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“特製ノート”で働き方改革

子どもの誕生日や結婚記念日などの大切な日。休みを取ったり、仕事を早めに切り上げたりして家族と一緒にお祝いしたいですよね。でも、仕事が忙しい時ほど気が引けるもの。そんな時でも職場の上司や同僚に「お先に失礼します!」と遠慮なく言える会社が岡山県にあります。その秘密は、この会社が作った“特製ノート”。どんなノートなのでしょうか?(岡山放送局 山田真里記者)

その名は「Powerbook」

岡山県倉敷市にある電気設備工事会社「旭テクノプラント」。4月の入社式で、藤森健社長から新入社員一人一人に対して、「Powerbook」と名付けられた、会社特製のノートが手渡されました。ノートを開いてみると・・・。スケジュールを書き込むカレンダーには、社員全員とその家族の誕生日、それに結婚記念日が印刷されていました。

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この会社の社員は90人余り。ここ数年は人手不足で、若手社員の採用にも苦労しています。「仕事もプライベートも充実した働き方に方向転換しないと、会社が存続できない」。危機感を持った藤森社長が、社員の記念日を記して休みをとりやすくしようと、おととし初めて作ったのがこの“特製ノート”でした。

藤森社長は「仕事とプライベートを両立させながらスケジュールを練っていくのに、このノートは有効です。ほかの会社が作っているような手帳とは圧倒的に違います」と胸を張ります。

休む“勇気”が!

確かに特製ノートは、社員の意識を変えました。電気設備の検査などを担当するチームのリーダー、二摩泰弘さん(38歳)。妻と3人の子どもがいます。以前は残業が当たり前で、子どもから「お父さん、次はいつ会えるの」と尋ねられたこともあったそうです。

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そんな二摩さんも、家族の記念日を周囲に言いだしやすくなり、積極的に休みをとるようになりました。こうした記念日には、社長直筆のメッセージが入った手紙とお祝い金が贈られます。「職場の同僚に申し訳ない」という気持ちを持たないようにという社長の心遣いでもあります。二摩さんは「家族と一緒に過ごす時間が増えるとリフレッシュでき、次の日もまた仕事を頑張ろうと思えるようになった」と話していました。

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当初は、自分の記念日が職場に知れ渡ることに戸惑う声もありました。しかし、会社側が「休みをとりやすい雰囲気を作るため協力してほしい」と呼びかけたところ、最終的にすべての社員が納得したそうです。今では、ノートを見て社員どうしでお祝いの言葉をかけ合うなど、職場のコミュニケーションも深まっているということです。

仕事とプライベートの目標も

会社は、記念日以外の日でもできるだけ定時に退社できるよう特製ノートにもうひとつの工夫を凝らしています。それは、「仕事」とともに「プライベート」の目標を毎月書き込む欄を設けたことです。

ちなみに二摩さんの4月の目標は、仕事では「残業20時間以内」、プライベートは「週に20キロ走る」と「家族旅行に行く」でした。プライベートの目標も達成しようとすると、自然と仕事の時間管理を意識するようになります。

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社員たちは毎日、退社時刻の1時間前の午後4時になると職場ごとに集合。ひとりずつ退社予定時刻を報告してみんなで共有します。「残業する」という社員がいれば、本当に必要な業務かその場で見直したり、他の社員と仕事を分担したりして、早く帰ることができるよう協力します。二摩さんの残業時間は、5年前と比べて半減しました。

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生産性が60%アップ

一方で、こうした取り組みが、会社の業績と社員の収入にどのような影響を及ぼすのかも気になるところです。この会社の1人当たりの労働時間は減少していますが、売り上げは増加傾向にあります。企業の生産性を分析している調査機関に計算してもらったところ、社員1人当たりの生産性が、この3年間で60%アップしたという数字が出ました。

会社では、メリハリのついた仕事ぶりが定着しつつあると受け止めています。ただ、残業を避けることによって毎月の給与が減ってしまう社員も出ているということです。会社によりますと、記念日にお祝い金を出しているほか、業績が上がればボーナスに反映されるため、今のところ大きな不満は出ていないそうです。

会社特製のノートが変えた、職場の雰囲気と社員の意識。官民を挙げた「働き方改革」の取り組みが進められる中、創意工夫をこれからも追いかけたいと思います。

山田真里
岡山放送局
山田真里 記者
平成11年入局
札幌局や国際部を経て
岡山で経済や国際分野を取材