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目指せ1兆円 食品輸出拡大へ

すしやすき焼きのほか、ラーメン、たこ焼きなど…海外からの観光客が増える中で、外国人に人気がある日本の食べ物の範囲も広がってきています。

さらに世界的な和食ブームも追い風に、日本の食品や農産物の輸出拡大を目指した大規模な展示会が開かれました。

アメリカやヨーロッパ、さらには中東など60を超える国や地域から訪れた海外バイヤーは実に1500人以上。その会場で、海外を目指す日本の食のヒントを探りました。(経済部記者 楠谷遼)

にぎわう会場

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会場となった千葉県の幕張メッセには、食品会社や農業法人などおよそ300の団体が出展しました。中には、初めて輸出を目指すというところも多く、会場では、海外のバイヤーに熱心に商品をPRし、商談を進める姿が見られました。

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なぜ輸出なのか?

少子高齢化で人口減少が見込まれている日本。食品業界や農業の分野でも、自動車産業などほかの産業と同じく、国内市場が縮小してしまうという危機感があります。

こうした中で、政府が掲げているのが、2019年までに食品や農産物の年間輸出額を3割増やして1兆円に引き上げるという目標です。成長が期待される海外市場への輸出を拡大して、食品産業や農業の活性化に結びつけようという狙いです。

今回の展示会も、農林水産省がJETRO(日本貿易振興機構)と協力して呼びかけ、海外から多くのバイヤーを招いて開催しました。

注目集まる日本酒

海外バイヤーの注目をひときわ集めていたのが「日本酒」です。輸出額は毎年1割から2割のペースで増加。いま日本の食品輸出をけん引している品目で、原料となるコメの消費拡大の期待も担っています。

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各地の蔵元のブースで、熱心に話を聞いていた2人のバイヤーがいました。ノルウェーのオスロからきた、アドリアン・ロバートセンさんとシモナ・ベリガダノバさんです。2人は現地のすし店で働いていて、店で出す日本酒を探しに来たといいます。

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日本酒を試飲したベリガダノバさんは「ノルウェーでもさまざまな種類の日本酒を試飲してきたが、この酒はこれまでで最高だ」と大満足な様子。

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ロバートセンさんも「ぜひ輸入して、ノルウェーの人たちに本場の日本酒を紹介したい」と語っていました。

ニーズ分析で冷凍押しずし

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また会場で目立ったのは、外国人の好みに合わせて開発した商品です。

その1つが、奈良県天理市にある創業150年という老舗の食品会社が出展していた冷凍「押しずし」。今回の展示会に向けて1年近くかけて開発したという輸出専用商品です。工場で働く外国人労働者から感想を聞くなどして、外国人の好みを研究したということです。

この中で、外国人には味や香りがはっきりしたものが好まれるとして、シャリに「さんしょ」や「ゆずの皮」を混ぜる工夫をしました。また、生ものが苦手な人も多いとしてサケなどのネタには軽く火を通したほか、すぐに食べられるようレンジで解凍できるようにもしました。ブースでは試食品がすぐになくなったということで、開発の成果があらわれたようです。

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平井孝典社長は「これまで国内でしか商売してこなかったので、外国人に受けるかどうか正直不安だったが、高い評価を得ることができた。試食してくれたバイヤーの意見をもとに改良を加え、本格的な輸出に乗り出したい」と話していました。

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平井孝典社長

米粉に新たなニーズ

一方、コメも外国人のニーズをとらえた商品に生まれ変わりました。

秋田県大潟村にあるコメ生産者で作る会社が開発したのは、米粉を使ったパスタ。欧米で、ダイエットなどのために、小麦に含まれるグルテンが入っていない食材の人気が高まっていることに着目。グルテンフリーとして米粉を使ったパスタを売り出しました。

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この会社は10年ほど前から米粉を使った商品を開発してきましたが、国内では、販売が伸びませんでした。そんなときに、テニスプレーヤーのジョコビッチ選手がグルテンフリーの食事法を実践していると聞き、米粉の市場は海外にこそあると考えたといいます。

去年、海外の展示会で出品したところ、欧米のバイヤーから問い合わせが殺到。今回の展示会でもアピールをして、輸出を拡大したい考えです。

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涌井徹代表は「コメはグルテンを含んでいないのが最大の弱点だと思っていたが、海外ではむしろ逆にグルテンを含まないことが強みになると知って驚いた。海外向けにグルテンフリーの商品をどんどんと開発して、将来的にはコメの輸出にも乗り出したい」と意気込んでいました。

体験型!抹茶キット

食品の魅力を伝えるだけでなく、日本文化も合わせて体験できる形にした商品もありました。

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神戸市の会社が開発したのは、鹿児島産の抹茶に、和歌山の職人が手がけたという茶わんと、茶せんをセットにした商品です。

茶わんに抹茶を入れてお湯を注ぎ、茶せんを使って、手軽にお茶をたてる体験ができるというものです。この会社は、低価格を武器に海外市場で存在感を増している中国産の抹茶との差別化を目指したということで、売れ行きは好調だということです。

商品開発に秘めた可能性

出展された商品を取材して、強く印象に残ったのが、外国人のニーズをつかもうという工夫です。

その内容はさまざまですが、共通していたのは、買ってもらう相手に合わせようという姿勢です。その中には、米粉のように、国内にはない可能性を海外に見いだしているケースもありました。

今回の輸出拡大の取り組みは、国内の生産者の活性化も目指したものですが、日本の農産物などはこれまで主に国内に目が向けられ、“いかに売るか”という視点が不足しているとも指摘されてきました。

それが、海外という全く違った市場を目指すにあたって、売るための工夫が広がっていることは前向きな変化だと感じました。

一方、食品や農産物には、各国に安全面や検疫などのさまざまな規制があり、輸出が容易ではない場合もあります。政府は今後も輸出拡大を後押ししていくとしていますが、こうした面も含めた取り組みも課題になりそうです。

★★★名前★★★
経済部記者
楠谷遼
平成20年入局
鳥取局をへて経済部
農林水産省担当