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“20年ぶり株高” どこまで本物?

株価が、大きな節目を超えました。日経平均株価が終値で実に20年ぶりの水準にまで上昇したのです。“半年先の景気を映す”とも言われる株価。一方で、今の株高は、景気や企業業績のよしあしとは直接関係のない要因も大きく影響しています。今の株価、どこまで本物なのでしょうか。(経済部記者 櫻井亮)

“20年ぶり”の受け止め

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このところ連日のようにことしの最高値を更新してきた日経平均株価。11日、終値で2万881円27銭まで上昇し、平成8年12月以来、実に20年10か月ぶりの高値となりました。

▽好調な海外経済を背景に、ニューヨーク市場のダウ平均株価が史上最高値を更新し続けていること。▽為替相場が1ドル=110円を下回る円安水準で比較的落ち着いていること。▽輸出の回復などに支えられ、すでに過去最高の水準にある企業の業績が引き続き堅調だと見込まれること。▽国内景気の回復が、緩やかながらも高度経済成長期の「いざなぎ景気」を超え、戦後2番目の長さになっていること。

市場関係者の間からは、「こうした要因を考えれば、当然の株高だ」と、冷静に受け止める声が聞かれます。

20年前の“日本経済の顔”

バブルに踊り、バブル崩壊後は「失われた20年」とも評されてきた日本経済。今と同じ株価水準だった平成8年末は、「山一証券」や「北海道拓殖銀行」などが相次いで破綻した平成9年秋の“金融危機”の、いわば「前夜」にあたる時期でした。

当時と今とで、東証1部の上場企業の時価総額ランキングを比較すると、日本経済の「顔」がずいぶん変わったことが分かります。

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平成8年末当時は、上位10社のうち、6社が大手銀行。これらの銀行は、その後、金融危機や不良債権処理にもがき苦しみ、生き残りをかけた大再編に突入していくことになります。それと同時に株価も下げ足を速め、その後、ITバブルやアメリカの住宅バブル、そしてリーマンショックと、「バブル」と「ショック」を繰り返しながら、結局、当時の水準を回復するまでに20年を要しました。
今の時価総額ランキングには、IT社会を象徴するように、通信大手3社が顔をそろえています。

“影”の主役

では、今の株高に落とし穴はないのか。忘れてはいけないのが、相場を押し上げている影の主役、「日銀」です。

日銀は大規模な金融緩和の一環として、株式市場で大量のETF(上場投資信託)を購入しています。その額、年間およそ6兆円。現在、東証1部全体の時価総額はおよそ625兆円。その1%ほどを日銀が毎年買い続けている計算になります。
ことし4月から9月の半年間では、日銀によるETFの買い入れ額はおよそ2兆9000億円。一方、ほかの投資家はと言うと、海外の投資家がこの間、日本株を買い越した(買った額から売った額を引いた)額は、およそ5500億円。日銀の存在が小さくないことが分かります。

日銀は2%の物価上昇率の目標達成までは大規模な金融緩和を続ける構えで、ETFの大量買い入れも当面、続きそうです。また、仮に日銀が金融政策を正常化させる「出口」に向かったとしても、直ちにETFを市場で売却する可能性は低いとみられています。

しかし、金融緩和が長引けば長引くほどETFの買い入れは膨らみ、その分、将来の相場の波乱要因になるおそれが高まることを危惧します。

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海外発のリスクは

海外に目を転じると、北朝鮮情勢が最大の懸念材料です。合わせてカギを握る存在として、アメリカを挙げたいと思います。

トランプ政権をめぐる不透明さが叫ばれる一方、アメリカの景気回復はすでに9年におよび、20年ぶりの株価水準をようやく回復した日本を尻目に、ダウ平均株価は「史上最高値」を更新し続けています。

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私が国内の市場関係者や企業経営者に話を聞くかぎり、アメリカ経済の見通しに弱気の見方はほとんど聞こえてきません。しかし同時に、「永遠に今の好調さが続くわけではない」という懸念も、付け加わります。住宅市場などには過熱感を指摘する声もあります。

また、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は、今後、異例の量的緩和策で膨らんだ資産規模の縮小を始めます。IMF=国際通貨基金は、最新の世界経済見通しの中で、アメリカやヨーロッパで金融の引き締めが進んで、ドルなど主要通貨の金利が高くなれば、世界的なお金の流れが新興国から欧米へとシフトし新興国の金融市場が不安定になるリスクがあると指摘します。

株高をいかすには

株価が上がっても自分の暮らしには関係がないーーー。そう思う方は少なくないと思います。今の景気は「実感なき景気回復」とも言われています。

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大きな要因の1つに、企業が高水準の利益を上げているにもかかわらず、賃金上昇の動きが鈍いことが挙げられます。この点、三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、「好業績の企業は配当を増やしたり、自社の株を市場から買い取ったりと、株主還元を図ろうとする傾向を強めている。しかし、息の長い経済の好循環を実現させるには、今こそ企業が設備投資を増やすなど『攻めの経営』で事業を拡大させ、従業員の賃金アップにつなげる努力をすべきだ」と話します。

人口減少社会の日本で「攻めの経営」に打って出るのは企業にとって容易なことではないと思います。しかし、手をこまねいていても構造的な課題は深刻さを増すばかり。緩やかながらも景気の回復が続いている今だからこそ、企業発の活力ある話題が増え、それが足腰のしっかりした力強い株価の上昇につながればと思います。

櫻井亮
経済部記者
櫻井亮
平成24年入局
宇都宮局をへて
現在 東証・証券担当