昼食15分で食べられますか?

昼食15分で食べられますか?
いま、ネット上で注目を集めているのが中学校での昼食時間の短さ。7月、横浜市の中学校で時間が15分しかないという投稿に対して、「短すぎる!」「食べきれない!」「ほかの地域でもそうだ」など書き込みが相次いだのです。これを見た記者の私たちも「自分の時はどうだったっけ?」「昼食時間を削らなければいけないようなことが学校で起きているの?」「俺は早食いだったよ」などたちまち話は盛り上がり、ならば真相を確かめようと取材を始めました。
ネットで注目が集まったきっかけは、7月に行われた横浜市長選挙。争点の1つに挙がったのが中学校の学校給食の導入です。

これに関連して横浜市の中学校では、「お昼休憩が15分しかない」というツイートが投稿されたところ、またたく間に反響が広がりました。
「育ち盛りに昼食時間が15分というのは健康面でも精神面でもいいことだとは思えません」といった声のほか、「息子に聞くと、15分たったら『ごちそうさまでした』とみんなは言うが、自分はいつも遅いので焦るそうだ」と、中学生の子どもを持つ保護者からの声も。

きっかけは横浜市長選

ネットで注目が集まったきっかけは、7月に行われた横浜市長選挙。争点の1つに挙がったのが中学校の学校給食の導入です。

これに関連して横浜市の中学校では、「お昼休憩が15分しかない」というツイートが投稿されたところ、またたく間に反響が広がりました。
「育ち盛りに昼食時間が15分というのは健康面でも精神面でもいいことだとは思えません」といった声のほか、「息子に聞くと、15分たったら『ごちそうさまでした』とみんなは言うが、自分はいつも遅いので焦るそうだ」と、中学生の子どもを持つ保護者からの声も。
反響は全国にも広がり、名古屋市の男子中学生は、「牛乳やお茶を取りに行く人を待っていると、20分の昼食の時間が10分、ひどい時は5分しか食べる時間がないこともある」と投稿したほか、神奈川県厚木市の保護者からは、「息子の日課表見たら給食時間は15分、配膳も片付けも込みとなると詰め込まれてますね」といった書き込みも。
さらに「基本15分で、5分の時もある」、「実質7分程度で食べ終われという」といったにわかには信じがたい指摘もありました。

中学校で給食やお弁当を食べる時間どうなっているのでしょうか。

食べる時間15分で運用

まずは、話題の発端ともいえる横浜市の教育委員会に聞きました。
横浜市の公立中学校には給食がなく、家庭から持ってくる弁当が基本です。希望する生徒には、業者が作る弁当を提供しています。
午前の授業が終わってから午後の授業が始まるまでの時間はそれぞれの学校で決めることができますが、多くの場合およそ45分だということです。

内訳を見ると、「準備」が5分、「食べる時間」が15分、「昼休み」が20分、「次の授業の準備や移動」が5分となっています。
どの中学校も、ほぼこの時間配分で運用しているはずだということでした。

全国でも

全国20の政令指定都市の教育委員会にも取材しました。
全体で見ると、昼食の時間はおおむね20分から40分というところが多くなっていました。配膳や片づけの時間を除くと、「食べる時間」は15分から20分程度とみられます。
関東地方のある市では、前の授業が長引いたり移動が必要な体育だったりすると、食べる時間はもっと短くなることもあるそうです。

中1“給食”ショック

実は、小学校から進学したばかりの中学1年生は、それまでより5分から10分ほど短い時間で給食や弁当を食べなければならなくなります。
授業や部活の時間を確保する必要があるからです。
横浜市の教育委員会は、部活について「日が長い夏でも午後6時半ごろまでしか行えず、十分な時間を確保するためには昼食の時間はこれ以上取れない」と話していました。
また、広島市や北九州市は、「授業や補習の時間を確保するにはしかたがない」と話していました。

このため、小学校から進学したばかりの中学1年生は「食べる時間が足りない」と感じ保護者からも「もう少し長く時間が取れないか」と要望が寄せられるそうです。
「中1“給食”ショック」とも呼べる状況です。

工夫はするも…

こうした中、各地の学校ではなんとか食事時間を捻出しようとしています。
神戸市では3年前、盛りつけが不要な弁当箱に入った昼食を配るようにしました。札幌市では、業者が教室の前まで給食を運び、生徒が取りに行く時間を省いています。千葉市では、昼食の前後には、移動や着替えが必要な体育の授業を入れないようにしているそうです。

背景には何が?

昼食時間の確保に苦労している教育現場。いつからこうなったのでしょうか。
文部科学省に聞くと「給食時間に関する調査は行っていないが、『いつから短くなった』という明確な資料や記録はない。おそらくそう変わらないのではないか」ということでした。
給食はそもそも明治の時代、貧しい子どもたちに米飯を無料でふるまったのが始まりで、戦後も子どもたちの栄養状態を改善する目的で再開されました。

ところが10年ほど前から「栄養補給」だけでなく、食の喜びや楽しさ、それに食文化を学ぶ「食育」としての役割が強調されるようになりました。それなのに短時間で昼食を食べる現実に違和感を抱いた保護者のツイートが集まり共感が全国に広まった…。
それが今回、ネット上で盛り上がった理由だったのではないでしょうか。この現状については、給食に詳しい専門家も疑問を投げかけています。
文部科学省で学校給食調査官をつとめた京都府立大学京都和食文化研究センターの田中延子客員教授は、「栄養をしっかりととるのはもちろん、今はより心豊かに会話をしながらおいしく給食を楽しみたいという子どもも増えています。中学生は、授業や行事などで忙しく給食時間にしわ寄せがいきがちですが、学校には“食育”の観点からも食べる時間を長く確保できるような工夫や努力をしてほしい」と話していました。

時間延長の試みも

最近になって給食時間を延長した自治体があります。
川崎市は今年度から中学校で給食を実施することになり、しっかりと味わってもらおうとこれまで弁当で15分だったものを35分に延長しました。
川崎市教育委員会の担当者は、「だしや国産野菜にこだわって給食を提供しています。ただ食べるだけでなく、生産者などに思いをはせながら楽しく給食を食べられるよう学校にスケジュール指導をしていきたいです」と話しています。
ただ、給食時間を延長したことで昼休み全体の時間も65分となりました。中学校のなかには、部活動の時間が減らないよう朝の登校時間を5分間早めるところも出てきています。給食にゆとりを導入すればほかにしわ寄せがいく。今の中学生もなかなか大変なようです。

ちなみに皆さんは昼食にどのくらいの時間をかけていますか?1日かけてこの取材を行った私たちは、食堂の定食を20分ほどで食べ、午後の仕事を始めました。