東京電力 福島第一原発事故 関連ニュース

6月2日のニュース

汚染水の抜本的対策「凍土壁」本格着工

  • 汚染水貯蔵タンク
  • ALPS
  • 井戸
  • 1号機
  • 2号機
  • 3号機
  • 4号機

東京電力福島第一原子力発電所で汚染水対策の柱として計画されている建屋の周りの地盤を凍らせる「凍土壁」の工事が国の了解が得られた山側から始まりました。
凍土壁は現場の地下の状況を大きく変えると予想され、十分な対策や監視を行うことが課題になります。
凍土壁は福島第一原発で汚染水が増える原因となっている山側からの地下水の流入を防ぐため、1号機から4号機の周りの地盤を総延長1.5キロ、深さ30メートル余りにわたり凍らせます。
技術的な課題の検討が続けられているため、原子力規制委員会からまだ工事全体の認可は下りていませんが、建屋の山側の凍結管を埋める穴の掘削や凍土を作る設備を設置するための工事は了解が得られ、2日午後4時43分から1号機の山側で掘削作業が始まりました。
「凍土壁」は来年3月ごろから凍結を開始し、1か月余りで完成する見込みです。
汚染水の増加を抑えることが期待される一方で、トレンチがある海側の工事や凍土壁が出来て地下水の流れが変わることで建屋にたまっている汚染水の流出を引き起こさないようにすることが課題になります。
こうした対策や監視態勢などは原子力規制委員会の専門家会合で引き続き検討されることになっています。

【凍土壁とは】
凍土壁は、国と東京電力が、福島第一原発の抜本的な汚染水対策と位置づけて作る大規模な氷の壁です。320億円の国費が投じられます。
凍土壁は、福島第一原発の建屋を囲むように地下に作られます。山側から流れ込む地下水を遮断して、建屋の地下などにたまっている汚染水が増えるのを抑えようというものです。
「凍結管」と呼ばれる鋼鉄の管を、1メートル間隔で、30メートル余りの深さまで打ち込み、そこに氷点下30度の冷却液を流して周囲の土を凍らせます。完成すると氷の壁の総延長は、1.5キロに及びます。
今後は、地盤の掘削や凍結管の設置工事を経て、来年3月ごろから地盤を凍らせる作業を始め、壁は1か月余りで完成する見込みです。
これまでに国と東京電力は、4号機の山側で、10メートル四方の規模で実験用の凍土壁を作り、地下に配管などの構造物がある場合にも十分に地盤を凍らせることができ、地下水を遮断する効果があることを確認したとしています。

【汚染水対策の柱の一つ】
東京電力福島第一原子力発電所では、汚染された地下水が海に流出していることが明らかになり、去年さまざまな対策を組み合わせて汚染水問題に対処する方針が示されました。
凍土壁はその柱となる対策の1つです。福島第一原発の1号機、2号機、3号機では事故で溶け落ちた核燃料を冷やすために今も水を注入し続けていてこれが汚染水となって建屋の地下などに流出しています。
これをくみ上げて再び冷却水として使う仕組みが作られていますが、建屋には山側から地下水が流入しているため、汚染水は1日およそ400トンのペースで増え、敷地内のタンクにためる量も増え続けています。
この汚染水の発生を抑えようと作られることになったのが、凍土壁です。
東京電力は1号機から4号機の周辺の地盤を囲む凍土壁が完成すると、発生する汚染水の量は1日当たり290トン削減されると試算しています。

凍土壁だけでなく、建屋の山側で地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」の運用を先月から始めました。汚染水の発生を1日当たり最大で100トン程度、減らすことができるとしています。

汚染水を浄化する取り組みも行われています。
建屋の地下にたまった汚染水はくみ上げられて、62種類の放射性物質を取り除くことができるとされる「ALPS」と呼ばれる処理設備などを通して建屋の山側にあるタンクにためています。
ALPSは去年3月に試験運転が始まって以降、トラブルが相次ぎ、安定した運転に入れない状態が続いていますが、国と東京電力は汚染水処理の要と位置づけて、今後、設備の増強を計画しています。
また建屋とつながっている「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルには汚染水が流れ込み、周辺に漏れて地下水を汚染しているとみられます。
このため、特に放射性物質の濃度の高い2号機と3号機では、ことし1月から建屋とトレンチとの間を氷の壁で遮断する工事を始めていて、今後、汚染水を取り除くことにしています。

そして、海への流出を水際で防ぐ対策もあります。
海側の護岸では、汚染された地下水のくみ上げが行われているほか、港湾内には、鋼鉄製の管と板を打ち込んで、汚染水の流出を防ぐ「海側遮水壁」が作られていて、ことし9月の運用を目指しているということです。
さらに汚染水の大元を断つためには、燃料が溶け落ちている格納容器の破損箇所の修復や将来的には、原子炉や格納容器の中にある溶け落ちた核燃料の除去が必要になります。

【十分な対策と監視が課題】
福島第一原発の建屋を囲むように作られる凍土壁は大がかりな工事で地下の状況を大きく変えることから、建屋の地下などにたまっている高濃度の汚染水が漏れ出すことがないよう、確実に対策をとることが求められます。
凍土壁は1号機から4号機の周囲を30メートル余りの深さまで隙間なく凍らせて、山側から建屋に流れ込む地下水を遮断します。
1号機から4号機の建屋の地下には、高濃度の汚染水7万トン余りがたまっていてその水位を周辺の地下水より低く保つことで、汚染水が周辺の地盤に漏れないようにしています。
そこに凍土壁が作られるとその内側ではこれまでのような地下水の出入りはなくなりますが、地表に降ってしみ込んだ雨水などが汚染水がたまっている建屋に流れ込む状態は続きます。
さらに事故で溶け落ちた核燃料を冷やすため、原子炉に注入した水を建屋の地下でくみ上げて循環させる「循環注水冷却」が行われていますが、トラブルが起きて建屋の水をくみ上げられなくなるなどして、汚染水の水位が高くなると、汚染水が建屋の外に流れ出すおそれがあるのです。
このため東京電力は凍土壁を作ったあとも、建屋の周りに設置した31の井戸に水を流し込んで建屋の外の地下水位を内部の汚染水の水位より50センチほど高く保つ対策をとることにしています。
このほか原子力規制委員会の専門家会合では、地震などの自然災害や、凍土壁の設備が故障した場合にも建屋の汚染水が漏れ出さないようにする対策が議論されています。
また、汚染水がたまっている「トレンチ」と呼ばれるトンネルがある建屋の海側での工事をどのように進めるか検討が行われています。
今回計画されている規模の凍土壁が長期間、運用された例はなく、地下の状況を大きく変えるだけに建屋や地盤への影響が出ないよう、十分な対策と監視が課題になります。

6月2日のニュース一覧