ニュース画像

ビジネス
特集
さよなら3K 変われるか建設業

東京オリンピック・パラリンピックを控え、大手4社のことし3月期の決算は、そろって過去最高。しかし、人手不足には、どんな業界にもまして、危機感を強めている。

今の建設業界の姿です。長らく3K職場の代表とも言われてきた業界は、最新技術の活用と働き方の見直しで、「きつい」イメージの払拭に懸命です。本当に変われるのか。業界の本気度を取材しました。
(経済部記者 野口恭平)

無人重機で現場が変わる?

神奈川県小田原市に、大手ゼネコン 鹿島建設の実験場があります。広さはおよそ2ヘクタール。見たところ、ただの広場ですが、実は人手不足対策の切り札「無人重機」の実験場です。その名のとおり、無人重機とは、運転席に人がいなくても自動で作業をしてくれる建設機械とのことです。土砂を運ぶ大型トラック、土砂を平らにならすブルドーザー、地面を固める大型ローラー。鹿島はそれぞれ自社開発してきました。

この実験場がすごいのは、3台が無人のまま連携して動くこと。「ダンプが土を運ぶ→ブルドーザーがならす→ローラーで固める」といった一連の作業を、息をぴったりあわせて進めるのです。しかも、指示を出しているのはタブレット端末を手にした作業員1人だけ。スタートボタンを押したあとは、重機にお任せです。

無人の重機がもくもくと作業する整然とした仕事ぶりを見て、私は、建設業のイメージを変える可能性があると感じました。

鹿島は、こうした無人重機をダムの建設現場や住宅地の造成などに活用する考えです。次は、土砂をトラックの荷台に積む自動運転のショベルカーを開発し、無人作業の工程をどんどん増やしていく方針です。

会社の自動化施工推進室長の三浦悟さんは「将来は、現場によっては、作業員は1人だけ。タブレット端末1つで現場を管理する働き方を当たり前にしたい」と意気込んでいます。

キツい仕事は機械にお任せ

現場の作業を機械化しようという動きは業界で加速しています。 清水建設が進めるのが高層ビルの建設現場向けの作業ロボットの開発。ビルを支える鋼鉄製の柱は、溶接で継ぎ足し継ぎ足して、一本の長い柱にしていきます。この作業を自力で動く溶接ロボットに行わせようとしています。

ニュース画像

また、各フロアの天井ボードの取りつけも、ロボットにまかせようとしています。作業員が上を向いてボードのビス留めをする作業は、「きつい」という現場の不満が、開発の理由です。清水建設は来年夏ごろ、大阪のビル建設現場で実用化する方針です。

ニュース画像

大林組は、ダムや港の堤防など水中の設備を、潜水士に代わって点検するロボットを開発。水中深いところの点検は、潜水士にとっても「きつい」作業です。水深40mまで潜って連続で作業できるのは数分に限られます。ロボットならば何時間でも連続で点検ができます。

ニュース画像

どうする3K業界の人手不足

大手がこぞって無人化・機械化を急ぐ背景にあるのが、そうです、深刻化する人手不足です。

建設業で働く人はおよそ20年前の平成9年の685万人をピークに減少が続き、平成28年は495万人に減っています。27%の減少です。

日銀が10月に発表した短観=企業短期経済観測調査では、企業の人手不足感を示す指標は全産業の平均でマイナス28ポイント。平成4年以来の水準となりました。建設業の人手不足感はさらに厳しいマイナス41ポイントでした。

さらに建設業界では、作業員の高齢化がほかの業種よりもはるかに早く進んでいます。

「建設業で働く若者が減ってきている。どこかで打破しないと大変なことになる」

長らく「きつい」「汚い」「危険」の”3K職場”の代表と言われてきた建設業は変わらなければと、多くの業界幹部が危機感を強めています。

ニュース画像

いつまで続く週休1日

機械化に加えて、建設業界が、ようやく重い腰をあげようとしているのが、働き方改革。建設業界は、ほかの業種と比べて相当に遅れた業界でした。

それを象徴するのが休日の日数。国土交通省の調査では、建設現場の33%は「4週4休」。実に3分の1の現場が今も週休1日なのです。次いで多いのが「4週5休」という現場で24%。「4週8休」つまり、週休2日の現場は、わずか7%です。

工事を発注する側も、請け負う建設会社側も、工期をできるだけ短くしようと土曜日はふつうに働く、というのが今も業界の慣習です。

会社に属さず日雇いで工事に参加する労働者は日給制のため、作業日が多いほうが、給料が増えてありがたいという事情もあるようです。しかし、政府が検討している時間外労働の上限規制。建設業にも例外なく適用しようとしています。業界の特殊事情を理由に、今の働き方を続けるのは難しくなっています。

こうした中で、業界団体の日本建設業連合会は、5年以内に週休2日を定着させる方針をことし9月に決定しました。

「5年がかりの見直しで、建設業の3Kイメージを変えられますか?」と聞いてみました。

山内隆司会長は「業界では『日曜休み』についてさえ、数十年かかって議論して、やっと定着した。しかし、若者の後継者がいなくなれば国民生活に支障をきたすことになる。いつまでも手をこまねいているわけにはいかない」と答えました。

どの業界より、人手不足が深刻なはずなのに、なかなか対策が進んでこなかった建設業界。最新技術の活用と、働き方の見直しで、今こそ変わることができるのか? その“本気度”を見ていきたいと思います。

野口恭平
経済部記者
野口恭平
平成20年入局
徳島局をへて
流通・小売業界など取材
現在は国交省を担当