「テロ等準備罪」 市民グループが官邸前で抗議活動

「テロ等準備罪」 市民グループが官邸前で抗議活動
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「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案が閣議決定されたことに対して、市民団体が「廃案にすべきだ」として抗議活動を行いました。
抗議活動は午前8時から総理大臣官邸の前で行われ、主催した市民グループによりますと、およそ300人が集まりました。

参加した人たちは、雨が降る中、法案が閣議決定されたことに対して、「共謀罪の新設反対」とか、「閣議決定、絶対反対」などと声を上げていました。

集会では、海渡雄一弁護士が、法律が成立すると一般市民も監視され、犯罪行為をしていないのに処罰されるおそれがあるとして、「このような集会も取り締まることが可能になる。絶対に廃案にすべきだ」と訴えました。

集会に参加した横浜市の60代の女性は「まだ起きてもいない事件について、『あなたも関わっている』と言われたらどうやって疑惑を払拭(ふっしょく)したらよいのでしょうか。このままでは本当に怖い社会になってしまう」と話していました。また、出勤の前に集会に参加したという都内の30代の男性は「多くの人が法案の中身について詳しく知らないのが現状です。抗議活動を行うことで少しでも興味を持ってもらいたい」と話していました。

日本弁護士連合会が反対の意見書

「テロ等準備罪」については、日弁連=日本弁護士連合会が、一般の市民でも不当に処罰されるおそれがあるとして、反対しています。

日弁連は、2月、「テロ等準備罪」の法案の提出に反対する意見書を出しました。意見書では、処罰の対象が「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に限られるとされることについて、定義があいまいだとしています。日弁連は「具体的な要件が示されず、テロ集団や暴力団などに限定されるとは読み取れない」として、市民団体や労働組合などが処罰の対象とされる可能性があると批判しています。

また、政府が、対象者を処罰するのは犯罪の「準備行為」を行った場合だと説明していることについても、どのような行為が「準備行為」なのか特定していないのは問題だとしています。法案の条文では「準備行為」の定義について、「資金または物品の手配、関係場所の下見」といった具体例が挙げられた一方、「その他」の行為も含まれるという幅のある表現になっています。日弁連は「拡大して解釈される余地を残していて、どんな行為も処罰の対象になる危険性がある」と反発しています。

さらに、政府が、今回の法案は犯罪を行うことに「合意」しただけで処罰の対象となるかつての「共謀罪」とは違うと説明していることについても、疑問があるとしています。

日弁連は、「準備行為」が処罰の条件となっているものの、犯罪の実行直前の行為だけでなく、実行するかどうかわからない段階での行為も含まれるおそれがあるとしています。これによって、仲間うちで漠然と犯罪に関わるような話をしていたグループが、買い物をしたりしただけで不当に処罰されるおそれがあり、かつての「共謀罪」と実質的に変わらないとしています。

日弁連の共謀罪法案対策本部の副本部長を務める海渡雄一弁護士は「法案の要件があいまいで、何にでも使えるので、捜査機関への歯止めがきかなくなる。何らかの社会的な活動に関わったり、団体として発言したりしただけで検挙される可能性がある」と話しています。

文化人の団体から反対声明

「テロ等準備罪」を新設する法案について、作家や映画関係者など文化人の団体から反対する声明が出されています。

作家や詩人で作る日本ペンクラブは、2月、浅田次郎会長の名前で反対する声明を発表しました。声明では法案について、「人の心の中に手を突っ込み、憲法で絶対的に保障されている『内心の自由(思想信条の自由)』を侵害するものに、ほかならない。結果として、表現の自由、集会・結社の自由など自分の意思を表明する、あるいは表明しない自由が根本から奪われてしまう」と懸念を示しています。

そのうえで、「現行法で、十分なテロ対策が可能であるにもかかわらず、共謀罪を新設しなければ東京オリンピックを開催できないというのは、オリンピックを人質にとった詭弁(きべん)であり、オリンピックの政治的利用である」として、法案の成立を阻止すべきだとしています。

また、映画監督などで作る「映画人九条の会」は今月6日に声明を発表し、「ときに映画は、暴力やテロ行為、国家犯罪などを描くこともありますが、捜査当局がそれを『暴力やテロ行為などを正当化するものであり、それを唆(そそのか)すものである』と恣意(しい)的に判断すれば、その企画活動や製作準備活動が捜査・監視の対象にされ、場合によっては処罰されかねません」としたうえで、「特にさまざまな対象に接触し、取材するドキュメンタリー映画においては、その危険性は高まります」と懸念を指摘しています。そして、「映画作りと公開でも企画の制限、テーマの規制、表現の萎縮などが進むことが強く懸念されます」と記し、法案に反対しています。

賛成の専門家「乱用のおそれは考えにくい」

「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案が閣議決定されたことについて、刑事訴訟法が専門で、組織犯罪対策に詳しい中央大学大学院の椎橋隆幸教授は「銃器犯罪や人身売買など国際的な組織犯罪を各国と協力して取り締まる際に重要なうえ、テロの脅威が高まっている今、必要な法案だ。組織的犯罪集団についても明確にされたうえ、計画への合意も準備行為が必要だとされ、捜査対象も狭められた」と法案を評価しました。

そのうえで、「警察は警察内部でチェックし、検察は公判が維持できるかチェックする。さらに裁判所は、公平な立場で裁判をするので、法の恣意(しい)的な運用や乱用のおそれは考えにくい」として、今後は、どんな場合にテロ等準備罪にあたるのか、より具体的に説明し、国民の理解を得ることが大切だと指摘しました。

ネット上の反応は

「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案が閣議決定されたことについて、インターネット上ではさまざまな声が上がっています。

このうちツイッターには、「やっと共謀罪が閣議決定か。これでようやく国際的なテロ対策の仲間入りができるな」とか、「破防法の時も治安維持法の復活と散々騒がれましたけど、制定から半世紀以上たってそういう摘発事例があるなら教えていただきたいです」など、法案に対する肯定的な意見が投稿されています。
これに対し、「こんなに恐ろしい法律が決まり一生思考、言動の自由を奪われるならばたかだか数週間程度のオリンピックなんかやめたほうがいい」とか、「犯罪の構成要件が案の定ガバガバなので何がいつどういう理由で罪に問われるのか分からない状態で非常に危ない」といった否定的な声も投稿されています。

また、賛否だけでなく、「こうしてツイートするだけでも逮捕されるかも知れない」とか、「うかつにTwitterできなくなるやも」など、ソーシャルメディアの利用をめぐって不安を感じる人の投稿も少なくありません。
一方で、「普通に生活してる分には問題なさそうな」といった平静に受け止める声もありました。