ごみ袋に名前?寄せられた“もやもや”を追う

「長野県の一部地域では、ごみを捨てる際に袋に名前を書かなければいけません」

ニュースポストに寄せられたこの情報。
記者は、これまでの人生でそんな経験をしたことはありませんでした。

「なぜ、名前を書くことが求められているんだろう?」
不思議に思って、取材を始めました。

投稿を寄せてくれたのはこちらの男性。
就職を機に、東京から長野県東御市に移住したそうです。

アパートの大家さんから、「ごみ袋に名前を書く欄があるから名前を書いてね」と言われ、戸惑いました。

「誰が出したごみか、分かってしまう。プライバシーは大丈夫なのかな」

6年前に長野に来て以来、ずっと抱いていた「もやもや」を、ニュースポストに寄せてくれました。

「まずは、現場を見てみないと」
さっそく、男性が住んでいたという東御市のごみステーションに向かいました。

すると、すべてのごみ袋に、きちんと名前が。
住民からは「ずっと書いてます」「いつものことで抵抗はないです」との声が聞かれました。

市の担当者によると、東御市では少なくとも20年以上前から、ごみ袋に名前を書いてもらうようにしているそうです。理由は、「分別に間違いがあったときに誰が出したか分かり、責任を持ってごみを出すことにつながる」からであることも分かりました。

そうすると、次に浮かんだ疑問は、「ほかの市町村ではどうなっているのか」ということ。
長野県の全77市町村の状況を確認したところ、ごみ袋に記名欄を設けていたのは実に71市町村。そのうち、27市町村では、名前が書かれていないごみは回収しないというルールになっていました。

名前を書くことを条例で決めている自治体もあり、長野県全体で、ごみ袋に名前を書くことが当たり前になっていることが分かりました。

詳しくはこちらの記事をご覧下さい。

長野県の状況についてお伝えしたあと、私たちのもとには長野以外に住む方からもさまざまな情報が寄せられました。

「ずいぶん前からそうだけれど、違和感は全くないです」
こんな投稿を寄せてくれたのは、三重県東員町にお住まいだという方。
さっそく、町に行って取材を始めました。

町指定のごみ袋を見せてもらうと、確かに世帯主の氏名を書く欄が。

伊藤さんは、ごみ袋を買ってくると、毎回、書き漏らすことがないよう、あらかじめすべての袋に世帯主である夫の名前を書くそうです。
最初は抵抗があったという伊藤さんですが、このルールで、ごみ出しへの意識に変化があったと教えてくれました。

「可燃ごみの中にプラスチックごみが混ざるなど、分別が守られていないと回収してもらえないこともあります。そうなると、取り残されたごみ袋が絶対自分のものだと周りにも分かります。なので、ちゃんと分別して出すようになりました」

町内で聞いてみると、「名前を書くことでみんなちゃんと分別するからいいと思う」、「自分の出すごみには責任を持った方がいい」と肯定的な声が多く、長野県東御市と同じように、住民のみなさんに浸透していることがよく分かりました。

三重県のほかの自治体を調べてみると、29市町のうち、名前を書くよう求めているのは東員町だけでしたが、ほかにも、桑名市や鈴鹿市など10の市町では指定のごみ袋に記名欄がありました。

また、私たちは、専門家にもこのルールの「効果」について取材。すると、分別の適正化やごみ出しマナーの改善のほかに、ごみの減量という効果もあると分かりました。

ただ、個人情報への意識の高まりを十分考慮し、ごみ袋に名前を書いてもらうなら、メリットなどをきちんと住民に説明して理解してもらうこと、そして、プライバシーに配慮した柔軟なルールで運用することが大切だとのことでした。

そうは言っても、プライバシーの面で、なかなか受け入れられないという人が増えることも予想されます。

記名に頼らなくても私たち1人1人がごみ捨てに責任をきちんと持っていなければいけないと感じました。

三重県の状況、詳しくはこちらの記事で

皆さんがふだんの生活の中で感じている「もやもや」。
よく調べてみると、興味深い事実の発掘につながることを痛感させられた取材でした。

「ちょっと変?」「何かおかしい?」
あなたの「もやもや」、是非、ニュースポストにお寄せ下さい。
私たちが追いかけます。