボタン電池であれば胃に入って3日以内に8割は排出されますが、大きいリチウム電池は、食道に引っかかります。そこで、すぐに電気が流れて、食道がただれて、半日くらいたつと穴が開きます。死亡した例もあり、大変危険です。」

ボタン電池を誤飲する事故はたびたび起きています。
日本小児科学会に報告された事故のケースでは、1歳7か月の男の子が空気清浄機のリモコンについていたリチウム電池を誤飲し内視鏡で摘出。
さらに1歳2か月の男の子が居間の引き出しに入っていたコイン型のリチウム電池を誤飲し、全身麻酔で緊急摘出の手術。電池により、食道粘膜が腐食・え死していた例もあります。

また高齢者が暮らしていると、さまざまな身の回りに薬を置いてあるケースも多いかと思います。
薬の誤飲も重大な事故につながりますので、薬の置き場所も注意しましょう。子どもは、手の届く引き出しは開けて取り出すので、手の届かない高いところに置くなど徹底しましょう。

実家の犬にかまれ死亡事故も

そして、思わぬ所に危険が潜んでいると言えば、実家で犬を飼っている場合、重大な事故につながりかねないと言います。

ことし3月には東京で祖父母の家に預けられていた生後10か月の女の子がはいはいしていたところ、飼い犬のゴールデンレトリバーに頭から首のあたりをかまれて死亡しました。ふだんはとてもおとなしい犬だったと言います。

また日本小児科学会に報告された事例では、平成20年1月にも、母親の実家の居間で、生後4か月の男の子が昼寝中、おむつの上から、飼い犬のミニチュアダックスフンドに外陰部を噛まれて出血多量となり、こうがんを摘出するほどの大きな事故が起きています。

「うちの犬はおとなしくて、かんだりほえたりしないといっても、子どもを前に猟犬の本能が出ることもあるので、決して信用しないでください。赤ちゃんに後ろから触られて、犬には嫌なこともあるかもしれないし、犬がおむつの尿のにおいに反応してかむことも考えられます」(山中先生)

赤ちゃんは、ベビーベッドに寝かせるなど犬にかまれないよう対策をとることや、犬に口輪をするのも有効です。

実家の環境に注意を

子どもの事故に詳しい小児科医の山中龍宏先生
帰省するといつもは気が張っている親たちも緊張の糸がほどけ、親や親戚とのおしゃべりに夢中になって、大人は子どもから目を離しがちです。

山中先生は、「実家に乳幼児を連れて行くということは、予想しないような環境に入ると言うことです。子どもに何か起きたら、取り返しがつきません。帰省先でずっと目を離さずに見守ることは不可能なので、子どもの遊び場所を決めるなど事故が起きないような環境を整えてほしい」と呼びかけています。