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7月31日のニュース

「東電旧経営陣 起訴すべき」検察審査会

東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡って告訴・告発され去年9月に不起訴になっていた東京電力の勝俣元会長ら旧経営陣3人について、検察審査会は「原発の安全神話の中にいたからといって責任を免れることはできない」と指摘し「起訴すべきだ」という議決をしました。
この議決を受けて検察は改めて起訴するかどうか判断することになります。
東京第五検察審査会が「起訴すべき」と議決したのは東京電力の勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長の3人です。
勝俣元会長ら旧経営陣は福島第一原発の事故を巡って、おととし福島県の住民などおよそ14000人のグループに業務上過失致死傷の疑いで告訴・告発されました。
これについて検察は去年9月、「今回の規模の地震や津波を具体的に予測するのは困難だった」と結論づけ、全員を不起訴にしたため、住民グループは検察審査会に審査を申し立てていました。
31日公表された議決書の中で、検察審査会は「東京電力は平成20年に東日本大震災と同じ規模の15.7メートルの高さの津波を試算していた。地震や津波はいつどこで起きるか具体的に予測するのは不可能で巨大津波の試算がある以上、原発事業者としてはこれが襲来することを想定して対策を取ることが必要だった」と指摘しています。
さらに東京電力や原発の規制当局が十分な対策を取らなかったことについて「安全に対するリスクが示されても実際には津波は発生しないだろう、原発は大丈夫だろうという曖昧模糊(あいまいもこ)とした雰囲気が存在したのではないか。こうした態度は本来あるべき姿から大きく逸脱しているし、一般常識からもずれていると言わざるを得ない。原発の安全神話の中にいたからといって責任を免れることはできない」と厳しく批判しています。
そのうえで勝俣元会長ら3人は津波が襲来した場合の影響を知りうる立場で、適切な対策を取らせることが可能な地位にあったと判断して刑事責任を問うべきだと結論づけました。
そして検察に対し「原発事故は真実の解明が非常に困難で、いまだ明らかになっていない点も多いが、一般市民から選ばれた審査員がたび重なる議論を経たうえで議決した趣旨に沿って再捜査を行い、適切な判断を行うことを期待する」として議決を締めくくっています。
これを受けて検察は再捜査をすることになりますが、その結果、再び不起訴にしても3人についてはその後、検察審査会が「起訴すべきだ」という2回目の議決を出した場合、強制的に起訴されます。
また検察審査会は、元常務1人について「不起訴不当」、別の元副社長2人については「不起訴は妥当」と議決しました。
一方、この事故では菅元総理大臣ら当時の政府の責任者も別の市民団体から告発され不起訴になりましたが、検察審査会はすでに「不起訴は妥当」だと議決しています。

【勝俣元会長「コメントする立場にない」】
「起訴すべきだ」という検察審査会の議決について、東京電力の勝俣恒久元会長は、NHKの取材に対し「コメントする立場にありません」と話しました。
東京電力は「福島県民の皆さまをはじめとする多くの皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしていることについて、改めて、心からおわび申し上げます。今回の議決は、刑事告訴・告発に関することであること、また、検察審査会が検察の処分に対してなされたものであることから、当社としてはコメントを差し控えさせていただきます。いずれにしても、要請があれば、当社として捜査に真摯(しんし)に対応してまいります」というコメントを出しました。

【住民「責任取ってもらいたい」】
原発事故で全域が避難区域になっている福島県飯舘村から福島市の仮設住宅に避難している鈴木利子さん(70)は「東京電力には怒りの感情のほかには何もありません。避難生活の大変さを知って、責任を取ってもらいたい」と話していました。
夫の秀治さん(77)は「除染も進まず、今も村に戻る見通しは立っていません。精神的な苦痛はお金で解決できないと思います」と話していました。
また、仮設住宅で1人暮らしをしている新谷正代さん(59)は「一緒に住んでいた家族がばらばらになって生活も奪われて悔しい。できることならすべてを元に戻してもらいたい。東京電力にはきちんと事故の責任を取ってもらいたい」と話していました。

【告訴団「非常にまっとうな議決」】
福島原発告訴団の武藤類子団長は「全員が、起訴すべきとならなかったことは残念だが、非常にまっとうな議決を出してくれたと感じている。検察は重く受け止めて強制捜査を含めた再捜査を即時に行ってほしい。原発事故の被害者はそれを心から望んでいる」と話していました。

【東京地検「適切に対処したい」】
東京地方検察庁の中原亮一次席検事は「議決の内容を十分に検討し適切に対処したい」というコメントを出しました。
捜査に関わった法務・検察の幹部の1人は「東日本大震災と同じ規模の巨大地震や津波を具体的に予測するのは難しく、捜査は尽くしていただけに今回の議決には驚いた。起訴相当の議決が出ることは想定しておらず見通しが甘かった。今回の議決は重い判断であり冷静に受け入れて再捜査する必要がある」と話しています。

【菅官房長官「推移を見ていきたい」】
菅官房長官は、31日午前の記者会見で、「政府としては現時点で詳細をまだ把握しておらず、検察審査会の議決についてコメントは控えたい。今後いろいろな手続きがあるだろうから、推移を見ていきたい。いずれにしろ、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、政府として、2度と事故の起きないような安全対策をしっかり講じていきたい」と述べました。

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