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「ナイトタイムエコノミー」とは午後6時から翌朝6時までの時間帯に観光や飲食などの活動の場を増やし、経済を活性化させようというものです。日本では外国からのインバウンド客に消費を増やしてもらうための大きなカギとなっています。
先進地とも言われるイギリスでは、ナイトタイムエコノミーの経済規模が日本円で7兆円超(383億ポンド 2022年 飲食や娯楽のみ 出典:NTIA)と言われています。ただ、最近は大きな変化が生まれているようです。
人気の「ゲームバー」 伝統のパブは衰退
イギリス中部のマンチェスターで、いま人気のバー。若者たちが楽しんでいるのはビデオゲームです。お酒も飲みつつ、ちょっとした遊びもできる「ゲームバー」と呼ばれる新たな体験型の店舗が人気を集めています。
ゲームバー営業担当 ハンナ・カラザーズさん
「毎週末、予約でいっぱい。若者は夜の外出にもっと価値を求めている」
一方で衰退しているのが、イギリス伝統のパブやナイトクラブ。かつては朝まで酒を飲み、踊り明かす若者も多かったですが、コロナ禍やインフレによる光熱費などの上昇が直撃、この3年余りでナイトクラブの3分の1が閉鎖されたといいます。
若者の価値観に変化
ナイトタイムエコノミーが様変わりした背景にあるのが、若者たちの価値観の変化です。マンチェスターのゲームバーの常連客、エスター・ベックリーさんは、かつて毎週末のように明け方までナイトクラブに通っていましたが、いまはゲームバーで仲間と盛り上がり、早々に切り上げるのが日課です。
ゲームバーの常連客 エスター・ベックリーさん
「ナイトクラブは入場するだけで高い。(ゲームバーは)飲み物を買うお金だけで楽しめる」
“夜のカフェ”も登場
夜遅くまで飲まなくなった人のニーズを取り込む動きも広がっています。店舗を全面的に改装して業態転換したカフェもあります。
健康志向の人も楽しめるようノンアルコール飲料を数十種類そろえました。
また高性能の音響機器も導入しました。ゆったりと音楽を楽しみたい人の評判を呼び、売り上げが改装前と比べ1年でほぼ倍増しました。
客の1人は次のように話しました。
また別の男性客は「常連の人たちはここ(店)に住んでいるようなもの」と話していました。
カフェ オーナー ルカ・ピラートさん
「私自身、もはや朝6時まで外出していたいと思わない。人々のライフスタイルはそれぞれ違う」
「消費者の変化に逆らうことはできない」
専門家は、コロナ禍以降の変化に業界が柔軟に適応していく必要があると指摘します。
経営コンサルタント スコット・コーフ ディレクター
「イギリスでは人々が外出してお酒を飲む時、よりプレミアムな体験を求めるようになった。(業界は)消費者の変化に応じて調整していくべきで、この流れに逆らうことはできないだろう」
イギリスというと、パブで酒を飲みながらスポーツ観戦するようなイメージが強いですが、多様な夜の過ごし方が生まれてきているようです。日本でも体験を重視した新たな「ナイトタイムエコノミー」を開拓する動きが活発になりそうです。
(ロンドン支局 松崎浩子)
【2024年5月16日放送】