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“逆境”でもヒット商品 ヒントは?

アイス、チョコレート、即席めん。
この3つには共通点があるのですが、皆さんはご存じでしょうか。実はこれらはいずれも国内市場が拡大した商品です。

”人口減少や高齢化で国内市場は縮小に向かう”と言われる中、これらの市場では何があったのか。売り上げ増加、ヒット商品を生むヒントを探ります。
(経済部・岩間宏毅)

“冬にアイス”で26年ぶり新工場

大手菓子メーカーの江崎グリコが、千葉県野田市に増設したアイスクリーム工場は2月に稼働を始めます。投資額は180億円と、この会社のアイスクリーム工場としては実に26年ぶりの大型投資です。

生産能力を20%も増やす投資に踏み切ったのは、新たに開拓した”冬アイス”などの需要に応えるためです。イチゴを使った高価格帯の限定商品を投入するなどして、冬アイスの売り上げを伸ばし、この会社のアイスクリーム事業の売り上げは3期連続で増加しているのです。

冬には売り上げが大幅に減っていたアイス市場(アイスクリーム類および氷菓)ですが、近年では各メーカーが競って、需要を開拓してきました。夏はさっぱりとしたアイスキャンデーなどの氷菓が人気ですが、冬には暖房の効いた部屋で濃厚なアイスクリームを食べるという楽しみ方が普及したことで、国内のアイス市場はおととしまで3年連続で過去最高を更新。業界団体によりますと、去年の売り上げも好調だったということです。

江崎グリコ・グループ広報部の青山花さんは「スーパーなどの小売店にとどまらず、自動販売機も強化するなどお客様との接点を増やしている。国内の売り上げはまだまだ伸ばせる」と話します。

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「謎肉祭」 謎のネーミング

即席めん最大手の日清食品が開拓したのはシニア層です。健康志向が強いシニア層を想定して、これまでも減塩をPRした商品を発売したこともありましたが、思うように販売を伸ばせませんでした。

改めてニーズを探ったところ、気づいたのが「高級さ」を求める顧客の声でした。そこで去年4月に発売したのが、フカヒレスープ味、牛テールスープ味などの高価格帯のカップめんです。

定番の商品より50円高い強気の価格設定にもかかわらず、半年ほどで1400万食を売り上げました。想定を上回る売り上げで、新たな定番商品となりました。

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また、主力商品が発売から40年以上たつ中、若い世代への商品PRにも力を入れました。去年9月には「謎肉祭」と銘打って、「ダイスミンチ」と呼ばれる肉の具材を10倍に増やした限定商品を発売。何の肉が使われているかわからない=謎肉というネーミングがネット上でも話題になったことで、発売から3日で270万食余りを完売。その後、追加生産しました。

こうした取り組みが功を奏し、去年9月まで半年間の売り上げは過去最高を更新。好調な業績を背景に、この会社では575億円をかけて、滋賀県栗東市に国内では22年ぶりとなる新工場を建設することになりました。

また、メーカー各社の積極的な商品展開もあって、カップめんなどの即席めんの国内出荷量も、去年56億6000万食と前の年より2%余り増え、12年ぶりに過去最高を更新しました。

パッケージにこだわり

さらに市場全体が大きく伸びているのが国内のチョコレート市場です。おととしの市場規模は5040億円で過去最高、大手菓子メーカーの推計では、去年も6%余り増えて5359億円と6年連続で過去最高を更新したと見られます。

10年前の2006年の4138億円と比べると、市場規模は1000億円以上、拡大したことになります。

チョコレートに含まれるカカオの健康効果が注目され、高価格帯の商品を中心に、男性やシニア層にも売り上げが伸びていることが市場を拡大しました。

大手菓子メーカーの明治でも、カカオ豆の品質にこだわって去年9月にリニューアルしたチョコレートが人気になっています。定番商品のおよそ2倍の価格ですが、自社で海外の生産地を開拓するなど原料のカカオ豆を厳選し、さらにカカオの含有量や味に特徴をつけた6種類の商品は、こだわりの味が手ごろな価格で楽しめるとして、売り上げは当初の販売計画のおよそ2倍に上っているということです。

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さらにパッケージデザインの大胆な変更も売り上げを伸ばした要因と見られています。リニューアルしたパッケージでは、カカオのイラストにはこだわったものの、チョコレートの写真やイラストはありません。これまでの“おやつのチョコ”とは違う“こだわりの商品”という開発担当者の思いを込めたシンプルなデザインです。

これまでは、チョコレートの写真やイラストをつけたり、商品の特徴を大きく印字したりするのがセオリーだったといいますから、社内では「このパッケージでは中身がわからない。売れるはずがない」という厳しい意見も出ました。しかし、事前の消費者調査で手応えをつかんでいた開発担当者は「あなたの年代がターゲットではない」などと反論。発売にこぎつけたといいます。

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このパッケージは、インターネットの画像共有サービス「インスタグラム」で大きく取り上げられ、切り取って、しおりやアクセサリーを作ったり、箱を加工してノートを作ったりと”予想外の反響”もありました。

開発担当者の1人、菓子マーケティング部の佐藤政宏専任課長は「マーケットは伸びてはいるが、日本ではまだまだ嗜好品にはなっていない。ワインやコーヒーのように大人が楽しむ嗜好品となるように育てていきたい」とさらなる需要の掘り起こしに意欲を見せます。

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今こそ新たな需要喚起を

国内市場で少子高齢化が進む中、企業にとって、海外の成長市場への展開など新たな対応が求められるのは疑いのない事実です。しかし、その人口減少時代にあっても、新たな需要を喚起したヒット商品を生み出している事例があることも見逃せない事実です。成熟市場と言われる国内市場ですが、まだまだ消費の活性化のネタはあるのではないか。今後も創意工夫を重ねる企業の取り組みに注目していきたいと思います。

岩間宏毅
経済部
岩間宏毅 記者