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岐路に立つユニクロ 次の一手は?

「世界第一」 日本最大のアパレルブランド「ユニクロ」を一代で築き上げた柳井正社長の応接室には、そう記した書が掲げられていました。訪れた人は、その部屋に入るとその書がまっさきに目に入り、柳井社長が持つ世界一への強い意欲が感じられるようになっています。

しかし、世界でトップに立つには、先行する海外勢を追い抜かねばなりません。また、足元でも国内事業の伸び悩みや働き方などの課題も抱え、成長の岐路に立っています。今後、会社をどう導こうとしているのか、柳井社長本人に直撃しました。
(経済部記者 野口恭平)

世界との差をどう縮めるか

家業の紳士服店を継ぎ、1984年に社長に就任して以来、30年余りの間に「ファーストリテイリング」を売上高1兆7000億円余り、アパレル業界でダントツの規模に成長させた柳井社長。

しかし、世界に目を転じてみると、売り上げ規模はトップの「ZARA」を運営する「インディテックス」(約2兆7700億円)、2位の「H&M」(約2兆3800億円)とは、まだ少なからぬ差があるのが現実です。また、これまでヒット商品を連発してきたユニクロの国内事業も、去年9月からことし5月までの決算では減益となるなど、伸び悩みも見えてきました。

そこで、柳井社長がとった戦略は、ユニクロの商品ラインナップを広げることです。

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ベビーとスポーツを強化

柳井社長が目を向け、新たな戦いの場として選んだのが「ベビー・キッズ」と「スポーツ」の市場です。

柳井社長:これまではメンズやウイメンズが主力でベビー・キッズは本気でやっていなかった。ただ、今は商品の供給が追いつかないくらい売れている。ベビー服であれば、赤ちゃんに害を与えない作り方とか、子ども服でも動きやすさといった機能が求められていて、これはユニクロの得意なところ。今はベビー・キッズの売り上げが全体の7%程度だが、20%くらいに上げていきたい。

海外、特にアジアでは今後も子どもの数が増えていくので、日本だけでなく海外市場を強化するうえでもベビー・キッズは重要だ。

ユニクロでは、ことし8月から全国200の大型店で、これまで取り扱ってこなかった、生後3ヶ月位までの乳幼児向けの肌着やつなぎ服、よだれかけなどの販売に乗り出しています。加えて、妊婦向けのマタニティウエアもラインナップに追加しました。現在は国内主体ですが、海外での展開も予定しています。

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また、「スポーツ」では、テニスの錦織圭選手やゴルフのアダム・スコット選手のスポンサーとなって知名度の向上を図っているほか、ことし3月には、JR新宿駅近くのデパートに、スポーツ向けウエアを集めたコンセプトショップをオープンさせました。

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しかし、これらの市場には、すでに強力なライバルの存在があります。ベビーでは「しまむら」や「西松屋」が、ファッション性を高めたり、親子向けの店舗づくりを進めるなどして業績も伸ばしています。また、スポーツ分野でも「アディダス」などの世界的ブランドが、街なかで普段着として使うことを意識した商品展開を進めています。

柳井社長:我々が目指しているのはスポーツウエア以上の機能が入った『究極の普段着』です。カジュアルとスポーツの中間の ※アスレジャー のような、流行を取り入れながらも着ていて気持ちがよい服を追求していきたい。カジュアルとスポーツの分野の融合が進む中、今後はZARAやH&Mだけでなく、ナイキとかアディダスなどとの競争になってくる。その中で勝てる方法を考えていかないといけない。

今はあまり取り扱っていないが、機能性を高めた靴などトータルにコーディネートできるようにラインナップをそろえていきたい

(※アスレチックとレジャーを合わせた造語。スポーティな服装を普段着に取り入れて着こなすトレンドで海外で注目が集まる)

働き方改革へ・ITを活用

一方、ユニクロでは、一時期は新卒社員の半分以上が3年以内に離職してしまうなど、働き方について厳しい指摘を受けました。柳井社長は、今後もっとITを活用することで、服の作り方から売り方、働き方まですべてを変えていくと述べました。

柳井社長:ITの使い方はまだ全く足りていない。お客さまと商品を企画する人、そして、工場がつながり、世界中の情報が瞬時に伝わると同時に、できるだけ早く服を作っていく。さらにお客さまの要望を聞きながら改善させていく。一連の流れが今までの10分の1ぐらいのスピードでできるような小売業に変わっていくと思う。

店舗は店舗で、リアルのよいところとeビジネスのよいところが全部融合していく。アメリカではさまざまな分野で店がどんどん閉店している、そういうことが世界中で起きてくる。これから1~2年以内にユニクロとしても新しいモデルの店舗を作り出していきたい

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この30年、常に会社を変化させてきた柳井社長。今後さらにスピード感をもって変革を進めていくには、社員ひとりひとりの成長が大切だと持論を述べました。

柳井社長:どの仕事に関しても、簡単な仕事なんてない。やっぱりある程度、きつい仕事をして一人前になると思っている。自分はこれで生きるんだということを見つけるために仕事をしていくことが必要だと思う。正社員、アルバイト、パート、それぞれ立場は違うが、成長していって、できれば1つの仕事ではなく全部の作業ができて、店長がいない場合は店長代行もできるようになってほしい。

若い人によく言うのは、僕はエベレストに登ろうとしているけど、あなた方は近所の500mの丘にまず上れるように。次は1000mに。低いところかもしれないけど、そこに出会えたら風景が違ってくるんじゃないかなと思うんで、そういうふうに仕事を変えてほしいんです。

後継者は?

かつて一旦は社長を退いたものの再び経営の最前線に立ち、会社を成長軌道に戻したことでも知られる柳井社長。後継者がどうなるかでも注目されています。

その点について、最後に質問すると、次のような答えが返ってきました。

柳井社長:私を超える必要はない。時代は変わったので、新しい人がリーダーシップをとれる会社にならないといけない

まとめ

急成長を遂げた経営手腕から、その言動が注目される柳井社長。しかし、決算会見などに顔を出すことが少ないうえ、個別の取材機会はなかなか得られず、今回のインタビューも去年の夏からオファーを続けた末にようやく実現しました。結果的にタイミングとしては、世界一への挑戦に向けて、まさにアクセルを踏み込もうとする段階となりました。

描いた戦略は、「前門の虎=アディダス・ナイキなど、後門の狼=しまむら・西松屋など」とも言える構図で、いずれの分野でも強力なライバルと戦うことになる茨の道ともいえます。目標とする世界一を実現できるのか、柳井社長からますます目が離せません。

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野口恭平
経済部記者
野口恭平
平成20年入局
徳島局をへて
流通・小売業界など取材
現在は国交省を担当