高層住宅が炎に… 日本では大丈夫?

高層住宅が炎に… 日本では大丈夫?
暗闇の中にそそり立つ巨大な炎の柱。高層住宅全体が燃え上がる衝撃的な映像が、ロンドンから伝えられました。「タワーリング・インフェルノ」という火災の恐怖を描いた往年の映画を思い出した人も多いようです。
日本国内でもこのところ、高層マンションが急増していますが、果たしてわが家は大丈夫なのか、取材してみました。
(社会部・宮原豪一記者、藤島新也記者、ネットワーク報道部・角田舞記者、中川早織記者、藤目琴実記者)
火災が起きたのはロンドン中心部から西へ車で30分ほど離れた場所にある24階建ての高層住宅です。多くの人が寝静まっていた午前1時前に出火し、細長い建物全体が真っ赤な炎に包まれました。

この記事を書いているのは出火から9時間後ですが、今も窓という窓から黒い煙が上り、建物が崩れるおそれがあるという情報まであります。

「助けて!」 でも助けられない

火災が起きたのはロンドン中心部から西へ車で30分ほど離れた場所にある24階建ての高層住宅です。多くの人が寝静まっていた午前1時前に出火し、細長い建物全体が真っ赤な炎に包まれました。

この記事を書いているのは出火から9時間後ですが、今も窓という窓から黒い煙が上り、建物が崩れるおそれがあるという情報まであります。
目撃した人たちによると、窓から身を乗り出して服のようなものを振りながら助けを求める人や、泣き叫ぶ子どもたちの姿が見え、中には建物にぶら下がったり、建物から飛び降りたりした人もいたということです。

しかし、「多くの人たちが助けを求めていたのに、自分はどうすることもできなかった」と話しています。

地元の救急当局は多数の死者が出ているとしながらも、現時点では建物の規模や構造の複雑さから具体的な人数は把握できないとしています。

ひとつの“街”が燃えるということ

火災が起きた高層住宅の管理会社のホームページによりますと、建物は1974年に建築され、120世帯が入居できるということです。

高層住宅には、それ自体が一つの“街”と言えるほどの多くの住民が暮らしていて、全員が避難するには想像以上に時間がかかると専門家は指摘しています。

そんな“街”ほどの規模があるタワーマンションなどが、日本でも急増しています。
総務省が5年に1度行っている「住宅・土地統計調査」では、15階以上の共同住宅は、平成15年は32万5500戸だったのが、平成20年には57万3000戸、平成25年の調査(最新)では84万5500戸と、10年間でおよそ2.6倍に増えているのです。
今回の火災を受けてソーシャルメディアには「わが家もタワーマンションだけれど、この燃え方にはびっくり。他人事ではない」といった投稿が見られました。

また、「タワーマンションの建設ラッシュだけど、火事になったら高層階は本当に怖い」という投稿や、「同様の建物、日本では大丈夫かな」といった心配の声も相次いでいます。

実はたびたび起きている高層火災

高層ビルの大規模な火災は海外でたびたび発生しているほか、過去、国内でも起きています。
中東のUAE=アラブ首長国連邦のドバイでは、去年3月、住宅用の高層ビルで火災が起きたほか、おとととし2月にも86階建ての超高層マンションで火災が発生し、火が壁を伝って数十階にわたって燃え広がりました。

このほか、中国・東北部の遼寧省・瀋陽で2011年にホテルやマンションが入る高さ200メートル余りの高層ビルから出火したほか、2010年には韓国・プサン市で地上38階建ての高層マンションで火災が起きました。

日本国内では、平成8年に広島市中区にある20階建ての市営住宅の9階の部屋から出火し、バルコニーに使われていたアクリル板などを伝って最上階の20階まで燃え広がりました。

平成元年には、東京・江東区の28階建てマンションの24階から火が出て6人がけがをする火災が起きています。

今回は“特殊な火災”?

ただ、ロンドンで起きた今回の火災については、東京理科大学・火災科学研究センターの菅原進一教授は、「マンションは住戸ごとに仕切られているため、火が燃え広がりにくい構造になっているので建物全体が燃えるのは非常に珍しい」と話しています。
また、東京理科大学の関澤愛教授は、「映像を見るかぎり、炎が建物の外壁を伝って上の階に燃え広がっているように見え、外壁に燃えやすい部材が使われていた可能性がある。海外では外壁に燃えやすい部材が使われることが多く、そのために中国や韓国などでも大規模な火災が起きた」と指摘しています。

そのうえで、国内の高層住宅については「平成8年に広島市の高層住宅で起きた火災などを教訓に、外壁には燃えにくい部材を使うという思想が徹底されている。また、炎や煙を食い止めるため防火区画を設けたりスプリンクラーの設置を義務づけたりするなど海外に比べて規制は厳しく、一気に燃え広がる危険性は低い」としています。

高層住宅の防火基準は?

日本の法律(消防法)では、高さ31メートルを超える建物を「高層建築物」と定義し、法令によって防火に関するさまざまな基準が設けられています。

総務省消防庁によりますと、高層建築物では、はしご車が届かないなど消火活動や避難が難しくなるため、消防法施行令で11階以上の階はスプリンクラーの設置が義務づけられているほか、建物全体で、カーテンやじゅうたんなどに燃えにくい防炎製品を使うことが義務づけられています。

また、建築基準法施行令では11階以上の部分は天井や壁などに使われている部材に応じて、100~500平方メートルごとに炎や煙を食い止める防火区画を設けなければならないとされています。

完成直前の超高層マンションを訪問

東京・新宿区に建設中の超高層マンションに行ってみました。このマンション、階数では全国で最も高い地上60階建てで、今月末に完成予定です。
初期消火のため、10階以上の部屋には複数のスプリンクラーが設置され、9階以下にも屋内消火栓が置かれています。
外壁や内装には燃えにくい素材が使われているほか、火災を感知するとエレベーターホールの防火扉が自動的に閉まり、ほかのフロアや区画に燃え広がらない構造。こうした防火設備についての消防の入居前の点検は、1週間以上かけて行われたということです。
それに加え、屋上には万が一の際の救助にあたるヘリコプターがホバリングするためのスペースが設けられていて、空から住民を助け出すことができるように設計されています。

万全でもさらに備えを

それでも、常に防火の備えを怠らないことが重要だと専門家は指摘します。

先に登場した菅原教授は、日本のマンションは、避難経路の確保のため、各階にバルコニーの設置が義務づけられていて、これがひさしの役割を果たし、火が上の階に燃え広がりにくくなっているとしながらも、今回の火災の原因を分析して、一層の防災につなげていくことが必要だとしています。

一方、関澤教授は、「仮に高層の建物で火災が起きた場合には、エレベーターが止まってしまう可能性があるので、階段を使って落ち着いて避難することが大切だ」と話しています。

さらに、中古住宅の劣化状況や欠陥の有無など住宅診断を行っている「さくら事務所」の長嶋修会長は、中古マンションの防火対策をチェックするポイントを3つ挙げています。▽上下水道などの配管まわりがしっかりふさがれていて火が回ることがないか、▽共用部分に設置されている防火扉が故障していないか、▽火災報知器が作動するかの3点です。

長嶋さんは、「日本では古いマンションでも防火構造がとられているが、自分の住むマンションが不安な場合は、マンションの防火管理者に問い合わせたり、専門家に診断してもらったりして確認してほしい」と話しています。
こういう機会に、改めて自分の住まいで、避難の方法と防火設備を確認してみてはどうでしょうか。