衆院小選挙区 97選挙区で区割り見直しの改定案を勧告

衆院小選挙区 97選挙区で区割り見直しの改定案を勧告
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衆議院の小選挙区の区割りを検討する政府の審議会は、小選挙区を6つ減らして1票の格差を2倍未満に収める法律に基づき、19都道府県の97選挙区について区割りの見直しを求める改定案を安倍総理大臣に勧告しました。政府・与党は、来月、勧告を反映した公職選挙法の改正案を国会に提出し、速やかな成立を目指す方針です。
政府の衆議院議員選挙区画定審議会は19日、総理大臣官邸で会合を開き、小選挙区を6つ減らして1票の格差を2倍未満に収める法律に基づき、小選挙区の区割りの見直しを求める改定案を決定し、安倍総理大臣に勧告しました。

勧告を受けて、安倍総理大臣は「委員の皆様の議論に感謝している。内閣としては、直ちに国会に報告するとともに、勧告に基づき、速やかに必要な法制上の措置を講じたい」と述べました。

改定案によりますと、区割りが見直されるのは合わせて19の都道府県で、このうち、小選挙区が1つずつ減るのが、青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県です。

さらに、おととしの国勢調査の結果を踏まえた3年後・平成32年の見込み人口を基に、1票の格差が2倍未満になるよう、北海道、宮城、福島、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、愛媛、福岡、長崎の13都道府県で区割りの線引きが変更されます。

この結果、現行の区割りが見直される選挙区は合わせて97選挙区となり、平成6年に衆議院に小選挙区制度が導入されて以降、最も大規模な区割りの見直し案になりました。

今回の区割りの見直しについて、平成32年の見込み人口を基に試算すると、最も人口が多い選挙区は「東京22区」で、これを、最も人口が少ない「鳥取1区」と比較すると、1票の格差は1.999倍となり、見直し前の最大2.176倍から改善されます。

今回の見直しについて、審議会の会長を務める成蹊大学法科大学院の小早川光郎法務研究科長は記者会見し、「投票価値の平等という要請に基づき、各選挙区の人口の格差が2倍未満となるよう、選挙区の安定性も考慮しつつ、最善と考える改定案を取りまとめた。政府が法案を策定し、国会で成立が図られることを強く念願する」と述べました。

そのうえで、小早川氏は、平成32年の見込み人口に基づいた試算で1票の最大格差が1.999倍となることについて、「投票価値の格差は、まだまだ大きいと言われるかもしれないが、今回の見直しは緊急是正であり、選挙区の安定を考慮しないといけないという要請の中、何とか2倍の範囲に収め、責任を果たした」と述べました。

政府・与党は、3年前・平成26年の衆議院選挙の1票の格差をめぐる裁判で、最高裁判所大法廷が「違憲状態」だったという判決を出していることも踏まえ、来月、勧告の内容を反映した公職選挙法の改正案を国会に提出し、速やかな成立を目指す方針です。

改正案には、小選挙区に加えて、比例代表の東北、北関東、近畿、九州の4つのブロックで定数を1つずつ減らすことも盛り込まれる見通しです。

改正案が原案どおり、今の国会で成立した場合、新たな区割りは、改正法の公布から1か月程度の周知期間を経て施行され、それ以降に公示される衆議院選挙から適用されます。

また、新たな区割りが施行されたあと、ことし10月までに解散・総選挙が無い場合、10月に行われる衆議院愛媛3区の補欠選挙は、見直し前の今の区割りで行われることになります。

小選挙区減の6県は

区割りの改定案のうち、小選挙区が1つ減る、青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県の区割りを見ていきます。

【青森県】
青森県は、青森市と津軽半島の東部、それに、むつ市などがある下北半島を新1区とし、八戸市や十和田市など県南東部を新2区、弘前市や五所川原市など県西部を新3区としています。

【岩手県】
岩手県は、盛岡市などの県中央部を新1区とし、県北部や宮古市、釜石市などの沿岸部を新2区、一関市、奥州市などの県南西部を新3区としています。

【三重県】
三重県は、津市と松阪市を新1区とし、鈴鹿市、伊賀市、名張市などを新2区としています。また、新3区は、四日市市の北部を中心とする地域、新4区は、伊勢市、志摩市、熊野市など県南部を中心とする地域です。

【奈良県】
奈良県は、県北部に位置する奈良市の大半と生駒市を新1区とし、その南の大和郡山市や香芝市などを新2区、それ以南の橿原市や大和高田市などを新3区としています。

【熊本県】
熊本県は、熊本市の中央区と東区、それに北区を新1区とし、熊本市の西区や南区を中心とする県北西部を新2区、県北部から中部までの山鹿市や阿蘇市などを新3区、県南部の八代市や天草市などを新4区としています。

【鹿児島県】
鹿児島県は、鹿児島市中心部などを新1区とし、薩摩半島の南部と奄美群島を新2区、薩摩川内市や姶良市など県北西部を新3区、霧島市から大隅半島にかけてと種子島・屋久島地方を新4区としています。

市区町村などの分割状況は

改定案どおりに区割りを見直した場合、複数の選挙区に分割される市区町村などの数は、これまでの88から17増えて105となります。

このうち、新たに複数の選挙区に分割されるのは8つの都道県の26か所で、札幌市北区、西区、仙台市太白区、さいたま市見沼区、埼玉県川口市、越谷市、東京都港区、新宿区、台東区、品川区、目黒区、中野区、杉並区、豊島区、板橋区、八王子市、多摩市、稲城市、横浜市都筑区、川崎市宮前区、神奈川県座間市、愛知県瀬戸市、兵庫県西宮市、川西市、福岡市南区、城南区です。

分割の線引きが変更されるのは6つの都県の10か所で、千葉県船橋市、東京都大田区、世田谷区、足立区、江戸川区、川崎市中原区、相模原市南区、三重県四日市市、松山市、鹿児島市です。

一方、今回の区割りで分割が解消されるのは5県の9か所で、青森市、盛岡市、津市、熊本市中央区、西区、南区、北区、熊本県山都町、鹿児島県南九州市です。

改定案 人口や格差の順は

【人口順】
今回の改定案によりますと、平成32年の見込み人口で、最も人口が多い選挙区は東京22区の55万4880人で、次いで、東京1区が55万4550人、東京3区が55万4371人、愛知7区が55万3985人、東京11区が55万3978人などとなっています。

逆に、最も人口が少ない選挙区は鳥取1区の27万7569人で、次いで、鳥取2区が27万7879人、京都5区が27万7971人、石川3区が27万8217人、長崎3区が27万8590人などとなっています。

【格差順】
一方、平成32年の見込み人口で、最も人口が少ない鳥取1区を基準として1票の格差が最も大きい選挙区は、東京22区で1.999倍、次いで、東京1区が1.998倍、東京3区が1.997倍、愛知7区と東京11区が1.996倍などとなっていて、いずれも2倍をわずかに下回っています。

区割り見直しの経緯

衆議院選挙の1票の格差をめぐっては、3年前・平成26年に行われた衆議院選挙で最大で2.13倍の格差があり、最高裁判所が、おととし11月、「違憲状態」だったという判決を出しました。

最高裁判所による「違憲状態」の判決は、平成21年と24年の衆議院選挙をめぐっても出されていて、3回連続になりました。

こうした事態を重く見た国会は、去年5月、衆議院の小選挙区を6つ減らして、1票の格差が2倍未満となるように区割りを見直す法律を成立させました。

政府の衆議院議員選挙区画定審議会は、この法律に基づいて、具体的な区割りの見直しを検討していました。

区割り見直しの方針

今回の区割りの見直しでは、おととしの国勢調査の人口に加えて、3年後の平成32年の見込み人口の下でも1票の格差が1倍以上2倍未満になるようにすることが、法律で求められています。

基準となる選挙区は、最も人口が少ない都道府県の中でいちばん人口が少ない選挙区とされていて、平成27年では「鳥取2区」、平成32年では「鳥取1区」と比べて、1票の格差が1倍以上2倍未満になるよう区割りが見直されました。

このほか、審議会の「区割り改定案の作成方針」では、市区町村の区域は、一定の限られたケース以外、原則として分割しないことや、いわゆる「飛び地」は作らないことなどが盛り込まれています。

4年前に選挙区変わり 今回の見直しでまた 青森・五戸町

青森県の南東部に位置する五戸町は、隣接する八戸市とのつながりが強い町で、選挙区も以前は八戸市を中心とする旧青森3区でした。

それが4年前の区割りの見直しで、同じ郡の町村の中では唯一、むつ市などがある下北半島などで構成される、今の青森2区に編入されました。

そして今回の見直しでは、再び同じ郡の町村とともに八戸市を中心とする新2区に編入されることになります。

五戸町の40代の女性は「新しい区割りは、なじんだ選挙区に戻るので歓迎したい」と話していました。
30代の男性は「選挙区はあちこち変わらないでほしい。一度決まったらそのままにしてほしい」と話していました。
60代の女性は「再び区割りが変わることに戸惑っています。できれば変えてほしくない」と話していました。
60代の男性は「地域的につながりの強い八戸市が入る選挙区で長年投票してきたので、選挙区が戻れば投票に行きやすくなる」と話していました。

五戸町総務課の選挙事務の担当者は「今の選挙区になったときは、衆議院選挙の投票率が17ポイントほど下がった。選挙区が頻繁に変わると有権者の戸惑いが大きく、政治の関心も深まらないのではないかと危惧している」と話しています。

小選挙区減る6県 議員などは

改定案では選挙区が分割される今の青森2区選出の、自民党の江渡元防衛大臣は、記者団に対し「青森は1区から4区まで、すべて自民党が当選しているので、党の選挙対策委員長や幹事長ともしっかり話しながら、引き続き4人がバッジを付けていられる体制を作り上げていきたい。それぞれの議員が後援会と話し合い、お互いに選挙協力するしかない」と述べました。そのうえで江渡氏は、青森県では自民党の4人全員が小選挙区で当選し、党への貢献度が高いとして、次の衆議院選挙の比例代表東北ブロックの候補者選考では青森県連所属の議員を優遇するよう党本部に求めていく考えを示しました。

改定案では選挙区が分割される今の岩手3区選出の、民進党の黄川田徹衆議院議員は、記者団に対し「合区や分割のしかたが岩手県だけ特別な対応ということではないのだろうから、結論は真摯(しんし)に受け止めたい。国政選挙の公認・推薦は党本部の仕事で、どうするかはこれからだ」と述べました。そのうえで、記者団が「引退は考えていないのか」と質問したのに対し、「それも含めて党本部に任せる」と述べました。

改定案では選挙区が分割される今の三重4区選出の、自民党の田村前厚生労働大臣は、記者団に対し「三重県の選挙区が減ることは、地方の声が国政に届きにくくなることにもつながり、じくじたる思いがあるが、憲法上の要請を受けたことなので、しかたがない。県内の自民党の現職議員が今後も現職でいられる環境を作ることが、党の県連会長を務める私の仕事でもあるので、関係議員と話し合い、それを踏まえて党本部に要望を伝えることになる」と述べました。

小選挙区が1つ減る奈良県で自民党の県連会長を務める奥野元法務副大臣は、記者団に対し「候補者調整は、これから多くの人の意見を聞きながら、皆さんに納得してもらえるような答えを出していきたい」と述べました。一方で、奥野氏は「今のルールでは、都会の議員が増え、地方の議員が減り、地方の意見が通らなくなる可能性が出てくるので、選挙制度は整理し直す必要があるのではないか」と述べました。

改定案では選挙区が分割される今の熊本4区選出の、自民党の園田元官房副長官は、記者団に対し「私の選挙区が分割されて無くなってしまい、困ったことだ。まだやらないといけないことがあるので、選挙には出たいと思っているが、小選挙区制は政党選挙なので、まずは党本部と熊本県連の協議に委ねたい」と述べました。そのうえで園田氏は、記者団が比例代表に単独で立候補する可能性を聞いたのに対し、「それも考えないといけない。働く人の年齢も高くなっているので、定年制も見直してよいのではないか」と述べました。

小選挙区が1つ減る鹿児島県で自民党の県連会長を務める、森山元農林水産大臣は、記者団に対し「鹿児島は自民党の衆議院議員を5人抱えているので、これから鹿児島県連としても、どの選挙区の支部長を誰にするのか決めなければいけない。地元の支持者は寂しい思いをすることもあると思うが、そうした選挙区の気持ちを理解しながら候補者調整を進めていくことが大事だと思う」と述べました。

総務相「速やかに法案を提出」

高市総務大臣は、勧告の後、総理大臣官邸で記者団に対し、「審議会には、最善の改革案を取りまとめていただいた。政府としては、違憲状態とされている選挙区の間の格差を早期に是正するため、今回の勧告に基づき、できるだけ速やかに区割り改定法案を国会に提出したい」と述べました。

衆院議長「速やかな法案成立に協力を」

大島衆議院議長は「勧告は、これまでの各党間の協議が結果としてあらわれたもので、今後は、政府から勧告に基づく法案が提出されることになる。これまでより、区割りが変更される選挙区も多く、やむをえず分割されたところもあるが、各議員には、勧告の趣旨を十分理解し、速やかな法案の成立に協力をお願いしたい」という談話を出しました。

官房長官「改正案成立していない段階でも解散・総選挙は可能」

菅官房長官は記者会見で、記者団から衆議院の解散の判断に与える影響について質問されたのに対し、「一般論で言えば、現行の公職選挙法などの規定の下で、内閣が衆議院の解散を決定することは否定されるものではない」と述べ、勧告を反映した公職選挙法の改正案が成立していない段階でも衆議院の解散・総選挙は可能だという認識を示しました。

各党の反応

自民党の二階幹事長は、東京都内で記者団に対し「相撲取りは土俵の大きさに文句をつけないもので、われわれも自分たちの希望だけを述べて、党内がまとまらないようなことではいけない。同時に、区割りの対象の議員の希望ができるだけ達成できるよう配慮もしなければならない」と述べました。そのうえで二階氏は、候補者調整について「なかなか理想どおりに簡単にうまくいくわけはなく、相当の力仕事になろうと思うが、できるだけ党内の融和を図りながら、最大公約数として、みんなが理解しあえる結論を見いだすよう努力したい」と述べました。

民進党の馬淵選挙対策委員長は、記者団に対し「選挙区が分割される自治体が相当数増えることをどう考えるか。さらに広大な選挙区がいくつか生じるが、こうした地域では過疎化の課題などもあり、地方切り捨てということが当然問われることになる。また、これだけ大幅な区割りの変更なので、有権者に丁寧な説明をしていかないといけない。選挙対策の実務者として、万全の準備ができるよう、候補者に対しても発信していきたい」と述べました。また馬淵氏は、ほかの野党との候補者調整について「まずは県連の考えをしっかり聞きたい。そのうえで、県連独自で判断できないところがあれば、党本部が乗り出し、野党連携の調整を水面下で行っていく」と述べました。

公明党の北側副代表は、記者団に対し「国会としても、政府の法案が出てきたら、内容を尊重して速やかに成立させなければならない。国民に審判を求めるような緊急な事がないかぎりは、新しい区割りの法案をできるだけ早く成立させ、新しい区割りの下で衆議院選挙を実施するのが筋だ」と述べました。

共産党の小池書記局長は、記者団に対し「行政区も生活圏も無視したような、複雑怪奇な異常な線引きだ。しかも、これから国勢調査のたびに、自動的に毎回、選挙区の変更が行われることになり、非常に問題ではないか。民意と議席に異常なかい離をもたらす小選挙区制は廃止して、民意を反映する比例代表中心の選挙制度に抜本的に改革することが必要だ。問題点を徹底的に追及していきたい」と述べました。一方で小池氏は、次の衆議院選挙での民進党などとの連携について、「選挙区がどういう組み合わせになっても、安倍政権を倒すために、野党が力を合わせていく。区割りが何らかの影響を与えることはない」と述べました。

定数が削減される岩手県選出の自由党の小沢代表は、記者会見で「第三者が客観的、公平に検討した結果なので、与党も野党も基本的に認めざるをえない。特に衆議院は、より主権者の意思を正確に反映することが求められるので、人口に比例してやっていく以外にない。ただ、どんどん地域は人口が減り、選挙区が少なくなり、代表者が減る結果になってしまうので、東京一極集中を排除する根本的な統治機構改革と行政改革を断行する必要がある」と述べました。また小沢氏は、岩手県内での民進党との候補者調整について「それぞれ候補者を立てたのでは、政権は取れない。政権を取るために候補者を統一することは必要だ。まずは自公政権に代わる受け皿を作らなければならない」と述べました。