あなたのペット大丈夫?マダニ感染症

あなたのペット大丈夫?マダニ感染症
森林や草地などにいるマダニが媒介する感染症SFTS=重症熱性血小板減少症候群。先月下旬までに国内で58人の死亡が確認されています。危険なSFTSのウイルスを運ぶマダニが、犬や猫などのペットにもつくことがあることがわかってきました。ペットがSFTSに感染することはあるのか、人への感染、対策は。マダニ感染症の最新報告です。(ネットワーク報道部 高橋大地)
「猫にSFTSのような症状が出ているので調べてほしい」。

ことし4月、山口大学共同獣医学部の前田健教授のもとに、西日本の動物病院から連絡が入りました。前田教授は、5年前、日本で初めてSFTSウイルスを分離することに成功した専門家です。

世界初 猫が発病

「猫にSFTSのような症状が出ているので調べてほしい」。

ことし4月、山口大学共同獣医学部の前田健教授のもとに、西日本の動物病院から連絡が入りました。前田教授は、5年前、日本で初めてSFTSウイルスを分離することに成功した専門家です。
イメージ写真 感染した猫ではありません
症状が出ていたのは、2歳のメスの飼い猫でした。4月中旬、突然食欲を失い、動物病院に連れられてきました。その日はいったん家に戻りましたが、3日後に、39度5分の高熱を出します。状態はかなり悪く、入院して、点滴や抗生物質での治療を受けました。
連絡を受けた前田教授は、遺伝子検査を実施し、SFTSへの感染を確認しました。
SFTSは、マダニが媒介するウイルスで発症します。
人間の場合、感染すると、発熱やおう吐、下痢などの症状が現れ、重症の場合は、出血が止まらなくなったり、腎臓の機能が低下したりして死亡することもあります。この5年間で280人が感染、このうちおよそ2割にあたる58人が死亡しています。

しかし、前田教授によると、これまで猫がSFTSを発症した例は知られておらず、これが世界初の事例となりました。
前田教授は「高熱が出たり、血小板の数が減ったりと人間の症状とよく似ていた。これまでネコでは、発症した例はおろか、感染した例も知られていなかった。とうとう見つかったかという感じでした」と話しています。その後、ネコは、治療のかいあって元気になったということです。

マダニがペットの猫につく例が増えている?

今回、SFTSを発症した猫は、野外でマダニにかまれることでウイルスに感染したと見られています。でも、主に野山などにいるマダニがペットの猫につくことはよくあることなのでしょうか。
NHKの取材チームは、ちょうど先月、強い毒を持つ南米原産のヒアリが国内で見つかったことの取材をきっかけに、マダニをはじめとしたほかの危険生物に関する情報提供をホームページなどで呼びかけていました。

寄せられた情報の中に「最近、ネコにマダニがついている例が増えている」という、鳥取県の獣医師からの投稿がありました。
その獣医師に話を聞いたところ、「犬にマダニがつくケースは多く見てきたが、これまで猫につくケースはあまり見なかったので、なぜ増えているのか気になった」と答えてくれました。

この投稿をきっかけに、NHKは今回、「猫にマダニがつくことがあるか」を全国の動物病院にアンケート調査することにしました。

これまでのところ74の動物病院から回答があり、このうち47の病院が猫にもマダニがつくと回答しました。ペットの猫にマダニがつくことは、かなり頻繁に起きていたのです。
猫にマダニが 投稿で寄せられた写真

身近なペットのネコになぜ

なぜ、ネコにマダニがつく例が増えているのか。ダニに詳しい国立環境研究所の五箇公一さんは、シカやイノシシなどの野生動物が、人間の生活圏に入り込んでくるようになったことと関係していると指摘します。
もともと、マダニは野山に多く生息して、シカやイノシシなどの野生動物の血を吸って生きていますが、その体や毛についていたマダニが、都市部の畑や公園などにも広がり、犬や猫などにつくケースが出てきたと考えられると言うのです。
五箇さんは、そのうえで「ペットの猫にこれだけのマダニが付いていることを考えると、相当身近なところまでマダニが来ていると考えられる。飼い猫のマダニは、どこまでマダニの生息域が広がっているかを知る1つの指標になるのではないか」と話しています。

ペットの犬と猫の感染はどこまで

猫よりも野外で活動することが多い犬は、マダニにかまれるリスクはより高くなります。

前田教授が、40の都道府県で飼い犬を調べたところ、SFTSウイルスの抗体が陽性、つまり感染したことがある犬は、山口県と熊本県、それに宮崎県のあわせて3県で見つかりました。
場所によっては16%が抗体をもっている県もあり、地域によって差がありました。

一方、ペットの猫に関しては、前田教授は、これまで300例余りを調べましたが、最初に紹介した猫を除いて抗体が陽性だった猫は見つかっていません。

これについて前田教授は、猫はSFTSに感染すると重篤化して死んでしまうことが多いためではないかとしています。

ペットから人への感染は

さらにペットから人へと感染したと考えられるケースも確認されています。3年前、愛媛県で暮らす60代の男性がSFTSに感染、一時入院しました。

前田教授が調べたところ、男性が飼っていた犬は、大量のマダニにかまれ、SFTSに感染していました。

男性は、犬に付いていたマダニを手でつぶしていたと証言していて、前田教授は、犬、あるいは犬についたマダニから男性に感染した可能性があるとしています。

また、50代の女性が、去年、SFTSに感染していた疑いのある野良猫に手をかまれ、SFTSを発症して、その後死亡していたというケースが、先月、明らかになりました。

前田教授は「犬などが外にでかければ、かまれなくても毛について家にまで持ってくることはある。ペットを通して人に感染する可能性はあるので、特にペットの体調が悪いときは、ふんの処置に気をつけるなどしてほしい」と話しています。

どう防ぐペットの感染

人への感染にもつながるおそれのあるペットへの感染。どう防げばいいのでしょうか。マダニはSFTSだけでなく、様々な病原体を媒介する可能性があります。かかりつけの獣医師に相談して、ペット用のダニの駆除剤などを使うのが効果的です。薬によっては首筋に垂らすだけで成分が全身に行き渡るタイプのものもあります。
また、外から戻ってきたときには、ペットの体にマダニがついていないか、よく確認し、目の細かいくしなどを使って取り除くことも有効です。

マダニがペットの体に深くかみついている場合、無理やり引き抜くと、マダニの口の部分が皮膚に残ってしまうこともあります。化のうや病原体に感染する原因にもなり得るので要注意です。

また、飼い主の手などに傷があった場合、自身が感染するリスクもあるので、獣医師に取り除いてもらうことが大切です。

NHKでは、引き続き、猫や犬にマダニがついているケースなどマダニに関する情報を集めています。情報やご意見がある場合はぜひお寄せください。取材の結果は、公開中の特設サイトに掲載していきます。https://www3.nhk.or.jp/news/special/kikenseibutsu/