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6月23日のニュース

放射性汚泥 自治体は扱い苦慮

各地の下水処理施設から出る放射性物質を含む汚泥などについて、政府は、先週、肥料用としては「出荷を自粛する」という方針を示しました。
このため、汚泥の利用を進めてきた地域のうち、少なくとも6つの県で、施設などでの保管を続け、取り扱いに苦慮していることがNHKの調査で分かりました。
自治体からは「利用の基準を示してほしい」という声が強まっています。
東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、各地の下水処理施設から出る汚泥などから相次いで放射性物質が検出され、政府は、先週、肥料用としては一律に「出荷を自粛する」などとした方針を示しました。
NHKが、これまで汚泥から放射性物質を検出した16の都道府県に尋ねたところ、汚泥を肥料として利用していたのは12の県でした。
このうち、施設などでの保管を続けているのは、福島や茨城、それに長野など、少なくとも6つの県で、肥料として利用する予定だった汚泥の取り扱いに苦慮していることが分かりました。
汚泥に含まれる放射性セシウムの濃度は、いずれも1キログラム当たりの最大値で、福島県がおよそ9000ベクレル、茨城県が770ベクレル、山形県が57ベクレルなどとなっていました。
このうち、山形県は、毎日、およそ140トン発生する汚泥のおよそ40%を肥料用としていましたが、先月20日に放射性物質を検出して以降、出荷を自粛し、保管を続けています。
農林水産省によりますと、土の中には、通常でも1キログラム当たり6ベクレル前後の放射性セシウムが含まれていますが、肥料や堆肥などに含まれる濃度について定めた基準はありません。
このため、各地の自治体からは「どの程度の濃度なら利用可能なのか、基準を示してほしい」という声が強まっています。
一方、今回の調査で、汚泥に含まれる放射性セシウムが、1キログラム当たり最大で320ベクレルだった岩手県と、32ベクレルだった静岡県は、独自の判断で肥料用として出荷を続けていることが分かりました。
これについて、岩手県下水環境課は「汚泥に含まれる放射性物質の濃度は比較的低く、堆肥を製造する業者からの要請もある。汚泥は数か月熟成させて堆肥にするので、すぐに市場に流通するわけではなく、製品になった段階で放射性物質の測定を行うことも検討されており、総合的に判断して、汚泥の引き渡しを行っている」と話しています。
また、静岡県の生活排水課は「国は具体的な基準を何も示しておらず、検出された数値も外部に持ち出すことができないレベルのものとは考えていない」としています。
各地の自治体が放射性物質を含む汚泥の対応に苦慮していることについて、農林水産省農産安全管理課の朝倉健司課長は「肥料に利用される下水の汚泥から放射性物質が検出されることはこれまで想定していなかった。土の中には、過去の大気中での核実験で放射性物質が僅かに蓄積していて、植物が吸収する割合について研究が行われていることから、放射性物質の濃度がどの程度なら肥料として使ってもよいのか、目安となる数値をできるだけ早く示したい」と話しています。
また、政府と東京電力でつくる統合対策室の事務局長を務める細野総理大臣補佐官は「放射性物質が含む汚泥を肥料に再利用するための基準を作りたいと、農林水産省と検討しているが、農作物への影響を考えるとかなりの慎重さが必要だと考えている。再利用を求めている肥料業者の人たちには申し訳ないが、慎重のうえにも慎重を期して、時間をかけて検討すべき問題だ」としたうえで「今の段階ではいつの時点で基準を作れるかは示せない」と述べました。
一方、土壌学が専門で、農地や肥料の問題に詳しい東京農工大学の鈴木創三教授は「放射性物質が含まれる汚泥を肥料として使うことで、ほかの地域の土壌に汚染を広げるおそれがある。放射性物質が含まれる肥料は農地に使うべきではなく、原料となる汚泥から放射性物質が検出された場合は、放射線の影響がなくなるまで厳重に管理すべきだ。長期間の管理には費用もかかるが、結果的に土壌の健全性を守ることになる」と話しています。

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