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8月5日のニュース

福島第一原発 2号機の新装置調査めど立たず

東京電力福島第一原子力発電所2号機で、「ミューオン」と呼ばれる素粒子を使って溶け落ちた核燃料の状況を調べる調査のために、5億円以上をかけて開発を進めてきた装置が、規模が大きく設置の際にほかの廃炉作業の支障になることなどから、現場投入のめどが立っていないことが分かりました。
福島第一原発2号機では、溶け落ちた核燃料の状態を調べるため、この秋にも「ミューオン」と呼ばれる素粒子を使って、建屋内の原子炉を透視する調査が計画されていました。ミューオンを使った調査はことし2月から1号機で行われていますが、国と東京電力は2号機での調査に向けてより解像度の高い新しい装置の開発を進めていて、これまでに5億円以上が投じられたということです。
しかし、調査には縦横が8メートルある大型の装置が2台必要で、現場に設置するには、ほかの設備の撤去や除染を行って場所を確保しなければならず、廃炉作業の支障になるうえ、設置するだけで開発費の倍以上の費用がかかるおそれがあることから、調査を実施するめどが立っていないことが分かりました。

2号機を巡っては、今月に予定していたロボットによる溶け落ちた核燃料の調査も、準備作業の難航から延期を余儀なくされています。このため、国と東京電力は、原子炉などの調査をいち早く進めるため、1号機で実績のある装置を2号機に転用し、早ければ年内にも先行して調査を行うことを決め、その結果によっては、新たな装置による調査を断念する可能性が出ています。

ミューオン 2つの方法
「ミューオン」を使って原子炉の内部を透視する調査には2つの方法があります。一つは「透過法」と呼ばれる方法で、ミューオンが密度の高い物質にぶつかると吸収されたり弱められたりする性質を利用し、レントゲン写真のように建屋の中を透視します。高エネルギー加速器研究機構などがおよそ1億円かけて装置を開発し、装置は比較的小型で済むという利点がありますが、解像度は1メートル四方で、細かい様子を見ることまではできません。福島第一原発1号機では、ことし2月からこの方法で調査を行った結果、ほとんどの核燃料が原子炉の底を突き破って下に落ちた可能性が高まっています。
一方、この秋にも2号機で行うことになっていた調査は「散乱法」と呼ばれ、「ミューオン」が物質とぶつかった際、相手の重さによって進路が曲がる性質を利用してより複雑な分析を行います。東芝などが5億円以上かけて装置の開発を担当し、解像度は30センチ四方と大幅に上がりますが、大型の検出器が2つ必要になり、装置の設置などが課題となっていました。

2号機 建屋内の汚染激しく
福島第一原発2号機は、事故の際、1号機や3号機と同じように核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」を起こしました。水素爆発はしませんでしたが、原子炉を覆う「格納容器」と呼ばれる設備の内部の圧力を下げる「ベント」と呼ばれる操作ができずに破損し、放射性物質の大量放出につながったとみられています。
このため2号機は、建屋内の汚染が激しく、高い放射線量が調査を阻む一因となっていて、東京電力は、溶け落ちた核燃料の状況を把握するため、遠隔操作で動くロボットを格納容器の中に投入する調査や、「ミューオン」を使って原子炉などを透視する調査を計画しています。しかし、今月に予定していたロボットによる調査は準備作業が難航しているために、ことし12月以降に延期される可能性があるほか、ことし秋に計画していたミューオンによる調査も、当初の計画どおりに進めるめどが立たない状況となっています。

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