日本フィリピン首脳 中国念頭に法の支配の重要性確認

日本フィリピン首脳 中国念頭に法の支配の重要性確認
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フィリピンを訪れている安倍総理大臣は、12日夕方、ドゥテルテ大統領と会談し、フィリピンのインフラ整備を支援するため、今後5年間で1兆円規模の支援を行うことを表明するとともに、海洋における法の支配や紛争の平和的解決の重要性を確認しました。
安倍総理大臣は、今月20日にアメリカのトランプ新政権が発足するのを前に、アジア太平洋地域の主要国との緊密な連携を確認するため、12日からオーストラリアと東南アジア3か国を歴訪していて、12日午後、最初の訪問国であるフィリピンの首都・マニラに到着しました。

安倍総理大臣は、大統領府のあるマラカニアン宮殿で行われた歓迎式典に出席したあと、ドゥテルテ大統領と日本時間の午後5時前からおよそ40分間、会談しました。

この中で、安倍総理大臣はフィリピンのインフラ整備を支援するため、ODA=政府開発援助と民間投資を含め、今後5年間で1兆円規模の支援を行うことを表明するとともに、効率的な支援に向けて両国政府による「経済協力インフラ合同委員会」を発足させることを伝えました。

また、ドゥテルテ大統領が重要視している麻薬対策で、治療施設の整備や更生プログラムの作成など日本のノウハウを提供する方針を伝えたほか、ことし、フィリピンがASEAN=東南アジア諸国連合の議長国を務めることから、東アジアサミットなどの関連会合の成功に向けて最大限の支援を行う考えを示しました。

一方、両首脳は、南シナ海をめぐる問題で海洋進出の動きを強める中国を念頭に、海洋における法の支配や紛争の平和的解決の重要性を確認しました。

この後、両首脳は共同記者発表に臨み、安倍総理大臣は「会談では、基本的価値や戦略的利益を共有するパートナーである両国が、この地域の平和と安定にともに手を携えて協力していくことを確認した」と述べました。

これに対し、ドゥテルテ大統領は「安倍総理大臣は、私が大統領に就任してから初めてフィリピンを訪問する首脳だ。今回の訪問は、戦略的なパートナーシップをさらに強化するものになる」と述べました。

深刻な薬物問題 対策にも遅れ

フィリピンでは、麻薬や覚醒剤など違法な薬物を常習する人がおよそ200万人に上り、多発する犯罪や治安悪化の原因とされ、長年、深刻な社会問題となってきました。

こうした中、ドゥテルテ大統領は、違法な薬物の撲滅を最優先の政策課題に掲げ、取締りの過程で警察官が密売人や常習者など捜査対象者を殺害することも容認する、強硬な姿勢を示しています。

就任から半年余りがたち、これまでにおよそ4万5000人が逮捕され、自首した人は100万人を超え、治安も改善傾向にあることから薬物対策は国民から高い支持を集めています。

一方、警察官に殺害された人は、2200人余りに上り、アメリカ政府や人権団体などから人権を尊重するべきだと厳しい批判が上がっています。これについて、ドゥテルテ大統領は、強く反発し、中でもアメリカのオバマ大統領に対しては侮辱的な発言を繰り返し、アメリカ側も不快感を示すなど両国の関係はぎくしゃくした状況が続いています。


一方、薬物依存症から立ち直ろうという人たちを支援するリハビリ施設は全国に40か所余りで、定員もすべて合わせてもおよそ3000人にとどまり、新たな施設の建設や専門の医師や臨床心理士の育成などが急務となっていますが、予算不足などから対策は遅れています。

こうした中、中国政府は、去年10月にドゥテルテ大統領が中国を訪問した際に、フィリピンの薬物対策に日本円でおよそ17億円の資金協力を表明しました。

また、去年11月には、中国人実業家が日本円でおよそ30億円を寄付し、1万人を受け入れられるリハビリ施設が建設されています。

一方、日本もフィリピンへの支援を表明していて、先月には調査チームを現地に派遣し、今後、薬物依存症の人たちに対するプログラムの提供など具体的な支援を行っていくことにしています。

南シナ海問題めぐるフィリピンの対応は

南シナ海の問題をめぐっては、去年、国際的な仲裁裁判で中国が南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張しているのは国際法に違反するという判断が示され、フィリピンのドゥテルテ大統領は、判断を尊重する考えを強調しています。
また、南シナ海の領有権について譲歩しない考えも繰り返し表明しています。

しかし、大統領は、経済支援を得るためにまずは中国との関係の強化を優先し、仲裁裁判の判断の受け入れを中国側に強く求めるような姿勢はこれまでのところ示していません。
さらに、去年10月、中国で習近平国家主席と会談した際には、南シナ海の問題について突っ込んだ議論を避け、事実上棚上げしました。

南シナ海の問題では、フィリピンの前の政権はアメリカや日本、ASEAN=東南アジア諸国連合の国々など多国間の枠組みで対応してきましたが、ドゥテルテ大統領は中国との直接の話し合いで解決を目指す考えを示しています。
このため、フィリピンは、ことしASEANの議長国を務めますが、仲裁裁判の判断について一連の会議で議題に取り上げない見通しを示しています。