テロ等準備罪 法相「犯罪集団と無関係なら捜査対象外」

テロ等準備罪 法相「犯罪集団と無関係なら捜査対象外」
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後半国会の焦点となっている、共謀罪の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案は、衆議院法務委員会で実質的な審議が始まりました。午後の審議で、民進党が「一般の人が捜査の対象にならないと言い切れるのか」とただしたのに対し、金田法務大臣は、組織的犯罪集団と関わりがなければ構成員であるという疑い自体が生じないとして、一般の人が捜査の対象になることはないと強調しました。
「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案は、テロ組織や暴力団などの組織的犯罪集団が、重大な犯罪を計画し、メンバーのうちの誰かが犯罪の準備行為を行った場合などに、計画した全員が処罰の対象になるとしていて、19日の衆議院法務委員会で実質的な審議が始まりました。

この中で、民進党の逢坂誠二氏が「捜査の段階では組織的犯罪集団として白か黒か分からず、その場合、一般の人が組織的犯罪集団という嫌疑がかけられている団体の一員になる可能性がある。一般の人が捜査の対象になる可能性は否定できないのではないか」とただしました。

これに対し、金田法務大臣は「犯罪を計画したという嫌疑があったとしても、計画に組織的犯罪集団が関与している疑いが無ければ、テロ等準備罪の捜査が行われることはない。また、一般の人が組織的犯罪集団と関わりが無ければ、構成員であるという疑いは生じず、捜査の対象とはならない」と述べました。

また金田大臣は、法案に処罰の対象団体の例として「テロリズム集団その他」と記されていることについて、「この言葉がある場合と無い場合とで犯罪の成立範囲が異なることはないが、一般の方々がテロ等準備罪の対象とはならないことを明確にするものだ」と説明しました。

一方、金田大臣は「犯罪実行の準備行為が行われていない段階であっても、例えばテロが計画され実行される蓋然性があって必要性が認められる場合には、任意捜査を行うことが許されると考える」と述べました。

午後の審議では、民進党が質疑を求めていた岸田外務大臣が出席しなかったため、民進党と共産党が抗議して、審議が中断することもありました。

処罰対象の277の犯罪は?

共謀罪の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案で、処罰の対象となる犯罪は277あります。政府は重大な犯罪のうち、「テロ組織や暴力団などの組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるもの」に限定したとしています。

このうち、「組織的な殺人」や「ハイジャック」、「サリンの発散」など110の犯罪がテロの実行に関連するものです。
また、「覚醒剤の密輸」や「人身売買」、「組織的な詐欺」、「マネーロンダリング」など暴力団などの資金獲得につながるような犯罪も多数含まれています。

一方で、野党や専門家などからは、テロとの関係や組織的犯罪集団の関与が想定しにくい犯罪も対象になっているという指摘も出ています。
例えば、「墳墓発掘死体損壊」や「保安林での森林窃盗」。これらは国会でも「墓荒らしを事前に防ぐことでどうしてテロが予防できるのか」とか、「保安林でキノコを採るのもテロの資金源になるのか」といった疑問が示されています。

このほか、「著作権侵害」は被害者の告訴がなければ罪に問えない「親告罪」で、国会では「被害者が権利侵害される前に現実的に告訴できるのか」という質問も出ました。

また、「組織的な信用毀損や業務妨害」が含まれていることに労働組合や市民団体の弁護士は、企業に不都合な主張や国への抗議活動を計画しただけで処罰の対象になるのではないかとの懸念を示しています。

このほか、犯罪の行為者が公務員などの「収賄」や、労働基準法に基づく「強制労働」、会社法に関わる犯罪などについても、どのように組織的犯罪集団が関わるのかわかりにくいという指摘が出ています。

277の犯罪 専門家の見解は

「テロ等準備罪」を新設する法案で処罰の対象となる犯罪が277あることについて、国際テロに詳しく法制化に賛成の立場の日本大学の安部川元伸教授は「世界各地でテロが頻発していることを踏まえれば国際条約の締結のためにも『テロ等準備罪』は必要不可欠だ。しかし、項目が多岐にわたり、法案の必要性がわかりにくくなっている。よりテロ対策に特化した法案にすることで国民の命を守るという意思を明確に示すべきだ」と話しています。

一方、元裁判官で法制化に反対の立場の木谷明弁護士は「明確に組織的犯罪集団が関わる犯罪といえるのか、関係性がはっきりとわからない項目が多すぎる。捜査権限の拡大によって捜査機関の一方的な見解で一般市民が捜査の対象となることが危惧される。裁判所は、令状を請求された際にテロのような犯罪の可能性を明確に否定することはできず、司法のチェック機能が働く保障もない」と話しています。