今月からタイに輸出を開始した福島県沖で取れたヒラメについて、タイの消費者団体などから安全性に懸念があると不安の声があがっているとして現地で行われていたPRイベントが中止となりました。
福島県沖で取れたヒラメは「常磐(じょうばん)もの」と言われる高級魚で、原発事故後の輸出としては初めて、今月1日からタイへの輸出が始まり、現地の日本料理店では今月末までの予定でPRイベントが行われていました。
しかし、福島県によりますと、タイの消費者団体が「原発事故の汚染水が流れ込んだ海の魚は危険だ」などとして、タイ政府に対し、福島県産のヒラメを提供する日本料理店の名前を公表するよう求めるなど、現地ではSNSを中心に不安の声があがっているということです。
このため日本の商社などでつくるPRイベントの主催者は、混乱を避けるため、現地のイベントの中止を決めたということです。
福島県からタイには、これまでに130キロほどのヒラメが輸出されましたが、半分近くが消費されないままの状態だということで、事実上、輸出はストップする形になりました。
記者会見した福島県の市村尊広県産品振興戦略課長は、「イベントの中止はやむをえないが、安全性をしっかり理解してもらう取り組みを続けて、輸出の再開につなげたい」と述べました。
タイの環境保護団体が政府批判
福島県沖で取れた魚などについてタイの環境保護団体は、今月6日、フェイスブック上に声明を出し、「タイ政府が、健康に有害な物質に汚染された可能性のある福島の海産物を輸入することは、誤った権力の行使だ」などと批判していました。
これを受けてタイ政府は記者会見を開き、安全性を強調しましたが、この団体はフェイスブック上で、「消費者のために福島県から輸入した魚にラベルを貼り、提供する店舗の名前も公開するべきだ」などと批判を続け、地元メディアが取り上げていました。
内堀知事「残念だ」
福島県の内堀知事は「現地の日本料理店で県産のヒラメの提供が始まり、『おいしい』と好評をいただいていた。タイの保健省からは、県産のヒラメについて、『厳密に検査されており安全だ』という発言があっただけに、今回のイベントの中止は残念だ。引き続き、県産食品の安全性をしっかりと確認しながら、福島が誇る水産物の輸出に取り組んでいきたい」というコメントを出しました。
漁協組合長「根強い風評被害残っている」
相馬双葉漁協の立谷寛治組合長は「福島のおいしい魚の海外への輸出が始まるということで、喜んでいたところだったので、この反応は本当に残念。根強い風評被害が残っていると感じた」と話していました。そのうえで、「検査体制もしっかりしており安全な魚を提供している。タイの消費者団体や環境保護団体の人にも実際に来てもらって、福島の魚の安全性を地道に伝えていくしかない」と話していました。