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どうなる?未来のコンビニ

都内某所、コンビニ大手のローソンが「ラボ」と呼ぶ社内施設があります。ことし10月設けられたこのラボ、社会の変化や技術の進展に応じてコンビニがどうあるべきかを実験・研究し、次世代の店舗の在り方を見いだそうというのが狙いです。
未来のコンビニはどう変わるのか?これまで公開されていなかった、その現場にNHKのカメラが初めて入りました。(経済部記者 中島圭介)

初公開!ローソン「ラボ」

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ラボと聞くと、実験設備があって白衣を着た研究者がいてと想像してしまうかもしれません。しかし、案内されたラボはオフィスビルの一角にあり、レジのカウンターや商品を置く棚が置かれていて、ちょっと見ただけでは、いまある普通の店舗とあまり違いはないようにも思えます。

しかし、よく見てみると、至る所にカメラやセンサーが設置され、見慣れない装置も置かれています。ここで試されているのは、最新のIT技術やAI=人工知能を活用した「新しい買い物のしかた」です。

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そう遠くない将来、コンビニでの買い物は、好きな商品を手に取り、自分のバッグに入れてそのまま店を出て終わりで、レジに並んだり小銭やスマホなどを取り出したりする必要はなくなるかもしれません。ラボで試されているのは、まさにそんな技術です。

スマホ決済でレジいらず

レジでの支払いを不要にするため、ラボではスマホと電子タグなどを組み合わせたシステムの実証試験が進められています。

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店内にあるすべての商品一つ一つに電子タグが取りつけられています。この電子タグは電波を発するタイプのもので、バーコードやQRコードのような読み取りのための作業さえも必要ありません。

店の出入り口にあるゲートを商品を持って通るだけで、電子タグが発するデータがキャッチされ、そのデータを瞬時に処理して、利用客が持つスマホのアプリ上で決済が行われます。いくら支払ったのかという情報も、すぐにスマホの画面に表示され確認できる仕組みです。

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客みずからが会計を行う「セルフレジ」を使ったことがある人もいると思いますが、現金やカードなどを出すこともなくレジを全く通らずに、商品を取ってそのまま店を出て行くというのは、これまでにない新たな体験になりそうです。

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店側にもメリットが

こうした技術は、店側にもいろいろなメリットをもたらします。

電子タグと店内のカメラやセンサーなどを組み合わせることで、客がどの商品を手にとってどう店内を移動したのかといった動きや、一度手にとった商品を棚に戻すといった動きも、データとして把握することができるようになります。

スマホによる支払いでは、事前に名前や年齢などを登録するため、従来よりも細かく個人の購入履歴を分析することもできます。そうした膨大かつ緻密なデータを、利用者一人一人の好みにあわせたクーポンを送るといったきめ細かい販売戦略や、より買ってもらえる商品の開発につなげることができるのです。

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ローソン社長の危機感

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次世代型の店舗開発を進めるローソンの竹増貞信社長は、次のように話します。

「絶対的なベースとなるのはビッグデータです。そのデータを解析しまくることが大前提で、お客さんのニーズをつかんで、それに応え続けたコンビニが評価されていくのだと思う。いま取り組んでいることは、まだまだ想像できる範囲にとどまっていて、ここからさらに突き抜けていかないと本当のイノベーションは起こらない」

人手不足の深刻化などにより、成長の曲がり角に直面しているコンビニ。その経営トップならではとも言える現状への強い危機感を感じました。

先行する米国や中国

その強い危機感の背景には、次世代型店舗では海外に先行を許してしまっているという現状もあります。アメリカでは、ネット通販の巨人「アマゾン」が、レジなし店舗の試験運用を始めています。

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さらに中国ではIT技術を駆使した無人型の店舗が相次いでオープンし、上海などではすでに定着しつつあるのです。

ことし10月中旬、ローソンの幹部たちが上海を訪れ、現地の実情を視察しました。ことしオープンしたばかりの無人コンビニ「オーシャンボックス」。 スマホのアプリで会員登録したうえで、ドアにスマホをかざすとロックが解除され、入店することができます。商品の購入は店内に備え付けられたセルフレジで行い、スマホで支払いを済ませると再び解錠されて外に出られる仕組みです。店に従業員は必要ありません。

驚きの中国最新スーパー

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さらに一行が驚いたのが、中国のネット通販最大手「アリババ」の子会社が運営するスーパー「フマシェンシェン」です。広々として、清潔な店内。大きな生けすには、いきのよい海鮮も。

一方、レジはセルフレジ。商品のすべてがスマホ決済で購入可能。店にはネット経由でも注文でき、配達もしてくれます。

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それを象徴するのが、天井に備えられたレールに沿って動いていく買い物バッグです。注文が入った商品を店員が棚から取り出してバッグに詰めると、天井のレールへ。バッグは自動でバックヤードに運ばれ、そこから速やかに配達に回ります。店から3キロ以内であれば、30分以内に配達するというのです。

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会社によると、この店の強みはアリババのネット通販から得られた5億人分の買い物のビッグデータを活用していることです。どの地域に店舗をつくり、どんな品揃えをするべきか、ビッグデータを基に決められていて、坪単位の売り上げは現地の一般的なスーパーの5倍にも達するといいます。

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中国の現状を目の当たりにしたローソン・マーケティング本部長の野辺一也さんは、ビッグデータを活用し、ネットと店舗を組み合わせた中国式店舗に脅威を感じたと言います。

「現地の嗜好性がわかる購買データに基づいて、地域ごとに商品を変えたり自社製品を開発したりしてリアルな店舗で展開できるというのは、脅威です。われわれも決済やスマホを通じてデータを入手して、利用客の満足につながるようなサービスや商品を提供していくことにチャレンジしないといけない」

始まっている次世代の覇権争い

ローソンだけでなく、セブンーイレブンやファミリーマートなどの日本のコンビニ各社も、スマホ決済やビッグデータ活用に向けた検討を始めています。

しかし、ネットと実店舗の融合という面では、最先端のIT技術と圧倒的な情報量を持つ巨大な海外企業が先行し、小売りの分野に攻め入ろうとしています。次世代の店舗をめぐる覇権争いはすでに始まっていて、米中勢がその矛先を日本に向けてくる可能性も大いにあるのです。

一方の日本では、海外より強いと言われる消費者の「現金信仰」、購買データなどが活用されることへの抵抗感、電子タグなどの新たなコストを誰が負担するのかなど、数多くある課題を乗り越えていく必要もあります。

アメリカで生まれ、日本で成熟したコンビニ。今後も日本がリードしていくのか、それとも再びアメリカ式で花開くのか、はたまた中国式で進化するのか、時代の大きな分かれ道にあるのかもしれません。

中島圭介
経済部記者
中島 圭介
平成16年入局
青森局、千葉局、
首都圏放送センターをへて
現在、流通業界を担当