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11月30日のニュース

“汚染水放出”TV会議の新映像公開

  • 3号機

原発事故直後の対応が記録されたテレビ会議の新たな映像が公開されました。
この中には、去年4月、関係機関への十分な連絡なしに汚染水を海に放出する決定をした際のやり取りがあり、映像からは、政府や東京電力本店が現場の切迫感を十分把握できず、追い込まれて放出を決断するという、当時の混乱ぶりが確認できます。
新たに公開されたのは、事故から6日目の去年3月16日からの1週間と、去年3月30日からの1週間の、およそ336時間分のテレビ会議の映像で、原則、閲覧による公開で、ほかにおよそ2時間分が報道用に提供されました。
この中には、冷却できなくなった使用済み燃料プールに自衛隊のヘリコプターなどで放水した際のやり取りや、関係機関への十分な連絡なしに汚染水を海に放出し、国内外から批判を浴びた際の対応などが含まれています。
このうち、汚染水の放出については、政府や国会の事故調査委員会が検証結果を公表していますが、実際に現場と本店や政府との間でどのようなやり取りがあったのか十分明らかになっていません。
今回の公開によって、その一端が見えてきました。
例えば、去年3月30日のテレビ会議では、現場の指揮官の吉田所長が、「水の問題がいちばん大きいことは、すでに1週間近く言っている。限界だ。何とかしてくれ」と、汚染水の海への放出も含めて、緊急に対策を検討してほしいと本店に掛け合っていました。
しかし、本店側の担当者は「決して汚染水を外部に放出しないためにどうすればいいか検討している」と発言し、現場の危機感との間にずれが生じているのが確認できます。
その後、事態が悪化し、放出当日の去年4月4日午前9時のテレビ会議では、吉田所長が「手足を縛られたなかで頑張れと言われても、到底頑張れない」と発言し、状況が一変して、一気に海への放出が決まっていったことが分かります。
一連のやり取りを見ると、政府や本店が現場の切迫感を十分把握できず、汚染水の海への放出という極めて重大な決断を、追い込まれて決めていった混乱ぶりが浮かび上がります。
ただ、こうしたやり取りの多くは閲覧の映像の中にあり、提供された動画の中にはほとんど含まれていませんでした。
このほか、去年3月17日、3号機の燃料プールに自衛隊のヘリコプターで上空から放水しようとした際のテレビ会議の映像には、「来たぞ、4機目だ」、「ああ、霧吹きだ」などと、冷却手段がなくなった燃料プールへの放水に期待しながら見守るしかない現場の苦悩も見て取れます。
今回の公開は、ことし8月以来2回目で、事故対応の検証に欠かせないテレビ会議の映像について、東京電力は事故から1か月に当たる去年4月11日までの分を公開する方針を示していて、残る2週間分について、来年1月下旬をめどに公開するとしています。

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