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自治体に広がるシェアリングエコノミー

マンションや住宅の空き部屋を有料で貸し出す民泊や1台の車を共同で使うカーシェアリングなどは、シェアリングエコノミー=共有型経済と呼ばれ、新しいサービスが次々と登場しています。企業から消費者に商品を提供する一方通行の従来型サービスを大きく転換させると言われる「シェア(分かち合い)」という考えを、少子化や財政難などさまざまな課題を抱える自治体も今、活用しようとしています。
(経済部・小田島拓也記者)

シェアリングシティ宣言

11月24日、シェアリングエコノミーの仕組みを使ったサービスを手がけるベンチャー企業など130社で作るシェアリングエコノミー協会が東京都内で記者会見しました。

協会のメンバーとともに壇上に上がったのは、秋田県湯沢市、千葉県千葉市、静岡県浜松市、佐賀県多久市、それに、長崎県島原市の全国5つの自治体の代表者。子育て環境の整備や、空き家や空き店舗の増加、そして、財政難など直面する課題の解決にシェアリングエコノミーの考えを活用していく自治体=シェアリングシティになると宣言しました。

公助から共助へ

秋田県湯沢市は、ことし9月30日現在、高齢化率が全国平均を大きく上回る35.9%。2040年には人口が40%減り、高齢化率も48%に達すると予想されています。

湯沢市は人口減少を少しでも食い止めようと子育て環境の整備を強化していて、約10年前からは「子育てのシェアリング事業」を続けています。子育てに協力する住民約500人が会員となり、親から子どもを預かってほしいという連絡を受けた市の担当者が仲介し、その時間に空いている会員が自宅や市の施設で子どもを預かる仕組みです。

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料金は1時間400円という利用しやすい設定ですが、その一方で、電話による連絡で仲介に時間が掛かることや、夜間は利用できないことなどが課題となっていました。そこで、ことし7月、神奈川県のベンチャー企業と提携し、新しい子育てのシェアリング事業を始めました。

この事業は、子どもを預けたい親と「子育てサポーター」として登録した住民がスマートフォンやパソコンを使ってネット上で簡単にマッチングをする仕組みが特徴です。子育てサポーターの中から、顔見知りや身近な人の紹介者という範囲でマッチングを行います。

顔見知りに子どもを預けるという安心感を売りにしていて、双方が了解すれば夜間でも子どもを預けることができます。

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子育てサポーターの1人、湯沢市に住む小野寺育子さんを取材しました。小野寺さんは、ことし9月に研修を受け、サポーターに登録。2歳から10歳の3人の子どもを育てる小野寺さんは、子育てに専念するために仕事を続けることを諦めた経験があります。だからこそ、支援役に回ろうと手を挙げました。

小野寺さんは「私は頼る人がいなくて大変だったという経験をしているので、仕事で大変なときやリラックスしたいときには、子育てシェアのシステムを使えば助けてくれる人がいるんだということを知ってもらいたい」と話してくれました。

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湯沢市子育て支援総合センターすこやかの村上環センター長は「市の財源がなくても、地域の人と人とのつながりによってできる共助の考え方をもとに、いろいろな年代の人たちが参加してみんなで一緒に担う子育て環境を目指したい」と話していました。

財政状況が厳しい中で、もはや自治体がすべての住民サービスを賄うというのは不可能です。シェアリングエコノミーのサービスの活用は、すでにあるヒトやモノを生かすことで新たにお金をかけずに課題の解決につなげることができるというメリットがあります。

安心して利用するためには

ただ課題もあります。シェアリングエコノミーとは個人が個人に対して提供するサービスのため、トラブルが起きた際の責任を負うのは原則、個人になります。

総務省がことし1000人を対象に行ったアンケート調査では、民泊やカーシェアリングなどのシェアリングエコノミーのサービスを「利用したいと思わない」と答えた人は68%に上りました。理由として多かったのが事故やトラブルに不安を感じるというものでした。仕組みに自治体が加わることで、サービス利用への安心感が高まることも期待されています。

さらにシェアリングエコノミー協会は、来年春までに自主的なルールを整備することにしています。具体的には安全の確保が求められる民泊などのサービスについては、利用者の本人確認を徹底することや、賠償責任の保険など万が一の事故に備えた対応を取ること、トラブルに備えた相談窓口の設置などを基準とする方針です。

そのうえで、事業者がこの基準をクリアしているかどうか、外部の組織に委託して判断してもらい、認定する仕組みを導入することにしています。

政府もシェアリングエコノミーのサービス普及に向けて、利用者から相談を受け付けたり、仲介事業者に対して専門の弁護士を紹介したりする専門の組織を今年度内に設置することにしています。

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取材を終えて

シェアリングエコノミーのサービスはアメリカが大きく先行していますが、日本でも昔は隣の家からしょうゆを借りたり、近所の子どもを預かったり、急な雨のときは留守宅の洗濯物を取り込んであげたりという光景がよく見られたといいます。

そして今、若者の間では、服や車を“所有する”ことにこだわらず、必要なときに“シェア”するという生活スタイルも広がっています。

利用者の不安を取り除き、安心してサービスを使えるようになれば、シェアリングエコノミーは日本人の生活に浸透していくのではないかと感じました。

小田島拓也
経済部
小田島拓也 記者